げん)” の例文
予は教育に於ては素人しろうとなれど、日本国民を如何いかに教育すべきか、換言せば教育の最大目的は如何いかんとの題下だいかに一げん述べてみようと思う。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ゴンクウルのげんを借りていへば、あたかも種紙たねがみおもての卵を産み落し行くが如く、筆にまかせて千差万様せんさばんようを描きしものにして
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかも巍の誠を尽し志を致す、其意と其げんと、忠孝敦厚とんこうの人たるにそむかず。数百歳の後、なお読む者をして愴然そうぜんとして感ずるあらしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文学は映画から学ぶ多くのものをもっているが、映画は文学から学ぶべき何物ももたぬとは形式主義者シクロフスキーのげんである。
貝層かひそうきはめてあさいが、其下そのした燒土やけつちそうつて、其中そのなかすくなからず破片はへんがある。幻翁げんおうげんると、香爐形こうろがたさう同一どういつだといふ。
王者はげんを重んじ、伯者は信を重んずと申します。女ひとりの身を惜しんで、天下に対する公約を破るのは、国家のわざわいでありましょう
昨七日さくなぬかイ便の葉書にて(飯田町いいだまち局消印)美人クリイムの語にフエアクリイムあるひはベルクリイムの傍訓有度ぼうくんありたくとのげんおくられし読者あり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「カムペン」答て曰、母なり。帝おおいにおどろきて曰く、ああ実にしかり。この一語もって教育の法則となすに足れり、と。むねあるかな、げんや。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
げんへば、貴方あなた生活せいくわつふものをないのです、れをまつたらんのです。さうして實際じつさいことたゞ理論りろんうへからばかしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
青年の語る所を聞き終って、警部はかしらを傾けた。青年のげんが事実とすれば、実に妙な事件である。この時ふと警部の頭に浮んだ事があった。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
かれら、お沢を押取おっとり込めて、そのなせる事、神職のげんの如し。両手をとりしばり、腰を押して、正面に、看客かんかくにその姿を露呈す。——
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また、かくいうも、このことばは自分ひとりのげんばかりではない。ある夜、高野こうやをひそかにくだられたそれがしとよぶ御僧みそうのすすめもあるのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わがはいはこれについて一げんべんじてきたい。年紀ねんき時間じかんはか基準きじゆん問題もんだいである。これは國號こくがう姓名せいめいなどの固有名こゆうめい問題もんだいとは全然ぜん/″\意味いみちがふ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
由緒ゆいしょのある人——もとより、はじめからそうにらんではいた。げんを左右にして身分を明かさないところがなおいっそう、そう思われたのだが。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また例の「君の望むことにてわが力にてできべき限りにおいて言へ」を言ふ。われ曰く「なし」と。このげんはたして、かれの心よりの言葉か。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
君がげんし、昔は目なしどち目なしどち後について来ませとか聞きぬ、われさるひじりを学ぶとはなけれど覚えたる限りはひがごとまじりに伝へん
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ことにフランスでは当時有力な学者であったキュビエーがラマルクの説を攻撃したので、世間ではかえってキュビエーのげんを信ずるという有様でした。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
くわいなるかな櫻木君さくらぎくん海底戰鬪艇かいていせんとうていつひ竣工しゆんこうしましたか。』と、暫時しばしげんもなく、東天とうてん一方いつぽうながめたが、たちま腕拱うでこまぬき
その事情を語るにはげん長ければ、手近く一例をあげて示さんに、一国の富は一個人の富の集まりたるものなりとの事は、争うべからざるものならん。
慶応義塾学生諸氏に告ぐ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
われわれは彼のこの切々のげんを信ずべきでしょうか。将又はたまた、荒唐無稽の世まい言として葬り去るべきものでしょうか。私は敢て多くを語りますまい。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
それからは家人のげんも耳に入らなかった。再び患者を眺める勇気さえなかった。挨拶もそこそこに、その家を出ると車の上に崩れるように身を投げた。
初往診 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
一躰いったい自分の以前には如何どんな人が住んでおったかと訊ねたが、初めの内はげんを左右にして中々なかなかに真相を云わなかったがついにこう白状した、そのはなしによると
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
そこで、この奇妙な男が伯爵のげんをいかほど理解したとしても、とにかく次の二つの訓言くんごんだけは絶対に理解した。
僕のこのげん所以ゆゑんは、渋沢しぶさは子爵の一言いちげんより、滔滔たうたうなんでもしやべり得る僕の才力を示さんが為なり。されどかならずしもその為のみにはあらず。同胞よ。
千百の言葉は一団の飯にも及ばず、娓々びびげん滴々てきてきみづにもかぬ場合である。けれども今の自分の此の言葉は言葉とのみではない。直ちに是自分の心である。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
だが、やがて、私の妄想の熱度が、徐々に冷えて行くに随って、恐ろしい疑惑が頭をもたげて来た。私は一げんさえも、静子の直接の懺悔ざんげを聞いた訳ではなかった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたくしの次に一げんせんと欲するは、此五郎の事である。山陽が死に瀕して名をんだ此五郎の事である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
自負心の強いこの詩人にしてこのげんをなした、もって傾倒のほどが知られよう。だが彼の挙げた七人の詩人の中にはわがオマル・ハイヤームの名は含まれていない。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
現時の社会組織は根本的に顛覆てんぷくしてしまうということが述べてあるが、今日の日本にいてかかるげんを聞く時は、われわれはいかにも不祥不吉ふしょうふきつな言いぶんのように思う。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
私は何だか彼のげんに元氣づけられた。山下の實例が、佐藤の云ふ事だから眞僞は分らぬにしても、或ひはといふ一縷の望を抱かせた。私は氣を取り直して家に歸つた。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
「東京及び東京地方に居住する帝国臣民諸君」将軍の声は泰山たいざんの如くに落付いていた。「本職は東京警備司令官の職権をもって広く諸君に一げんせんとするものである。 ...
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雪江さんはげんここに至って感にえざるもののごとく、潸然さんぜんとして一掬いっきくなんだを紫のはかまの上に落した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
管仲夷吾くわんちういご(一)潁上えいじやうひとなりわかときつね鮑叔牙はうしゆくが(二)あそぶ。鮑叔はうしゆく其賢そのけんる。管仲くわんちう貧困ひんこんにして、つね鮑叔はうしゆくあざむく。鮑叔はうしゆくつひ(三)これぐうし、もつげんさず。
この頃の子供はすべての野蛮人に共通しているように、げんきょにしてこうゆうなるものであった。いざ喧嘩だとなると身構えが違ってくる。さそりのように少年に飛びついた。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
讀者とくしやげんしんぜずば罪と罰にきて、さら其他そのた記事きじ精讀せいどくせられよ、おもけだなかばぎんか。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ただ一げんする、『自分が真にウォーズウォルスを読んだは佐伯におる時で、自分がもっとも深く自然に動かされたのは佐伯においてウォーズウォルスを読んだ時である』
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
船中の人々は今を興たけなわの時なりければ、河童かっぱを殺せ、なぐり殺せとひしめき合い、荒立ちしが、長者ちょうじゃげんに従いて、皆々おだやかに解散し、大事だいじに至らざりしこそ幸いなれ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「ぢやア、君の氣に喰はないげんは僕が取り消さう。然し、社で君の一身上の世話は出來ないぞ。」
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
自然の法則の何たるやを知れば「神は自然に負けたり」とのげんは決して出づべきものにあらず。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
けれども若者はそんなげんが耳にも入らないといふやうでした。つめたく唇を結んでまるでオリオン座のとこの鋼いろの空の向ふを見透かすやうな眼をして外を見てゐました。
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
しかしただ古い物ばかりが尊いとする人々のげんれて、ひたすらひんをよくとのみ勉め、ついにこの物語に流れている情熱を棄てたなら、かえって原文の特色を失うにも至ろう。
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
果してしからば一票の投票権といえども決して粗末には出来ぬ訳でないか。故に国家百年の大計は選挙人の決心如何いかんに依って定まるというも、私は決して誇張のげんでないと信ずる。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
大谷光瑞こうずいの『食』、村井弦斎げんさいの『食道楽』、波多野承五郎の『食味の真髄を探る』、大河内正敏の『味覚』など、それぞれ一家のげんを表わしてはいるものの、実際、美味問題になると
美食七十年の体験 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
我が党の足痕あしあとへは、もう新しい世界の隻足かたあしが来ている、吾輩の魂も、これから永遠の安静にるべき時が来たから、最後のげんとして、君にまで懺悔ざんげして置きたいことがあってやって来た
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのげんしたがひ、これおこなひしも、冷水浴れいすゐよく永續えいぞくするあたはずして中止ちゆうしするにいたれり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
こう言って、まるで根のないことをこしらえて、ひどいざんげんをしました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
最後に一げん附け加へて置きたい事がある。兎角我国では、検閲官は新聞紙の敵だと云ふ想像が伝播せられてゐる。諸君。此の如きは時代精神と背馳してゐます。既に過去の観念に属してゐます。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
げん唯々諾々いゝだく/\として、黒ん坊の御機嫌を伺って居るばかりであった。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのげんいわく、そもそもわが国王は東方の天主教を保護するの説を唱えて信教の念を飾るといえども、その実は、わずかに外貌がいぼうの虚飾にすぎざるのみ。ゆえにこの事態に徹底せざる徒をして迷わしむ。
「然らばよし、されど余り涼み過ると明日ダルキ者なり、夜露にかかるは為悪し早く帰られたがよからん」とのげんに、「御注意有り難し」と述べて左右に別れたれど予はなお橋の上を去りやらず。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)