)” の例文
アツシリヤでも早くから犬を珍重して今の「マスチツフ」だの「グレイハウンド」だのといふ奴がたさうだが、んな事はておき
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
ちょうど生きた人魂ひとだまだね。て門を這入ってみると北風ほくふう枯梢こしょう悲断ひだんして寒庭かんていなげうち、柱傾き瓦落ちて流熒りゅうけいいたむという、散々な有様だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
て、ぷんかをりのたか抽斗ひきだしから、高尾たかを薄雲うすぐも一粒選ひとつぶえりところして、ずらりとならべてせると、くだん少年せうねん鷹揚おうやうたが
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴様は福澤の主人になったと知らせてれるくらいの事だ。てその跡をついだ以上は、実は兄でも親だから、五十日の忌服きふくを勤めねばならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
どうしよう——と、思ったが、てどうもすることが出来ない。言葉の解らない支那人を眺めて、つくづく悄気切しょげきったものだ。
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
余人はき、一国の特殊な文運にこれほど顕著な貢献をしたわが小山内薫氏に対し、国家として十分の表彰手段を講じて欲しいものです。
偉大なる近代劇場人 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
て私の折入つてのお願は、私に極めて少額でもいゝから或資金を貸して戴きたい。私は其金で商賣をやらうと思ひます』
藤野屋のお嬢様はこれから十五日まで樽屋久八のうち御飯炊ごぜんたきの稽古を致して居ましたが、て十二月十五日となりますと、女親は妙なもので
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(尤も拙者は、断乎として、断々乎として、ファルスは難解であるとは信じません!)それはそれとしておいて、て——
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
其他そのたには、だい一のあなにもあるごとく、周圍しうゐ中央ちうわうとに、はゞ四五すんみぞ穿うがつてあるが、ごど床壇ゆかだんもうけてい。
てそうきまると早いがいい、明日はサルツブルヒに御別れとして、夜は雨の音を聞きながら、地図と旅程に十二時過ぎまでつぶしてしまった。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
テ前日、府中ニ触レアッテ此度このたび双方勝負ノ贔屓ひいきヲ禁止セリ。興長主おきながのかみ武蔵ニいっいわク、明朝辰ノ上刻向島ニ於テ、岩流小次郎ト仕合致スベキ由ヲさとス。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
余談はき、かうして私は平岡夫人と、不安な足どりのまゝ、いざなふやうな音楽に連れて、曲りなりにも歩き出した。よた/\と、ひよこり/\と。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
て進んで行くうちに社中でまた問題が起ったらしい、原稿料が高いとか安いとかいうこともあったろうし、また
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
咳払せきばらいをなされた木戸博士は、乾枯ひからびた色艶のわるい指頭ゆびさきを Fig. 1 に近づけられて仰有おっしゃった。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ヱヽと驚く十兵衞がヤアお前は兄の長庵殿何故あつて此のわし切殺きりころすとはサヽては娘を賣つた此の金が初手しよてからほしさに深切しんせつおもてかざつて我を欺むき八ツを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あくる十七日の夕方左柳高次が早馬で馳せ付け私の前へ平伏して、姉さん、と云つたきり太息といきをついて居りますから、ては愈々と覚悟して、こみ上げる涙をじつと抑へ
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
てそれなら何時でも東京から此等の山が見えるかというと、そううまくは問屋で卸しません。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
篠田はつて聖書を読み、祈祷きたうを捧げ、今宵こよひの珍客なる少年少女にむかつて勧話の口を開けり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
(顏をしかめる)て/\不養生なお人だ。兎もかくもお見舞申さう。(内に入る)
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
て友達仲間は遊びが濟んで起き上ると、一處に集まつてタバコを喫ひはじめた。
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
青色せいしょくだの紅色こうしょくだの又は紫などを愛するものは之に中し、や赤を好む者は子供か又は劣等なる地位に居るものと言うて良い、て是から猫は如何なる染色を好むかに就て述べるのであるが
猫と色の嗜好 (新字新仮名) / 石田孫太郎(著)
ておぢいさんはそのまゝ田舎にもどつて、次の年今度は祇園祭ぎをんまつりを見物に又京都へ出てまゐりました。おぢいさんはあひ変らずその拾つた冠をかぶり、後手うしろでをしてあつちこつちを見物してあるきました。
拾うた冠 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
殿との御覽ごらうじ、早速さつそく伺候しこう過分々々くわぶん/\御召おめしの御用ごよう御用ごようだけ、一寸ちよつと世辭せじくだかれ、てしか/″\の仔細しさいなり。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二、三軒の小屋と停車場がある、鉄道の終点でウンテル・クリンムル、て例のビール樽はそこの駅長さんであった。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
て、私はさきに、恰も私は、終日終夜堅く外出もしないやうに述べたのであるが、然し私は、一定の時間には必ず一度、外出しなければならなかつた。
小説家の文学者先生、荒尾角也この咄を聞くと大喜びで、何がて文学大好きの嬢様なれば文壇にたづさはる自分は必定御覚え目出たかるべしと早合点した。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
て、その当学部第一回の卒業式が、正木先生の御欠席のままで終了致しますと、その翌日になって盛山学部長の手許に、正木先生からの書信が参りましたが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
て伊之助でございますが、お若さんが連れて逃げてくれろと申しましたを、義理だてをして捗々はか/″\しく相談に乗らないところから、男をうんといわする奥の手をだし
地中ちちう犬小屋式いぬごやしき横穴よこあな穿うがつてあつて、その犬小屋いぬごやごど岩窟がんくつ入口いりくちまでは、一ぢやう尺餘しやくよ小墜道せうとんねるとほるのだ。て、犬小屋いぬごやごと横穴よこあな入口いりくちは、はゞじやくすんたかさが三じやくすんある。
先生の大恩、緒方の食客となる船中無事大阪についたのはよろしいが、ただ生きて身体からだついばかりで、て修業をするとう手当は何もない。ハテ如何どうしたものかとおもった所が仕方しかたがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
て今は親しく其京都の土を踏んで七條の停車場からガラ/\と車にゆられて、三藏等より一年先に卒業して既に高等學校に在學してゐる先輩の上長者町の下宿に著く。加藤も平田もをばさんも著く。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
怒ると雖詮方せんかたなく頼み切たる利兵衞りへゑかくの如き心底しんていなれば當惑たうわくいたしたれどもかく繁昌はんじやうの御當地に付如何樣にも口過くちすぎ相成あひなり申べくとぞん其後そのごは一相尋あひたづね申さず櫛簪くしかんざしは利兵衞娘菊より内々ない/\もらはゝの病氣にてたくはつき候故與兵衞よへゑに賣て母の病氣すくひ候なりけつしてぬすみしには候はず何卒なにとぞ此段このだん御賢察下ごけんさつくだされ御免を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
て、この不可解な煉瓦塀であるが、これは結局何物であるかといふに、これはつまり何物でもないらしい。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
て、遺憾ながら、此の晴の舞台に於て、紫玉のためにしるすべき振事ふりごとは更にない。かれは学校出の女優である。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ず当今のところでは誰方どなたでも之には御賛成遊ばすだろうと存じますが、てこゝでございます、お客様方も御承知で居らせられる幽霊博士はかせ……では恐れ入りまするが
きざみ煙草をもう一かん買って来て貰うことにして、てストーブを囲んで、落ちついてふかし初めた。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
土偶どぐう※ なにしろ泥土でいどおとしてるべしと、車夫しやふをして、それをあらひにつてると、はからんや、それは獸骨じうこつの一大腿骨だいたいこつ關節部くわんせつぶ黒焦くろこげけてるのであつたので
借用証書があらば百万円遣ろうソコである時例の金融家のエライ人が私方に来て、何か金の話になって、千種万様、実に目にみるような混雑な事を云うから、て/\如何どうもウルサイ事だ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その女がまだ死んでいないのを見て、安心以上の安心ともいうべき一種の喜びを感ずると同時に……ては……ては……と胸の躍るような緊張に全身を引き締められるのを感じたのであった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
従而、顔の位置が一度も動いたためしがないし、て又顔の表情がビクリと動いた気配もない。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
てお話は二つになりまして、川崎の本藤にては山三郎半治小かね馬作の四人が一つの座敷で
「いやにおちゃがつてるよ、生意気な。」と、軽く其のつむりてのひらたたぱなしに、広前ひろまえを切れて、坂に出て、見返りもしないで、てやがて此の茶屋にいこつたのであつた。——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このにち運動うんどうは、ほねずいまで疲勞ひろうするやうかんじるのであるが、そのあらげたる破片はへん食卓しよくたくの一ぐうならべて、うして、一ぱいやるとき心持こゝろもちといふものは、んともはれぬ愉快ゆくわいである。
この年になつても何か無性な苛立たしさで、ひと思ひに……けれどもひと思ひにてどういふことをすればいいのか分からないが、さういふ思ひは然しなほ在るのであつた。
てお話は二岐ふたみちに分れ、白金台町に間口はれ二十けんばかりで、生垣いけがきに成って居ります、門もちょっと屋根のある雅致がちこしらえで、うしろの方へまわると格子造りで、此方こちらは勝手口で
挨拶あいさつとともに番頭ばんとうがズイとてのひら押出おしだして、だまつて顏色かほいろうかゞつた、ぼんうへには、湯札ゆふだと、手拭てぬぐひつて、うへ請求書せいきうしよ、むかし「かの」とつたとくがごと形式けいしきのものが飜然ひらりとある。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今度こんど發見はつけんされた駒岡附近こまをかふきんにも、すですで澤山たくさん横穴よこあな開發かいはつされてあるのだが、て、果報くわはうなのは今回こんくわいのお穴樣あなさまで、意外いぐわい人氣にんき一個ひとり背負せおつて、まこと希代きたい好運兒かううんじいな好運穴かううんけつといふべきである。
て一人の男が浜で死んだ。ところで同じ時刻には一人の男が街角を曲つてゐた」——
小さな部屋 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
て世捨人になったお若さんでげすが、伯父の晋齋に頼みまして西念寺さいねんじわきに庵室とでも申すような、膝をれるばかりな小家こいえを借り、此処こゝへ独りで住んで行いすまして居りまする。