初往診はつおうしん
先刻から彼は仕事が手につかなかった。一時間ばかり前に、往診から戻って来た彼は、人力車を降りるなり、逃げ込むように、玄関の隣りにある診察室へ入ると、その儘室内をあちこち歩いて深い物思いに沈むのであった。 彼の胸はいま、立っても居ても居られない …