)” の例文
四五日しごんちすると夫人が来る。そこで今度は二人してまた東西南北をけ廻った揚句のはてやはりチェイン・ローがいという事になった。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
医者に何一つい事はないが、若い女の手が握られるだけが取柄だと。卜新老は人も知つてる通り若い妾を可愛かあいがるので名高い人だ。
上邸かみやしきと違ってお長家ながやも広いのを頂戴致す事になり、重役の気受けも宜しく、男がよくって程がいから老女や中老までもめそやし
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
人もその通りで、い智恵を出させようとするにはそれだけの食物を与えなければなりますまい。野菜を作っても肥料こやしが大切です。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「さういふみじかいのは端布片はしぎれふにかぎるのさ、いくらにもつかないもんだよ、わたし近頃ちかごろついでもあるからつてつてもいよ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
むかしむかし大昔おおむかしいまから二千ねんまえのこと、一人ひとり金持かねもちがあって、うつくしい、気立きだてい、おかみさんをってました。
同僚どうりょう上役うわやくの評判は格別いと言うほどではない。しかしまた悪いと言うほどでもない。まず平々凡々たることは半三郎の風采ふうさいの通りである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
町が出来る。鉄道がかかるという順序だ。い事でも悪い事でも何でも、皮切りをやるのはドッチミチ日本の女だってえから豪気ごうぎなもんだよ。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「決していことじゃない。親友をあざむいているんだから、気が咎めるよ。むしろ直ぐに打ち明けて頼む方がいゝかも知れない」
田園情調あり (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「こいつあ、人間にんげんのあるものによくてけつかる。それもことならいいが、ろくでもねえところなんだから、たまらねえ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
で、家賃も何もみんな払へたつて本統ですか? ヨシさんなんてい息子をお持ちなすつたのが何よりお仕合せですネ。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
「よろしうございます、帰りには、きつと、持つてまゐりませう。」と、い加減なお返事をいたしておきました。
岩を小くする (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
お坊ちゃん育ちで気のい旦那は、戸外へ一歩出ると、まるで気が弱く、人ざわりがいいくせに、家のなかでは別人のように、わがままで暴君である。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
「こりゃ、どっちかっていえば、悪いことじゃなくって、いことなんだよ。頭ん中の脳がせいせいするからね」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「いや、そんな物をもらったんでは、わたし達のご奉公になりません。生れて初めて、ことをしたという気持でもう沢山です。どうかそんなご心配なく」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは日本にわずか三部しかないい版の『十三経註疏ぎょうちゅうそ』だが、おう様がお前のだとおっしゃった。今年はもう三回忌の来る年だから、今からお前のそばに置くよ」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いも悪いもあるものか、僕が引受けたからかまはんよ。遊佐、君の事ぢやないか、何を懵然ぼんやりしてゐるのだ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その万吉も女房のお幸も気だてのい者で、すべての事情を承知の上でお金を引き取って、うみの娘のように育てゝいるうちに、亭主の万吉が早く死んだので
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
われわれのうちある者は平均よりはるかにい暮らしをしており、他の者ははるかに悪い暮らしをしておるのは何ゆえであるかということと、この二つである*。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
号室ごうしつだい番目ばんめは、元来もと郵便局ゆうびんきょくとやらにつとめたおとこで、いような、すこ狡猾ずるいような、ひくい、せたブロンジンの、利発りこうらしい瞭然はっきりとした愉快ゆかい眼付めつき
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「婆さん/\。今帰つた。今日は売りだめのおあしは一文も持つて来なかつたが、その代りとても幾百両だしても買へないいお土産をもつて来た。何だか当てゝみなさい。」
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
みづおぼれやせぬかと、心配しんぱいするやうものは、みちはや平生へいぜいから、後生ごしやうひとではあるまい。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こうして学者は国へかえると、この世の中にある真実しんじつなこと、いこと、美しいことについて本を書きました。さてその後、日が立って、月がたって、いくねんかすぎました。
おこっちゃけないことよ」と客の少女はきまり悪るそうに笑って言出し兼ねている。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なんぢおきなよ、そちはすこしばかりのいことをしたので、それをたすけるために片時かたときあひだひめくだして、たくさんの黄金おうごんまうけさせるようにしてやつたが、いまひめつみえたのでむかへにた。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
「さあ、許されないことはないでしょうよ。あなたい人じゃありませんか。」
「そりゃいお母さんです。真実ほんとうの母でもあんなにはしてくれないでしょう」
いろいろのひと鳥渡ちよつとかほせて直樣すぐさまつまらないことつて仕舞しまふのだ、傘屋かさやせんのお老婆ばあさんもひとであつたし、紺屋こうやのおきぬさんといふちゞれつひと可愛かあいがつてれたのだけれど
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
親たちも家になくてならぬ娘であるから、自分が結婚を望む気振けぶりもないのをい事にして格別勧めようともしなかった。そうして自分は出来るだけ従順に働いて、せわしい家業に心を尽していた。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
そうしてどちらがいか悪いか誰れだって考えて見ろと思った。すると
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
なお日の中にもい日と悪い日がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
どつちにしてもそれはいことだ
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
いとも思っちゃいねえよ」
暴風雨の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
アーノルド・デイリーは無論い小僧に相違なかつた。何故といつて彼は時々主人を訪ねて来るお客に悪戯てんがうをする事を知つてゐたから。
市「はい御機嫌宜しゅう……何時もお若いね御器量のいてえものは違ったもんで、今日は貴方あんた大嗜だいすきな人を連れて来ましたよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大原「小山君、味のい物はなお登和さんの料理だ。少々不出来なものは奥さんの手になったのだし、干瓢かんぴょう焦臭こげくさいのは僕が手伝ったのだ」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
牧師さんの説教でも聞いたら音なしいい子になれるだろうと思って、お母さんに左様そう話したら、お母さんは大層喜んだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
毎日まいにちあさから尻切襦袢しりきりじゆばん一つで熱湯ねつたうをけみぎかたさゝへてはある威勢ゐせい壯丁わかものあひだまじつてうたこゑきいたのに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼等は肩を並べながら、薄明うすあかるい広場を歩いて行つた。それは彼等には始めてだつた。彼は彼女と一しよにゐる為には何を捨ててもい気もちだつた。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この垣根の穴は今日こんにちに至るまで吾輩が隣家となりの三毛を訪問する時の通路になっている。さてやしきへは忍び込んだもののこれから先どうしていか分らない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くちばし引傾ひっかたげて、ことんことんと案じてみれば、われらは、これ、余りたちい夥間でないな。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日のごときい暮らしをしているのは、——い暮らしをしていると言うのが悪ければ、悪い暮らしをしていると言うてもいいが、——それは何ゆえであるかということと
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「鉄砲は、二人で一ちょうあればたくさんさ。仲のい兄弟は、なんでも催合もあいにするもんだ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「お葉さん。お前、うしてもおらの嫁になるのはいやか。え、お葉さん。後生だから承知してれないか。おらんな山の中に棲んでるけれども、宝物たからものを沢山っているんだ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
するとなかから、くもちのぼり、そのくも真中まんなかで、ぱっとったとおもうと、なかから、うつくしいとりして、こえをしてうたいながら、中空なかぞらたかいのぼりました。
「ハア、あの五週間の欠勤届の期限が最早きれたから何とか為さらないとけないッて、平岡さんが、是非今日私に貴姉あなたのことを聞いて呉れろッて、……明朝あしたは私が午前出だもんだから……」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
號室がうしつだい番目ばんめは、元來もと郵便局いうびんきよくとやらにつとめたをとこで、いやうな、すこ狡猾ずるいやうな、ひくい、せたブロンヂンの、利發りかうらしい瞭然はつきりとした愉快ゆくわい眼付めつきちよつるとまる正氣しやうきのやうである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
眼眩めまぐるしい程咲き乱れていたが、姫は又もやお話の事を思い出して、ああ、あの花が皆い魔物か何かで、一ツ一ツに面白い話しをてくれればいいものを、の林の中にさえずっている小鳥が天人か何かで
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「ほんたうとも。ほんたうとも。だれだつてあいつのそばに寄れはしないよ。ひどい奴さ。やぶ薔薇だつて中にはなか/\いのもゐる。けれども、あいつはたまらない。ちつとでも、すきがありや、すぐ引つくんだからね。それや悪いやつさ。」
虹猫と木精 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
むかし王献之わうけんしの書が世間に評判が出るに連れて、何とかして無償たゞでそれを手に入れようといふ、虫のい事を考へるむきが多く出来て来た。