とど)” の例文
旧字:
一念天にとどいたか、ある大林のその中に、名さえも知らぬ木なれども、色もにおいもいと高き、十の木の実をお見附みつけなされたじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「どうか、この荷物にもつ無事ぶじ先方せんぽうとどけてくれ。そうすればかえりにあんころもちをってやるぞ。」と、おとこは、うしにいったのであります。
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはほとんど手のとどく所へ来て、手をのばしてつかまえようとした。するとひょいとかれはほかのえだにとびついてしまった。
それから日比谷ひびやで写真をって、主人、伯父、郷里の兄、北海道の母にとどく可く郵税ゆうぜい一切いっさいはらって置いた。日比谷から角谷は浅草あさくさに往った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕はそこを読みながら、おとといとどいた原稿料の一枚四十銭だったのを思い出した。僕等は二人ともこの七月に大学の英文科を卒業していた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「それではね、いちごを二はこと、それからなにかめずらしいものがあったら、いつものくらいずつ、とどけてくださいな。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
すると怖ろしいほどすぐちちが止るのである。嬰児あかごは泣く。——せめてこのき声なと、良人の耳にとどくすべもないかと、また、涙におぼれてしまう。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、せっかくよいこころで、そうしてとどけにたのを、へんなことをもうしてすまなかった。いや、わしは役目やくめがら、ひとうたがうくせになっているのじゃ。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「いやだよ。おまえは、もううち奉公人ほうこうにんでもなけりゃ、あたしのともでもないんだから、ちっともはやくあたしのとどかないとこへえちまうがいい」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それで皇后はさつそくお聞きとどけになりまして、新羅しらぎの王をおうまかいということにおきめになり、そのとなり百済くだらをもご領地りょうちにお定めになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「はつ‥‥」と、田中たなかはあわてて路上ろじやう腹這はらばひになつてばした。が、はなかなかとどかなかつた。手先てさき銃身じうしんとが何度なんど空間くうかん交錯かうさくつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かみさま、うぞわたくしの一しょうねがいをおとどくださいませ……。わたくし女房奴にょうぼうめ入水にゅうすいするともうして、家出いえでをしたきり皆目かいもく行方ゆくえわからないのでございます。
キーシュは氷の上をすっ飛んで、熊の手がとどかないところまで逃げて、平気な顔でその様子を眺めているんだ。
負けない少年 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
例の兎はたしかに地歴教師ルグリ先生のところへおとどけしておきました。むろん、この贈り物は先生をよろこばせたようです。厚くお礼を申してくれとのことでした。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
わきの下がけて、そのけ口が一ばん下までとどきそうになったのが感じられた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
警部けいぶはなしたのは、金魚屋きんぎょや笹山大作ささやまだいさく申立もうしたてについてである。途中とちゅうまで平松刑事ひらまつけいじはだまつていた。そして、ランチュウが老人ろうじんうちとどけられたのは、お節句せっくあさだとわかつたとたんに
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
天子てんしさまも阿倍あべ仲麻呂なかまろ子孫しそんだということをおきになって、およろこびになり、保名親子やすなおやこねがいをおとどけになりました。そこで童子どうじはからすにいたとおりうらないをててもうげました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
二日ふつかめで、はやこうしてとどく。とおいといっても便利べんりなかじゃ。」と、母親ははおやは、まだ汽車きしゃのなかったときのことを、かんがえていました。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
所どころ高低こうていはあっても、日のとどくかぎり野原であった。畑地はたちもなければ森もない、遠方から見るとただ一色のねずみ色の土地であった。
余等はまた土皿投かわらけなげを試みた。手をはなれた土皿は、ヒラ/\/\と宙返ちゅうがえりして手もとに舞い込む様に此方こなたの崖に落ち、中々谷底たにそこへはとどかぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きちちゃんが、去年きょねん芝居しばいんだときだまってとどけておくんなすったお七の衣装いしょう、あたしにろとのなぞでござんしょう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ふん。こうさえしてしまえば、あとはむこうへとどこうが届くまいが、郵便屋ゆうびんや責任せきにんだ。」と先生はつぶやきました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さいわいにもわたくし念力ねんりきとどき、おとこはやがて実家さとからして、ちょいちょい三崎みさきおんなもとちかづくようになりました。
ぼくたちは弁当べんとうっていなかったのではらぺこになって、むらに二時頃じごろかえってた。それから深谷ふかだにまでおじいさんをとどけにいってくるのはらく仕事しごとではなかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
宇受女命うずめのみことはその神を送りとどけて帰って来ますと、笠沙かささの海ばたへ、大小さまざまのさかなをすっかり追い集めて
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
王子は勢好いきおいよく飛び上る。が、戸口へもとどかない内に、どたりと尻餅しりもちをついてしまう。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「おや、どうなすったんですか。こないだおとどけしたのは新しかったはずですが。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
それから、どえらい煙を天までとどくように吹きあげ、さて彼はいう——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
鐘巻どのも一りゅう火術家かじゅつかでありながら、あの的先まとさきにお眼がとどかぬとは心ぼそいしだいでもあり、また、検証けんしょう床几しょうぎにつかれながら、徳川家とくがわけへ勝ち名のりをあげられたのは早計そうけいしごくかとかんがえます
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが目のとどかぎ両側りょうがわは雪にうずまった林であった。前はもう二、三間(四〜五メートル)先が雪でぼんやりくもっていた。
みつは、このことを交番こうばんとどけなければならぬとかんがえました。さっそく交番こうばんほうはしっていきました。彼女かのじょのいうことをいた、巡査おまわりさんは
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
調度類ちょうどるい前以まえもっ先方せんぽうおくとどけていて、あとから駕籠かごにのせられて、おおきな行列ぎょうれつつくってんだまでのはなしで……しきはもちろん夜分やぶんげたのでございます。
今は正規の夫婿顔ふせいがおして、凡そ眼のとどかん限り、耳の聞かん限り、一切の雄犬おいぬを屋敷の内へは入れぬ。其目一たび雄犬の影を見ようものなら、血相変えて追払う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今日学校へ行って武田たけだ先生へ行くとってとどけたら先生も大へんよろこんだ。もうあと二人足りないけれども定員ていいんえたことにしてけんへは申請書しんせいしょを出したそうだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あれだ、若旦那わかだんな。あっしゃァうしろにいたんじゃねえんで。若旦那わかだんなならんで、のぞいてたんじゃござんせんか。こしすにもさないにも、まず、とどきゃァしませんや。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
海賊船かいぞくせんかもわからないものを、このままにだまってはいられない。すぐにとどなければ……。」と、一人ひとりがいいました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
百姓ひゃくしょうはわたしたちが雌牛めうしのことをそんなにくわしく批評するので、きっと世話もよく行きとどくだろうから、二百五十フランにまけてあげようと言った。
どうせお返事へんじをしたってぼくのところへとどきはしませんから、それから僕の話でおもしろくないことがあったらよこの方に頭をってください。これは、本当は、ヨーロッパの方のやり方なんですよ。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このひとけば、役所やくしょとどけのことも、また書画しょが鑑定かんていも、ちょっとした法律上ほうりつじょうのこともわかりましたので、むらうち物識ものしりということになっていました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは白パンの大きな切れとつめたい子牛の肉を持って来て、これは検事けんじさんからのとどものだと言った。
半分ばかりしかシグナレスにとどきませんでした。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「かわいらしい、雪割草ゆきわりそうはなだな。これをとどけてもらおうか。」といいました。そして、雪割草ゆきわりそうは、その午後ごご、この温室おんしつなかから、そとされたのです。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうしてなお話をつづけながら、警察けいさつとどけたことや、巡査がヴィタリスを運んで行ったことや、わたしを長男のアルキシーの寝台ねだいにねかしたことなどをのこらず話してくれた。
巡査おまわりさんにとどけて、そのわるいことをしたやつしばってもらうんです。あなたは、なにかぬすまれたんですか。」
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それらの内部ないぶには、独立どくりつした子供部屋こどもべやがあり、またどのしつにも暖房装置だんぼうそうちとどいているであろう。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おけには、学校がっこうへいく子供こどももあって、もし戦地せんち息子むすこさんからきた手紙てがみなら、かならずそのうちとどけてやるからというのであるが、おじいさんは、それがてなかった。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
なかにはこのふねさえてしまおうというもの、とどたほうがいいというもの、またはすぐにこのみなとからいたててしまったほうがいいというもので議論ぎろんはもめたのでした。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いくたびとなく自転車じてんしゃにつけて、得意先とくいさきとどけなければならぬこともありました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)