さが)” の例文
四谷よつやとほりへ食料しよくれうさがしにて、煮染屋にしめやつけて、くづれたかはら壁泥かべどろうづたかいのをんで飛込とびこんだが、こゝろあての昆布こぶ佃煮つくだにかげもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから毎日、昼間ひるま甚兵衛じんべえがでかけ、よるになるとさるがでかけて、人形の行方ゆくえさがしました。けれどなかなか見つかりませんでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「まことにめずらしいびんだ。わたしは、このびんをさがしていたのだ。ぼうは、わたしといっしょにこないか?」と、うまっているおとこはいいました。
びんの中の世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてそこで、彼は、一所懸命に真理の智慧をさがし求めたのでした。しかし、求める真理の智慧は容易にもとめ得られませんでした。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「いや、それにはさがようがあるのだ。普通のやり方では勿論駄目だが僕の考えている方法でやるなら四週間位で結果が出ると思う」
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
ちょうど、そこへ会所の使いが福島の役所からの差紙さしがみを置いて行った。馬籠まごめ庄屋しょうやあてだ。おまんはそれを渡そうとして、おっとさがした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これが今日こんにちおほくの石器せつき發見はつけんされる理由りゆうひとつでありまして、おかげ私共わたしどもみなさんととも石器せつきさがしにつても、獲物えものがあるわけです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「でもやってみてくれようと言うなら、わたしは大助かりさ。なにしろほんの五、六日使う子どもをさがすというのはやっかいだよ」
かれ自分じぶん燐寸マツチさがしにせま戸口とぐち與吉よきちをやらうとした。與吉よきちあまえていなんだ。かれはどうしてもだる身體からだはこばねばならなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いいかい坊や、町へ行ったらね、たくさん人間の家があるからね、まず表にまるいシャッポの看板のかかっている家をさがすんだよ。
手袋を買いに (新字新仮名) / 新美南吉(著)
私は生憎あいにくある友達が精神異状で行方ゆくえ不明になりさがまわらねばならなかったりして松の内も終る頃ようやく地平さんの所へ行った。
篠笹の陰の顔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「では、この河の上の方には人が住んでいるな」とお察しになり、さっそくそちらの方へ向かってさがし探しおいでになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「それはもう御隠居様ごいんきょさま滅法めっぽう名代なだい土平どへいでござんす。これほどのいいこえは、かね太鼓たいこさがしても、滅多めったにあるものではござんせぬ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのときはもう、うらにまわった透明人間が、物置ものおきからさがしだした手斧ておので、ガンガン、台所だいどころのドアをたたきこわしてるところだった。
流石さすがは武士の娘だ、あゝそれでこそ文治郎の女房だ、宜しい、わしが附いていて、さがし当て屹度きっと討たせます、仮令たとえ今晩為終しおおせて来ようとも
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
相手というのは羅紗らしゃ道行みちゆきを着た六十恰好ろくじゅうがっこうじいさんであった。頭には唐物屋とうぶつやさがしても見当りそうもない変なつばなしの帽子をかぶっていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それであいちやんは、なぐさみに雛菊ひなぎく花環はなわつくつてやうとしましたが、面倒めんだうおもひをしてそれをさがしたりんだりして勘定かんぢやうふだらうかと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
行方不明の妻をさがすために数百人の女の死体を抱き起して首実検してみたところ、どの女も一人として腕時計をしていなかったという話や
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
まへらないか美登利みどりさんのところを、れは今朝けさからさがしてるけれど何處どこゆつたかふでやへもないとふ、廓内なかだらうかなとへば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だが、その馬鹿な奴は、いったんは逃げ出したものの、のそのそと戻って来て、地面に鼻をくっつけてパンをさがしにかかった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
帝大出が何百人、選びようがないからおめでたい名前をさがして鶴亀千萬男つるかめちまおてえ先生を採用に決する……なんてことはなかった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
便りにさがし廻る中大井川の彼方なる岡の方に何やら犬のくはへて爭ひ居していゆゑ立寄たちよりしに犬は其品を置て一さんにげ行しまゝ右の品を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さがしたぞ。こんたなどごまで来て。して黙って彼処あそごに居なぃがった。おぢいさん、うんと心配してるぞ。さ、早くべ。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
... とてもかくてもこの外に、鼠をさがらんにかじ」ト、言葉いまだおわらざるに、たちまち「あっ」と叫ぶ声して、鴨居かもいより撲地はた顛落まろびおつるものあり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
清盛きよもりはいくら常磐ときわさがしてもつからないものですからこまって、常磐ときわのおかあさんの関屋せきやというおばあさんをつかまえて
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
……れぞはや御領主樣ごりゃうしゅさまへ。カピューレットどのゝやしきへもはしった。モンタギューどのをおこしてい。あとものは、さがせ/\。
あなたはいゝ投資の土地をさがしてる猶太人ユダヤじんだと私のことをお思ひですか。私そんなものより寧ろあなたのありつたけの信頼を得たいと思ひます。
と、そういっていたというのを思い浮べたから、私は外の通りに出て古道具屋をさがしたが、一軒近くにあった家では亭主が出ていて、いなかった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
だがこの解りきったものを除外して、他の別の形式による表現から、詩的精神の高いものをさがしてみよう。第一にず、何よりも音楽が考えられる。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
浅ましくもおそろしさは、一八七筆につくすべうもあらずなん。夜も明けてちかき野山をさがしもとむれども、つひに一八八其の跡さへなくてやみぬ。
或時あるときがつすえ、ドクトル、ハバトフは、院長いんちょう用事ようじがあって、そのへやったところ、おらぬのでにわへとさがしにた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ポピイは、また、一生けんめい、モーティをさがそうと、あっちの横丁、こっちの裏通りをのぞき覗き歩きました。
やんちゃオートバイ (新字新仮名) / 木内高音(著)
東京に出かけて行けば、さが手蔓てづるはいくらもある。中にはその居る所を教へてれたものもある。しかし出懸でかけて行く旅費もないほどその家は困つて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まだ結婚しないでゐるといふのも、未亡人がさびしがる点もそれはあるかも知れないが、まあ姉さんのお眼鏡めがねで話をさがしてゐるからだよ。全く大事なお人形さ。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
地名表ちめいひやうには根方ねがた目方めがたとしてあるために、さがしてて、根方ねがたぎながら、それとはらなかつたのだ。
連なる男はこれをさがしまわりて谷底に気絶してあるを見つけ、介抱して家に帰りたれば、鳥御前は今日の一部始終を話し、かかる事は今までに更になきことなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お父さんはびっくりして、家中をさがし回りましたが、どうしても見つかりません。お父さんは弱ってしまいました。これを見すまして重吉はお父さんの前に行って
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
かには今度はその隣りにある別の樹に登りました。けれどもやはりよい実がありません。どうしたものだろうと、なおさがしているうち、ふと下の方で人の声がします。
椰子蟹 (新字新仮名) / 宮原晃一郎(著)
なほ何かをもとさがしてゐる時に、たれも一人としてその生命せいめいつなあたへてくれるものはありませんでした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
でも野村さんて、自分で奥さんのさがせないたちの人でしょ。だから、再婚となればよけい人に頼ることになるのね。その気の小っちゃさが、今度の場合、安心なのよ。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
断られてみると、新しい宿をさがすのも億劫おくくふだしするので従姉の時子の宅へ泊めて貰ふことにした。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
しかし、また驚くほど独学をやったらしいんだ。彼は僕と違って、読むべきものを知っていたんだ。さがす目的を持っていたんだ。それに、白水は、前科が四犯あったんだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
 これは鴎外の『澀江抽斎』の一節で、抽斎の師となるべき池田京水の墓をさがし歩いたときの記事である。大正四年の暮のことだそうで、そのころ私は十二三になっていた。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
彼の深甚微妙なる大計算をもってしてもついにさがし出せないことを見いだしたからである。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
おれがきみたちをさがしたやうに、あせりあせり熱心ねっしん俺達おれたちしたのをってゐる
返事に困ってしまうじゃないの? おまけにその時は電話室の外へかあさんもさがしものに来ているんでしょう? わたし、仕かたがなかったから、ただウイ、ウイって言って置いたの。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私は私がこの病気で死んだら、娘が一人ぼっちになって、さぞ困るだろうと思いましたので、私の生きているうちに、是非よい婿を取ってやろうと思って、都の内をさがしにかかりました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
三郎はひどくおどろいて、人を四方に走らしてさがさしたが消息が解らなかった。
阿繊 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
一旦縁を下りて、そこいらをさがさうとしてもとの板敷の方へ歩みを戻した。足元がふらふらする。股のあたりはすつかり力がぬけてしまつて、耳はほてり、頭がむしやくしやするのを感じた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
長いあいださがしあぐねた本道へ、今ようやく、出て来たという心地である。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)