トップ
>
黯
>
くろ
ふりがな文庫
“
黯
(
くろ
)” の例文
今は秋陰
暗
(
あん
)
として、空に
異形
(
いぎょう
)
の雲満ち、海はわが坐す岩の下まで満々とたたえて、そのすごきまで
黯
(
くろ
)
き
面
(
おもて
)
を点破する一
帆
(
ぱん
)
の影だに見えず。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
崖下の
黯
(
くろ
)
い水も、何か
喚
(
わめ
)
きながら、高股になって、石を
跨
(
また
)
ぎ、抜き足して駈けている。崖の端には、車百合の赤い花が、ひときわ明るく目立つ。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
眼の縁はうすく
黯
(
くろ
)
ずんだけれど、哀愁をたたえた底知れぬ深さの
碧眼
(
あおめ
)
が不釣合なほど大きく見えて、それが僅かに顔の全体を明るくしているようだ。
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
桂子はこの鋼鉄の廊門のやうな堅く老い
黯
(
くろ
)
ずんだ木々の枝に浅黄色の若葉が一面に吹き出てゐる坂道に入るとき、ふとゴルゴンゾラのチーズを想ひ出した。
花は勁し
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
中には
活々
(
いき/\
)
と
青草
(
あをくさ
)
の
生
(
は
)
えている古い
頽
(
くづ
)
れかけた屋根を見える。屋根は恰で
波濤
(
なみ
)
のやうに高くなツたり低くなツたりして
際限
(
さいげん
)
も無く續いてゐた。日光の具合で、處々光ツて、そして
黯
(
くろ
)
くなツてゐる。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
▼ もっと見る
ただその余りに蒼白くなった手の皮膚や、紫色に変色した爪や、かっと見ひらいた両眼、気味わるく歯を
露
(
あら
)
わしている
黯
(
くろ
)
ずんだ唇——それ等のものが永久の眠りを語っているのだ。
青蠅
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
何ともわからぬ一種の音——蜂の巣のそばで聞く羽音のような音がした——と思っているうちに死人の
黯
(
くろ
)
ずんだ
口腔
(
くち
)
の
中
(
うち
)
から、羽のぎらぎら光った大きな青蠅が一匹、ついと飛びだした。
青蠅
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
彼女は床づいていて、真蒼な不安な顔をして、眼のふちが
黯
(
くろ
)
ずんで鼻が
尖
(
とん
)
がり、唇は乾ききって、髪はぐったりと崩れていました。すべての様子が、病院でしばしば見る重病患者にそっくりでした。
麻酔剤
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
黯
漢検1級
部首:⿊
21画
“黯”を含む語句
蒼黯
微黯
黯黮
黯然
黯青
真黯
黯淡
黯澹
黯緑
汲黯
黝黯
黯湛
黯痣
黯褐
黯黒