山々やまやま)” の例文
ねんじゅうがそうであり、百ねんあいだが、そうであったにちがいない。そしてこの山々やまやまは、むかしも、いまも、永久えいきゅうにだまっているのでした。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、わたしとて、太夫たゆうもとのようになってもらいたいのは山々やまやまだが、いままでの太夫たゆう様子ようすでは、どうもむずかしかろうとおもわれる。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのうちそら真暗まっくらくなって、あたりの山々やまやま篠突しのつくような猛雨もううめにしろつつまれる……ただそれきりのことにぎませぬ。
序を書きたいのは山々やまやまですが序らしい序が書けないのでこの手紙を書きました。し序の代りにでも御用ひが出來るならうぞ御使ひ下さいまし。以上。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
西蔵チベット世界せかい屋根やねといはれてゐるほどで、くに全体ぜんたいたか山々やまやまつらなりだ。その山々やまやまなかでもぐんいてたかく、西蔵チベット屋根やねともいはれるのが、印度インドとの国境こくきやうまたがるヱヴェレストざんである。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
とほ山々やまやまおしなべてものやはらかに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
旅人たびびとは、それと反対はんたいやまについて、だんだんおくふかはいってゆきました。山々やまやまにはみかんが、まだなっているところもありました。
島の暮れ方の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
申上もうしあげたいのは山々やまやまでござんすが、ちとあつかましいすじだもんでげすから、ついその、あっしのくちからも、申上もうしあげにくかったようなわけでげして」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かぜすこいてりましたが、そらには一てんくももなく、五六もあろうかとおもわるるひろ内海いりうみ彼方かなたには、ふさくにひく山々やまやまのようにぽっかりとうかんでりました。
汽車きしゃは、たか山々やまやまのふもとをとおりました。おおきなかわにかかっている鉄橋てっきょうわたりました。また、くろいこんもりとしたはやしってはしりました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうって瀑布たきのおじいさんは、じてちょっと黙祷もくとうをなさいましたが、もなくゴーッというおとがして、それがあちこちの山々やまやまにこだまして、ややしばらくおとみませんでした。
むらから、西にしにかけて、たか山々やまやまかさなりっていました。むかしから、そのやまにはくまや、おおかみがんでいたのであります。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、いつもかえ時分じぶんに、れたそらにくっきりとかびた、国境こっきょう山々やまやま姿すがたるのが、なによりのたのしみだったのです。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
なつ夜明よあがたのさわやかなかぜが、ほおのうえいて、少年しょうねんをさましますと、うすあおそらに、西にし山々やまやまがくっきりとくろかんでえていました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてみなみそらから、西にしそらへかけて山々やまやまいただきのあたりが、いっそううすあかるくオレンジいろになっていました。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
あきからふゆへかけ、そらは、青々あおあおれていました。まちのはずれへて、むこうをると、や、もりをこえて、はるかに山々やまやまかげが、うすくうきがっていました。
山に雪光る (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう、あたりのはたけはさびしくれていました。そして、とおい、たか山々やまやまには、ゆきがきていました。おじいさんははやまちへいって、用事ようじをすましてかえろうとおもいました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
晩方ばんがた少女しょうじょは、お人形にんぎょういてむらはずれへきました。まだ、とおくの山々やまやまには、ゆきひかっていました。このとき、どこからともなくうつくしい馬車ばしゃまえへきてまりました。
春近き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもたちが、さむかぜなか口々くちぐちに、こんなことをいって、かけまわりました。いつしか、国境こっきょうたか山々やまやまのとがったいただきは、ぎんかんむりをかぶったようにゆきがきました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼過ひるすぎには、どの山々やまやまも、うしろにとおくなって、故郷こきょうをはるばるとはなれたという心持こころもちがしました。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらの山々やまやまには、しろゆきがきていました。昼過ひるすぎに、トラックは、ちいさなさびしいまち問屋とんやまえまりました。問屋とんやひとたちがてきて、荷物にもつろしました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
盛夏せいかでも、白雪はくせつをいただくけんみねは、あお山々やまやまあいだから、夕日ゆうひをうしろに、のぞいていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まどからそとると、あたりの田圃たんぼや、雑木林ぞうきばやしは、まだ冬枯ふゆがれのしたままであって、すこしもはる気分きぶんただよっていなかったのです。山々やまやまには、ゆきしろひかっていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
西にしほう山々やまやまは、幾重いくえにもとおつらなっていて、そのとがったいただきが、うすあかくも一つないそらにそびえていました。まったく、あたりはしんとして、なんのこえもなかったのです。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いや、けっしてそうでない。この湖水こすいいだしただけでもこのたびはむだではなかった。あのすばらしい四辺あたり山々やまやまるがいい。」と、元気げんきな、ケーがんが、いいました。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとしのこと、おとこは、街道かいどうあるいていました。きたほうくにであって、なつのはじめというのに、国境くにざかい山々やまやまには、まだ、ところどころ、しろゆきえずにのこっていたのでした。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたし子供こども時分じぶんから山々やまやまがって、どこのがけにはなにがはえているとか、またどこのたににはなんのくさが、いつごろはないて、むすぶかということをよくっていました。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いよいよ、門出かどでがきました。かれは、停車場ていしゃじょうへのみちいそぎつつ、ふりかえって、一にちとしてなかったことのない、山々やまやまをながめました。くもていて、けんみねだけが、かくれていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりが、自分じぶんたちのまちについたころ、もうはくれかけていました。西にしほうそらは、うすあかいろづいて、そのしたには、紫色むらさきいろ山々やまやまが、たかひくく、くっきりと、姿すがたかびしていました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるふゆのこと、子供こどもは、むらはずれにって、かなたの国境こっきょう山々やまやまをながめていますと、おおきなやま半腹はんぷくに、はは姿すがたがはっきりと、しろゆきうえくろしてえたのであります。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しかし、今日きょうは、時間じかんがないから、また、なおすことにしようよ。」と、おじさんは、こたえて、そのかわり、かえりに、見晴みはらしのいいところで、あちらの山々やまやませてやろうといったので
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうげつとやまおくにもやまかさなりかえっていました。それらの山々やまやまは、まだふゆねむりからめずにいます。このへん終日しゅうじつひとかげないところでした。ただ、ともぶ、うぐいすのこえがしました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ずっと、いくとなくとおいところに、銀色ぎんいろうみがあります。それをわたっておかがり、ゆきしろひかった、たか山々やまやまかさなっている、そのやまえてゆくので、それは、容易よういにゆけるところでない。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
このあいだここへやってきた緑色みどりいろは、なつのはじめのころ、なんでもおおぜいがれをつくって、あの国境こっきょうたか山々やまやまえて七十も、八十も、あちらのほうからたびをしてきたといっていました。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
あめチョコの天使てんしは、あの子供こどもらは、あめチョコをって、自分じぶんをあの小川おがわながしてくれたら、自分じぶんは みずのゆくままに、あちらのとおいかすみだった山々やまやまあいだながれてゆくものを空想くうそうしたのであります。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はまったくれて、いつしか、夕焼ゆうやけの名残なごりすらなく、青々あおあおとしてみわたった、そらのたれかかるはてに、黒々くろぐろとして、山々やまやまかげかびがって、そのいただきのあたりに、きらきらと、一つ
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)