利益りえき)” の例文
「なるほどそういう場合には、わたしたちで利益りえきを分けるのだね。ところで、ひとつ、きばってさしあたり三十フラン分けてあげようよ」
それはわたし権内けんないいことなのです。まあ、かんがえて御覧ごらんなさい、わたしかり貴方あなたをここからだしたとして、どんな利益りえきがありますか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うっかり首を横にふられるとたいへんだから、充分じゅうぶん利益りえきを説きつくしてから正三君の意向をたずねようと思っていたのである。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その鰹船かつをぶねひとづゝこの器械きかいそなけるやうになつたら、莫大ばくだい利益りえきだつてふんで、此頃このごろ夢中むちゆうになつて其方そのはうばつかりにかゝつてゐるやうですよ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其時そのとき日本帝國にほんていこく』から何程なにほど利益りえき保護ほごとをけてゐるのかとはれたら、返事へんじには當惑たうわくするほどのミジメな貧乏生活びんばふせいくわつおくつてゐたくせに。
やがてふゆって、またはるとなりました。ちょうどそのころ、この二つのくには、なにかの利益りえき問題もんだいから、戦争せんそうはじめました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
外国人も貿易の一点に注意ちゅういすることとりたれども、彼等のるところはただこれ一個の貿易国ぼうえきこくとして単にその利益りえきを利せんとしたるにぎず。
彼等かれらしろ手拭てぬぐひあつまつてはるかひとほか師匠ししやううち格別かくべつ利益りえきもなく彼等かれら自分等じぶんらのみが一にちたのしくらるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
火山地方かざんちほう地下熱ちかねつ利用りようなどもあることだから、使つかようによつては人生じんせい利益りえきあたへる時代じだいもやがて到着とうちやくするであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たしかに、みずうみして、はたけ牧場ぼくじょうにするのは、利益りえきのある、いい計画けいかくにちがいないわ。でも、トーケルン湖でない、ほかの湖だっていいわけだわ。
ふことがあきらかみとめられるのであつて、それを整理せいりすることは、くに利益りえきからして當然たうぜんかんがへるのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
便利べんりあり、利益りえきある方面はうめんむかつて脱出ぬけだしたあとには、こののかゝるおもかげが、空蝉うつせみになり脱殼ぬけがらになつてしまふのである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
のちあるしよ感冐かんばう豫防よばうするに冷水浴れいすゐよく非常ひじやう利益りえきあるよしふたゝ冷水浴れいすゐよくおこなひ、春夏しゆんかこう繼續けいぞくするをしも、寒冷かんれいころとなりては何時いつとなくおこたるにいた
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
さうすれば自然しぜんあのかたのお名前なまへにもきずのつくことでございますから、ふねにおりになるまで、我慢がまんしてゐたはうが、双方さうはう利益りえきだらうと、あにもさうまうしますものですから。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それらの財宝は、すべて、日本の教育復興のために使用されることになり、戸倉老人や少年探偵団、さてはまた、秋吉警部たちは、それから一銭の利益りえきることはなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つまところ大紛爭だいもんちやく引起ひきをこして、其間そのあひだ多少たせう利益りえきめんとくわだてゝる、じつその狡猾かうくわつなること言語げんごぜつするほどだから、いま櫻木大佐さくらぎたいさ公明正大こうめいせいだいこのしま發見はつけんし、なづけて朝日島あさひとう
その保安林ほあんりんだけでは、そこからなが河川かせん流域一帶りゆういきいつたい人々ひと/″\利益りえきをうけるといふのみで、これだけではまだ完全かんぜん一國民全體いつこくみんぜんたい森林しんりん利用りようしてゐるとはいへませんでしたが
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ねえ、私達はいさぎよくその恩を被ようではありませんか! さうして愛をゆたかに持つことにつとめ、それをすべてにさゝげることに、決して自分の利益りえきを考へないやうにと心掛こゝろがけませう。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
私にどんなに利益りえきになつたことだらう? さうだ、ちやうど「安樂すぎる椅子」にじつと腰かけて飽々あき/\してゐる人に、遠くまで散歩させると同じ程のいゝことをしてくれたのだ。
陰陽いんよう表裏ひょうり共に自家の利益りえき栄誉えいよを主張してほとんど至らざるところなく、そのこれを主張することいよいよ盛なる者に附するに忠君ちゅうくん愛国あいこく等の名を以てして、国民最上の美徳と称するこそ不思議なれ。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これはそのじぶん秩序ちつじょもなく、わたしの心にはいっては来たが、いつまでも消えることはなかった。それはわたしに利益りえきのこした。いいところだけが残った。
安之助やすのすけ當分たうぶんあひだわづかな月給げつきふと、この五千ゑんたいする利益りえき配當はいたうとでらさなければならないのださうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すなわち彼等は長州がつも徳川がくるもごうも心にかんせず、心に関するところはただ利益りえきの一点にして
本來ほんらいならせきで、工學士こうがくしはなした或種あるしゆ講述かうじゆつを、こゝに筆記ひつきでもしたはうが、まるゝ方々かた/″\利益りえきなのであらうけれども、それは殊更ことさら御海容ごかいようねがふとしてく。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
同郷どうきやう』『同藩どうはん』といふことから何等なんら利益りえき保護ほごけなくなるとともに、日本國内にほんこくないけるわたしのコスモポリタニズムはいよ/\徹底てつていしてゐたが、世界列國せかいれつこくといふものにたいしては
飛行機ひこうきができて、一にちに、千も二千も、ぶようになったって、それがおれたちに、なんの利益りえきにもなるのでない。このふねでも、あたらしかったむかし威張いばって、おおきな港々みなとみなとへいったものさ。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
爲替かはせ急激きふげきなる低落ていらくくすることが出來できるとふことになるのであるから、在外正貨ざいぐわいせいくわ補充ほじうはかるとふことは、左樣さやう意味いみおい經濟界けいざいかい非常ひじやう利益りえきあたへる、とかんがへたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
すなわち彼等の目的もくてき時機じきに投じて恩威おんいならほどこし、くまでも自国の利益りえきらんとしたるその中には、公使始めこれに附随ふずいする一類いちるいはいにも種々の人物じんぶつありて
こうなるとヴィタリスの手ほどきをしてくれた利益りえきがむだにはならなかった。わたしはねながらそれをひとごとに言って、かれのことをありがたく思い出していた。
莫大ばくだい利益りえき有難ありがたいが、さうつて身體からだでもわるくしちやつまらないぢやないかつて、此間このあひだわらつたくらゐ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それがために、こうの百しょうは、どれだけ利益りえきていたかわかりません。
駄馬と百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちはそこでかれの手伝てつだいをしてやろうということになった。一座いちざができて、わたしたち五人の間に利益りえきを分けることになった。そのうえカピにもいくらかやることにした。
わたしにはせいの高いという利益りえきもないし、あのりっぱなしらが頭も持たなかった。