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牛胡頽子
勘次は
其朝未明にそつと
家の
後の
楢の
木の
間を
田の
端へおりて
境木の
牛胡頽子の
傍を
注意して
見た。
唐鍬か
何かで
動かした
土の
跡が
目に
附いた。
「
後の
田の
畔になあ、
牛胡頽子のとこでなあ」お
品は
切れ/″\にいつた。
勘次は
略其の
意を
了解した。
お
品は
田圃からあがる
前に
天秤を
卸して
左へ
曲つた。
自分の
家の
林と
田との
間には
人の
足趾だけの
小徑がつけてある。お
品は
其小徑と
林との
境界を
劃つて
居る
牛胡頽子の
側に
立た。