番町ばんちやう)” の例文
ところで——番町ばんちやう下六しもろく此邊このへんだからとつて、いし海月くらげをどしたやうな、石燈籠いしどうろうけたやうな小旦那こだんなたちが皆無かいむだとおもはれない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やすさんは、まだかへらないんでせうかね。貴方あなた今度こんだ日曜にちえうぐらゐ番町ばんちやうまでつて御覽ごらんなさらなくつて」と注意ちゆういしたことがあるが、宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
千駄木せんだぎおくわたしいへから番町ばんちやうまでゞは、可也かなりとほいのであるが、てからもう彼此かれこれ時間じかんつから、今頃いまごろちゝはゝとにみぎひだりから笑顔ゑがほせられて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
番町ばんちやう旦那だんなといふは口數くちかずすくなひとえて、ときたまおもしたやうにはた/\と團扇うちはづかひするか、卷煙草まきたばこはひはらつてはまたをつけてもつてゐるくらゐなもの
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いま山の手の番町ばんちやう
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まだ可笑をかしいことがある、ずツとあとで……番町ばんちやうくと、かへりがけに、錢湯せんたう亭主ていしゆが「先生々々せんせい/\ちやうひるごろだからほか一人ひとりなかつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それはおまへらぬから其樣そんにくていなことへるものゝ三日みつか交際つきあひをしたら植村樣うゑむらさまのあとふて三途さんづかはまできたくならう、番町ばんちやう若旦那わかだんなわるいとふではなけれど
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
會話くわいわはそこでべつ題目だいもくうつつて、ふたゝ小六ころくうへにも叔母をばうへにもかへつてなかつた。それから二三にちすると丁度ちやうど土曜どえうたので、宗助そうすけ役所やくしよかへりに、番町ばんちやう叔母をばところつてた。叔母をば
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
東京とうきやう——番町ばんちやう——では、周圍しうゐひろさに、みゝづくのこゑ南北なんぼくにかはつても、その場所ばしよ東西とうざいをさへわきまへにくい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
番町ばんちやう旦那樣だんなさまいでくよりゆき兄樣にいさんがお見舞みまひくだされたとへど、かほよこにして振向ふりむかうともせぬ無禮ぶれいを、つねならばいかりもすべきことなれど、あゝ、てゝいてください
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけくとつて、らしてゐるうちになかやうやあきになつた。そのほがらかなある日曜にちえう午後ごごに、宗助そうすけはあまり佐伯さへきくのがおくれるので、この要件えうけん手紙てがみしたゝめて番町ばんちやう相談さうだんしたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もう一人ひとりつれは、南榎町みなみえのきちやう淺草あさくさから引越ひつこしたまんちやんで、二人ふたり番町ばんちやうから歩行あるいて、その榎町えのきちやうつて連立つれだつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東京とうきやうかね——番町ばんちやう——海水浴かいすゐよく避暑ひしよにくるひとはありませんかな。……この景氣けいきだから、今年ことし勉強べんきやうぢやよ。八疊はちでふ十疊じふでふ眞新まあたらしいので、百五十圓ひやくごじふゑんところひやく勉強べんきやうするですわい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
麹町かうぢまち番町ばんちやう火事くわじは、わたしたち鄰家りんか二三軒にさんげんが、みな跣足はだし逃出にげだして、片側かたがは平家ひらや屋根やねからかはら土煙つちけむりげてくづるゝ向側むかうがは駈拔かけぬけて、いくらか危險きけんすくなさうな、四角よつかどまがつた
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ようをきいて、ところをたづねるから、麹町かうぢまちらしてかへると、すぐその翌日よくじつ、二十四——の赤帽君あかばうくんが、わざ/\やま番町ばんちやうまで、「御免ごめんくださいまし。」と丁寧ていねいかどをおとづれて
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
番町ばんちやうして十二三年じふにさんねんになる。あの大地震おほぢしんまへとし二月四日にぐわつよつか大雪おほゆきであつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かへるても、さわがしいぞ、とまをされて、かせなかつたのである。其處そこくと、今時いまどき作家さくかはづかしい——みなうではあるまいが——番町ばんちやうわたしるあたりではいぬえてもかへるかない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……たとへば、地震ぢしんから、水道すゐだう斷水だんすゐしたので、此邊このへんさいはひに四五箇所しごかしよのこつた、むかしの所謂いはゆる番町ばんちやう井戸ゐどへ、家毎いへごとからみづもらひにむれをなしてく。……たちまをんなにはませないとやしき出來できた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もはや、……少々せう/\なりとももつをと、きよと/\と引返ひきかへした。が、わづかにたのみなのは、火先ひさきわづかばかり、なゝめにふれて、しもなかかみ番町ばんちやうを、みなみはづれに、ひがしへ……五番町ごばんちやうはう燃進もえすゝことであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またか、とむかしの名僧めいそうのやうに、おしかりさへなかつたら、こゝで、番町ばんちやう七不思議なゝふしぎとかとなへて、ひとつにかぞへたいくらゐである。が、なにめづらしがることはない。高臺たかだいだからへんにはないのらしい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くささとつては、昇降口しようかうぐち其方そつちはしから、洗面所せんめんじよたてにした、いま此方こなたはしまで、むツとはないてにほつてる。番町ばんちやうが、また大袈裟おほげさな、と第一だいいち近所きんじよわらふだらうが、いや、眞個まつたくだとおもつてください。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)