くろ)” の例文
拝田村の村と、村の田のくろと、畑のあぜとを走る幼い時の自分の姿が、まざまざと眼の前に現われて来ました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
常吉はうしろからぽきぽきとそれをもぎ取ってふごへ入れる。一と畚溜ればうんと引っ抱えて、くろに放した馬の両腹の、網の袋へうつしこむ。馬は畠へ影を投げて笹の葉を喰っている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
うしろ振返ふりけえり/\行く………見ろよ…………あゝ誰かでけえ馬ア引出しやアがって、馬の蔭で見えなくなった、馬を田のくろ押付おッつけろや…あれまア大え庚申塚こうしんづかが建ったな、れア昔からある石だが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、田のくろを、這い上がっているようだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)