對手あひて)” の例文
新字:対手
女同士をんなどうしはわあとたゞわらごゑはつして各自てんで對手あひていたりたゝいたりしてみだれつゝさわいだ。突然とつぜん一人ひとりがおつぎのかみへひよつとけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、あはれや夕飯ゆふめし兼帶けんたいだいざるはしげた。ものだと、あるひはおとなしくだまつてたらう。が、對手あひてがばらがきだからたまらない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうへ趣味しゆみひろく——たとへば最近さいきん、その三上みかみ對手あひてとして、いいとしをしながら(失言しつげん?)將棋しやうぎ稽古けいこしかけたりしてゐる。
と細い聲で、靜に、冷笑的に謂ツて、チラと對手あひての顏を見る。そしてぐいと肩をそびやかす。これは彼が得意の時にく行る癖で。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
新聞しんぶん今朝けさまへつくしてしまつたし、ほん元氣げんきもなし、ねむくもなし、喋舌しやべ對手あひてもなし、あくびもないし、さてうなると空々然くう/\ぜん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一生の重荷となれば、憎くもなり、はふりだしたくなる方が道理で、これは『細君つま』であるからの退屈ではない。花火的の情熱の對手あひてなら、猶更その負擔と欠伸は早く來る。
こんな二人 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
甲田は何かの拍子で人と爭はねばならぬ事が起つても、直ぐ、一心になるのが莫迦臭いやうな氣がして、笑はなくても可い時に笑つたり、不意に自分の論理を抛出なげだして對手あひてを笑はせたりする。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あいちやんは獨語ひとりごとひました『朝鮮猫てうせんねこだわ、づこれで談話はなし對手あひて出來できた』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
えゝ、申兼まをしかねましたが、それそれが、みちなりませぬ、目上めうへのおかたに、もうこゝろもくらんでまよひましたとふのは、對手あひて庄屋しやうやどのの、の。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
失望しつはう煩悶はんもんとがごツちやになツてへず胸頭むなさき押掛おしかける………其の苦惱くなう、其のうらみ、誰にうつたへやうと思ツても訴へる對手あひてがない。喧嘩けんくわは、ひとりだ。悪腕わるあがき
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
らまあ、どうしたもんだ」おつぎがおどろいてさけんだとき對手あひてはおつぎのくしうばつて混雜こんざつした群集ぐんしふなかぼつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
貴君あなた隨分ずゐぶんくちわるいね』とかなんとか義母おつかさんつてれると、益々ます/\惡口雜言あくこうざふごん眞價しんか發揮はつきするのだけれども、自分じぶんのは合憎あいにうまことをトン/\拍子びやうしふやうな對手あひてでないから
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
やつがあるものかと、みなわらふと、「ひますさ。」とぶつ/\ふ。對手あひてにしないと「ぼくふとしんずるさ。」とほゝへこましてはらてた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんな五月繩うるさときには一時ちよつとをどりめて對手あひてしかつたりたゝいたり、しかその特性とくせいのつゝましさをたもつて拍子ひやうしあはなが多勢おほぜいあひだまれつゝどうせん反覆はんぷくしつゝをどる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たび道連みちづれなさけといふが、なさけであらうとからうと別問題べつもんだいとしてたび道連みちづれ難有ありがたい、マサカひとりでは喋舌しやべれないが二人ふたりなら對手あひて泥棒どろぼうであつても喋舌しやべりながらあるくことが出來できる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
けれども、對手あひて守子もりつこ飯炊めしたきでない、ひともこそあれ一大事いちだいじだ、とおもふから、のちとてもみなくちをつぐんでなんにもはず無事ぶじにしばらくつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
坂上さかがみ外套ぐわいたうそでぢて、くびすよこざまにみながら、中折なかをれひさしから、對手あひて眉間みけんかしつつ
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
對手あひてもなければ小遣こづかひもなく、まさか小盜賊こどろばうをするほどに、當人たうにん氣位きぐらゐたかいからてられず。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「えゝ、申兼まをしかねましたが、それの、みちなりませぬ、目上めうへのおかたに、こゝろもうちこんでまよひました、とふのは、對手あひて庄屋しやうやどのの、の、」と口早くちばやひたした。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人間にんげんうまでにりませずば、表向おもてむ貴下あなたのおともをいたしまして、今夜こんやなんぞ、たとひ對手あひて藝者げいしやでも、御新姐樣ごしんぞさまには齋檀那ときだんな施主方せしゆがた下足番げそくばんでもしませうものを、まつた腑甲斐ふがひない
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……對手あひて百日紅さるすべりだと燒討やきうちにもおよところやなぎだけに不平ふへいへぬが、口惜くちをしくないことはなかつた——それさへ、なんとなくゆかしいのに、あたりにしてはなりひろい、には石燈籠いしどうろうすわつたあたりへ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どこか近郊きんこうたら、とちかまはりでたづねても、湯屋ゆや床屋とこやも、つりはなしで、行々子ぎやう/\しなどは對手あひてにしない。ひばり、こまどり、うぐひすを町内ちやうない名代なだい小鳥ことりずきも、一向いつかう他人たにんあつかひで對手あひてにせぬ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これはちかられて對手あひてそのさせようとしたのである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
對手あひてこひかたきでもゆるしてとほならひである。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
對手あひてたちま元氣げんきづいたこゑして
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)