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くろ
ふりがな文庫
“
畔
(
くろ
)” の例文
曼珠沙華
(
まんじゆしやげ
)
は田の
畔
(
くろ
)
の石地蔵が好きだ。むらがり寄つてお祭りする。この花は又墓場も好きだ。淋しさに燃えていられる処だからだ。
雑草雑語
(新字旧仮名)
/
河井寛次郎
(著)
わっ——と逃げる子供の群れに突かれて、桑畑の
畔
(
くろ
)
に
蹌
(
よろ
)
めいて、痛そうに眼をうるませていた若い女が、ふと、足軽達の眼にとまった。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暮れがたになってはさしもに大きな一まちの田も、きれいに刈り上げられて、稲は
畔
(
くろ
)
の限りに長く長城のごとくに組み立てられた。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
然しお定も、二三年前から田の
畔
(
くろ
)
に植ゑる豆を自分の
私得
(
ほまち
)
に貰つてるので、それを賣つたのやら何やらで、矢張九圓近くも貯めてゐた。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
田の
畔
(
くろ
)
に腰を休めて、それとなく話しかけましたところが、尉も鍬を杖につきながら、こゝの御領分を持っていらしったお方と云うのは
三人法師
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
さアと促されて吉次も仕方なく連れだって行けば、お絹は先に立ち往来を
外
(
はず
)
れ田の
畔
(
くろ
)
をたどり、堤の腰を
回
(
めぐ
)
るとすぐ海なり。
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
昔おくらという女がただ一人、田の
畔
(
くろ
)
に幼児を寝させて置いて田の草を取っていると、不意に
鷲
(
わし
)
が来てその子を
攫
(
つか
)
んで飛んで行ってしまった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
午食前
(
ひるめしまえ
)
に、夫妻鶴子ピンを連れて田圃に
摘草
(
つみくさ
)
に出た。田の
畔
(
くろ
)
の猫柳が
絹毛
(
きぬげ
)
の
被
(
かつぎ
)
を脱いで
黄
(
きい
)
ろい花になった。
路傍
(
みちばた
)
の
草木瓜
(
くさぼけ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
が
朱
(
あけ
)
にふくれた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
田の
畔
(
くろ
)
を流れる小さい水のはたで、子供が
泥鰌
(
どじょう
)
をすくっているほかに、人通りもないのを見すまして、半七はまた訊いた。
半七捕物帳:09 春の雪解
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
金三は
顋
(
あご
)
をしゃくいながら、桑畑の
畔
(
くろ
)
へ飛び出した。良平もべそをかいたなり、やむを得ずそこへ出て行った。二人はたちまち
取組
(
とっく
)
み合いを始めた。
百合
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
俥
(
くるま
)
を
横
(
よこ
)
に、つか/\と、
田
(
た
)
の
畔
(
くろ
)
へ、
挽
(
ひ
)
いて
乗掛
(
のつか
)
けると、
白
(
しろ
)
い
陽
(
ひ
)
に、
影
(
かげ
)
もなく、ぽんと
立
(
た
)
つて、ぺこ/\と
叩頭
(
おじぎ
)
をした。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
昔細川幽斎、丹後の白杉という所へ鷹狩に出た時、何者か道の
傍
(
かたわら
)
の田の
畔
(
くろ
)
に竹枝を立て書いた物を掛け置いた。見れば百姓の所為らしい落書だった。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
凍った雪が二人を
担
(
にな
)
って、
掠
(
かす
)
り傷さえ受けもせず
易々
(
やすやす
)
と谷底へ下り立ったが
突兀
(
とっこつ
)
たる雪の巌、氷張り詰めた河の
畔
(
くろ
)
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
垣に梅が咲き、田の
畔
(
くろ
)
に緑の草が
萌
(
も
)
える頃には、
托鉢
(
たくはつ
)
に出るかれの
背後
(
うしろ
)
にいつも大勢の信者が集つてついて来た。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
堤の日だまりや田の
畔
(
くろ
)
にちらちらと青みがさしはじめ、杭瀬川はとくとくと
水嵩
(
みずかさ
)
を増した、そしてある日、狂ったように東南の暖かい風が吹き荒れたあと
日本婦道記:春三たび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
たゞ彼が神妙に野良に出て、用事がなくとも
畔
(
くろ
)
に腰かけて立去らずにゐる時は、きまつて馬がゐるのだつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
その下の田の土の色、
畔
(
くろ
)
の草の色——是等は他の季節に見る事の出來ない
親
(
した
)
しみ、
懷
(
なつ
)
かしみを藏してゐる。
海郷風物記
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
畑の
畔
(
くろ
)
の玉蜀黍の葉の間からそっとのぞいて見ると、蔦の葉の大柄な模様の浴衣を褄はずれよくきっちりと着、白博多の
性
(
しょう
)
のいい夏帯をいいようすにしめている。
生霊
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
田の
畔
(
くろ
)
の
畦道
(
あぜみち
)
毎には、何人もかつてその名を知らないやうな、得體のわからぬ奇妙な神神が、その存在さへも氣付かれないほど、小さな貧しい
祠
(
ほこら
)
で祀られてゐる。
宿命
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「
後
(
うしろ
)
の
田
(
た
)
の
畔
(
くろ
)
になあ、
牛胡頽子
(
うしぐみ
)
のとこでなあ」お
品
(
しな
)
は
切
(
き
)
れ/″\にいつた。
勘次
(
かんじ
)
は
略
(
ほゞ
)
其
(
そ
)
の
意
(
い
)
を
了解
(
れうかい
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
空がよく晴れて十三日の月がその
天辺
(
てっぺん
)
にかかりました。小吉が門を出ようとしてふと足もとを見ますと門の横の田の
畔
(
くろ
)
に
疫病除
(
やくびょうよ
)
けの「源の大将」が立っていました。
とっこべとら子
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
僕も歯の
歪
(
ゆが
)
んだ下駄を引き
摩
(
ず
)
りながら、田の
畔
(
くろ
)
や
生垣
(
いけがき
)
の間の道を歩いて、とうとう目的地に到着した。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そのあたりの国じゅうで生きた
獣
(
けもの
)
の皮を
剥
(
は
)
いだり、獣を
逆
(
さか
)
はぎにしたものをはじめとして、田の
畔
(
くろ
)
をこわしたもの、
溝
(
みぞ
)
をうめたもの、
汚
(
きた
)
ないものをひりちらしたもの
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
農家の防風林で日陰になっている畑の
畔
(
くろ
)
などにはしばしば見かける。散歩のついでにそれを取って来て庭に植えたこともあるが、それはいつのまにか消滅してしまった。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
一同
(
みんな
)
はまたぶらぶらと笑語しながら堤上や堤下を歩いた。ふと土耳古帽氏は堤下の田の
畔
(
くろ
)
へ立寄って何か
採
(
と
)
った。皆々はそれを受けたが、もっさりした小さな草だった。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
刈り取られた稲を乾すために
畔
(
くろ
)
の並木に懸けている人、それを運ぶ人——年寄も、若者も、女も子供もみんな一生懸命になって、まるで駈け歩くようにして働いている。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
会話
(
ことば
)
がとぎれると、人家のないこの青山長者ヶ丸のあたりは、離れ小島のようなさびしさにとざされて、あぶらげ寺の悪僧たちであろう、子恋の森をへだてた田の
畔
(
くろ
)
を
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その様な
血腥
(
ちなまぐさ
)
い光景の中で、不思議に騒がぬ裸女達をいぶかりながら、彼も又そのまま動くでもなく、池の
畔
(
くろ
)
にじっと頭をもたせて、ぼんやりと、彼の胸の
辺
(
あたり
)
に漂っている
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
米友が畑道を引返して来ると、畑の
畔
(
くろ
)
で、百姓が一人、子供を相手に話しています。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
車夫
(
くるまや
)
に鶴子を
負
(
おぶ
)
つてもらひ、余等は滑る足元に氣をつけ/\鐵道線路を踏切つて、山田の
畔
(
くろ
)
を關跡の方へと上る。道も
狹
(
せ
)
に散るの歌に
因
(
ちな
)
むで、芳野櫻を澤山植ゑてある。若木ばかりだ。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
田の
畔
(
くろ
)
に腰をおろして、つくづく見入る。位置といい、規模といい、これなら山名の因となる必然性も、充分に具えている。かねて古老に聞いた、馬を追う人や曳綱さえ、歴々と見えるではないか。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
此の村へも
盗人
(
ぬすっと
)
に
這入
(
へえ
)
りやアがるだろうと思うから、其の野郎の
襟首
(
えりくび
)
を取って
引摺
(
ひきず
)
り倒した、すると雷が落ちて、己はどんな事にも驚きゃアしねえが雷には驚く、きゃアと云って田の
畔
(
くろ
)
へ転げると
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
植ゑそめて山田の
畔
(
くろ
)
の昼餉どき
童
(
わらべ
)
らとよみ早やあがり来る
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
田の
畔
(
くろ
)
蹈みきて草に伏しぬ。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
畑の
畔
(
くろ
)
に
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
然しお定も、二三年前から田の
畔
(
くろ
)
に植ゑる豆を自分の
私得
(
ほまち
)
に貰つてるので、それを売つたのやら何やらで、矢張九円近くも貯めてゐた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
主人と妻と
女児
(
むすめ
)
と、田の
畔
(
くろ
)
の
鬼芝
(
おにしば
)
に腰を下ろして、
持参
(
じさん
)
の
林檎
(
りんご
)
を
噛
(
かじ
)
った。
背後
(
うしろ
)
には
生温
(
なまぬる
)
い
田川
(
たがわ
)
の水がちょろ/\流れて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
兄夫婦はいかにも心持ちよさそうに
畔
(
くろ
)
に立ってながめる。西の風で稲は東へ向いてるから、西手の方から刈り始める。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
岩手県では一般にこれをシットギと謂い、風の神送りの日に作って
藁苞
(
わらづと
)
に入れて
供
(
そな
)
え、または山の神祭の際に、田の
畔
(
くろ
)
に立てる
駒形
(
こまがた
)
の札に塗りつけた。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
が、たとへば
薄青
(
うすあを
)
い
樹
(
き
)
の
蔭
(
かげ
)
の
清
(
きよ
)
らかなる
境内
(
けいだい
)
を、
左
(
ひだり
)
に、
右
(
みぎ
)
には
村
(
むら
)
の
小家
(
こいへ
)
に
添
(
そ
)
つて、
流
(
なが
)
れがさら/\と
畔
(
くろ
)
を
走
(
はし
)
る。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
水鶏
(
くひな
)
の声——嘴を半ば水の中に入れて雄を呼ぶといふ雌の啼声。朝の深い露。そこから土手の上までは何うしても足をぬらさずには行けないやうな田の
畔
(
くろ
)
の中の道。
あさぢ沼
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
地下
(
じげ
)
の百姓を見てもすぐと理屈でやり込めるところから敬して遠ざけられ、狭い田の
畔
(
くろ
)
でこの先生に出あう者はまず一丁
前
(
さき
)
から
避
(
よ
)
けてそのお通りを待っているという次第
初恋
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
心身
共
(
とも
)
に生気に充ちていたのであったから、毎日〻〻の朝を、まだ
薄靄
(
うすもや
)
が村の田の
面
(
も
)
や
畔
(
くろ
)
の
樹
(
き
)
の
梢
(
こずえ
)
を
籠
(
こ
)
めているほどの
夙
(
はや
)
さに
起出
(
おきで
)
て、そして九時か九時半かという頃までには
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と云うのは昔青田の
畔
(
くろ
)
に
奇蹟
(
きせき
)
を現した一人の童児、——
金応瑞
(
きんおうずい
)
に国を救わせたからである。
金将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
小栗栖
(
おぐるす
)
の百姓、長兵衛という者が、日向守の首級を、
醍醐辺
(
だいごへん
)
の
畔
(
くろ
)
で見つけたと申して、ただ今、それを持参のうえ、訴えて参りました。——この儀、君前までお取り次ぎを」
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幔幕を張り
焚火
(
たきび
)
をし、抜き身の槍を幾本か立てた、一団が静まって
屯
(
たむ
)
ろしていたが、槍の先に三個の生首を貫き、それを示威的に川の
畔
(
くろ
)
に立て、幾人かの浪人らしい武士たちが
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
昔の名残には、ヘロデの建てし街の面影を見るべき
花崗岩
(
みかげいし
)
の柱十数本、一丈五尺にして
往々
(
わう/\
)
一石より成るもの、また
山背
(
さんはい
)
の窪地に劇場の
墟址
(
あと
)
あり。麦圃の
畔
(
くろ
)
、橄欖の影に、
断柱
(
だんちう
)
残礎
(
ざんそ
)
散在す。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
山を降りると
田圃路
(
たんぼみち
)
で、田の
畔
(
くろ
)
には葉鶏頭の
真紅
(
まっか
)
なのが眼に立った。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
秋の田の
早稻田
(
わさだ
)
の
畔
(
くろ
)
をゆく
童
(
わらべ
)
ふたり見えつつ
彼方
(
あなた
)
指
(
さ
)
しをる
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
畑の
畔
(
くろ
)
の立話にも、「今日は」「今日は」と
抑
(
そもそも
)
天気の挨拶からゆる/\とはじめる
田舎
(
いなか
)
気質
(
かたぎ
)
で、仁左衛門さんと隣字の幹部の忠五郎さんとの間には
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
畔
常用漢字
中学
部首:⽥
10画
“畔”を含む語句
河畔
川畔
橋畔
畔道
池畔
湖畔
墓畔
畔路
畔放
江畔
田畔
畔倉
畦畔
畔傳
畔田翠山
畔柳芥舟
畔柳
畔田
水畔
宍道湖畔
...