黒犬くろ)” の例文
また其が貴人の屍體であツたとしても、賤婦野人の屍體であツたとしても、彼は其處に黒犬くろ斑犬ぶちとの差別を付けようとしなかツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼女はやっと、黒犬くろの引きずって行く縄の端をつかまえた。黒犬くろはつかまると、彼女におおきな体を押しつけてからみついた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例の黒犬くろは、今夜は、この犬の方が、家人たちのかわりに、まどろんでしまっていると見えて、クンクンと、鼻を鳴らして寄っては来なかった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
でもなお、伊織は動かなかったが、その時、先刻さっき見た猛犬の黒犬くろが、あの杉林のあたりの生血をすすり飽いたような顔して、勢いよくそこを駈け抜けて行ったので
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それきり黒犬くろの吠えるこだまはして来なかった。黒犬くろは嬉々と、飼主の匂いを追って行ったのだろう。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よっ黒犬くろ、おれを主人と思うなら、おれの狙う綽空を一緒にさがしてくれ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん、黒犬くろもその後について——心蓮は、ほっとした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)