“くろ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
62.4%
13.1%
10.8%
1.8%
1.6%
1.2%
1.2%
黒犬0.7%
0.7%
0.7%
黒石0.5%
0.4%
0.4%
0.4%
0.4%
黒猫0.4%
0.4%
畦畔0.2%
0.2%
0.2%
漆黒0.2%
玄人0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
苦勞0.2%
0.2%
黒縮緬0.2%
黒色0.2%
黒馬0.2%
黒駒0.2%
黒鹿毛0.2%
0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
やがて大きなつめでひっかくようなおとがするとおもうと、はじめくろくもおもわれていたものがきゅうおそろしいけもののかたちになって
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
波のあいだになにやらくろいものが見えますゆえ、なんであろうと舷を寄せ、仔細にこれを眺めますれば、それは生れたばかりの鯨の子。
わっ——と逃げる子供の群れに突かれて、桑畑のくろよろめいて、痛そうに眼をうるませていた若い女が、ふと、足軽達の眼にとまった。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒血大地をさらにくろうし、冀州の空、星は妖しく赤かった。田豊死すとつたえ聞いて、人知れず涙をながした者も多かった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武家の大逆もさることながら、ここしばしは、日月じつげつくろうなり、至尊しそんたりとも、あめしたにお身を隠す所すらない乱れを地上にみるでしょう。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
崖下のくろい水も、何かわめきながら、高股になって、石をまたぎ、抜き足して駈けている。崖の端には、車百合の赤い花が、ひときわ明るく目立つ。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
お婆さんは、ごくりごくりと咽喉のどを鳴らしながら水を呑んだ。お美代はすぐに眼を伏せて、膝の上の自分の手を見た。くろい肌には一面の赤いひびだった。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
彼女はやっと、黒犬くろの引きずって行く縄の端をつかまえた。黒犬くろはつかまると、彼女におおきな体を押しつけてからみついた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうすれば、しまいに己は自分の過去を忘れ果て、一匹の虎として狂い廻り、今日のように途で君と出会っても故人ともと認めることなく、君を裂きくろうて何の悔も感じないだろう。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
常吉はうしろからぽきぽきとそれをもぎ取ってふごへ入れる。一と畚溜ればうんと引っ抱えて、くろに放した馬の両腹の、網の袋へうつしこむ。馬は畠へ影を投げて笹の葉を喰っている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「やれ助かった」と手を延ばし、パチリと黒石くろを置いたものである。「まずこれで脈はある」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三笠山は何か後暗うしろくらい事でもしたやうにくろずんだ春日の杜影もりかげに円い頭をすぼめて引つ込んでゐた。
虎狗を食して淫を起し狗赤小豆あずきを食して百疾をいやし猫天蓼をくろうてしきりにまじわる、狐焼鼠を見て命を失う猩桃を得て空になげうつ、鼠蕎麦に就いて去る事を知らず、雉子胡麻を食して毎朝来ると見ゆ。
あの娘は不動様へ又お参りに来ましょう、そこでまだ貴方を見ねえのだから先刻さっきわっちが話を聴いて見ると、斯ういうくろの羽織を着て、斯々これ/\の方を御覧かと云ったら急いだから存じませんと云うから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ともしびくろうしては、数行すうこう虞氏ぐしが涙、夜深うしては、四面楚歌しめんそかの声
「あれ、また俥屋くるまや黒猫くろが! しいっ!」
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
遠野の城下はすなわち煙花の街なり。馬を駅亭の主人に借りてひとり郊外の村々をめぐりたり。その馬はくろき海草をもって作りたる厚総あつぶさけたり。あぶ多きためなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うしろ田圃たんぼでは、みづこけのわるにはつてるうちからゆきけつゝあつたので、畦畔くろ殊更ことさらしろせんゑがいてたつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
青田あをた畦畔くろには處々しよ/\萱草くわんさうひらいて、くさくとては村落むら少女むすめあかおびあつやさないでも、しぼんではひらいて朱杯しゆはいごと點々てん/\耕地かうちいろどるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これは蛇が鼠をくろうて、庫を守るより出た事か、今も日本に米倉中の蛇を、宇賀神など唱え、殺すを忌む者多し。
鼻のあたり薄痘痕うすいもありて、口を引窄ひきすぼむる癖あり。歯性悪ければとて常にくろめたるが、かかるをや烏羽玉ぬばたまともふべくほとん耀かがやくばかりにうるはし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
よく物を言ふ眼が間断ひまなく働いて、ほどけばに余る程の髪は漆黒くろい。天賦うまれつきか職業柄か、時には二十八といふ齢に似合はぬ若々しい挙動そぶりも見せる。一つにはだ子を有たぬ為でもあらう。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「見ろ。はっはっは、犯人ほし玄人くろだせ。急場にそこいらさぐったって、これじゃあおいそれたあ出ねえわけだ。」
やがて前方に、雲かかすみをひいたように、敵の第一陣線が望まれた。手をかざして見れば、くろい旗には「南安之龐徳なんあんのほうとく」と印し、白い旗には「必殺関羽」と書いてあるのが見える。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ。まずよろうたる武者つわもの、七々四十九人を選び、みなくろき旗を持ち、みな皁きころもを着て、いのりの帳外を守護せしめい」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もて業となす醫師ゆゑ惡き荷擔かたんはせずと奉行に向ひ立派りつぱに云ひくろめんとこそ計りしが今我面わがかほを見知たる和吉が出しにはつと計りおどろおそれて面色めんしよくつちの如くにふるひ出せば忠相たゞすけぬしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんなら話すが実はおれも死のうと思っている、という訳は、旦那の金を二百六十両をつかい込んで、払い月だがまださがりませぬ/\と云って、今まで主人を云いくろめたが、もう十二月の末で
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
吾子が受領すべきは、くろき衣と大なる帽となり。かくて後は、護摩ごま焚きて神に仕ふべきか、いばらの道を走るべきか。そはかれが運命に任せてむ、とのたまふ。
れるよほどこゝろなら、ほんに苦勞くろでも大儀たいぎでも、つぼみはならさずに、どうかかせてくだされよう……」熟練じゆくれんしたこゑ調子てうしが、さうでなくても興味きようみつてる一どうみゝにしみじみとひゞいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
また昔時せきじシナのきさきが庭園を散歩し、ももじゅくしたのを食い、味の余りになりしに感じ、独りこれをくろうに忍びず、い残しの半分を皇帝にささげ、その愛情の深きを賞せられ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あたかもその時帳場の横で黒縮緬くろ羽織はおり、鳩鼠色の紐を結んで居たのは小歌で、貞之進は何か云いたかったが云う折でもなく、又云うことも出来ぬのでそのまゝ下足番の所へ行った。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
問屋筋のかたぎのうちでは、大きな、極印ごくいんのような判をベタベタと押した。実印も黒色くろだった。
すがしゆう近づけてむかひ合ふ黒馬くろ黒馬くろとに月明りあり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
小さな馬と幌馬車ほろばしゃを買って、あの子がぜひとも黒駒くろにしてくれと申しますから、黒駒くろを買うことにして、一昨日、計画したように、ここを立つんでございます。
「はい、クンプウというサラブレッド種の黒鹿毛くろを」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渠の形躯かたちは貴公子のごとく華車きゃしゃに、態度は森厳しんげんにして、そのうちおのずから活溌かっぱつの気を含めり。いやしげに日にくろみたるおもて熟視よくみれば、清※明眉せいろめいび相貌そうぼうひいでて尋常よのつねならず。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)