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はんえり
ふりがな文庫
“
半襟
(
はんえり
)” の例文
「全く大箆棒さ、こちとらなら、その三千兩で八方の借を拂つて、あの娘に
半襟
(
はんえり
)
の一と掛も買つてやつて、大福餅の暴れ喰ひをやる」
銭形平次捕物控:162 娘と二千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と節子は祖母さんの部屋の方から熱い茶なぞを運んで来る
序
(
ついで
)
に、自分の掛けている
半襟
(
はんえり
)
を
一寸
(
ちょっと
)
岸本に見せるようにすることも有った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼女は今
半襟
(
はんえり
)
を一面に拡げた大卓の前で、多くの婦人達に混って品の選択を始めて居た。彼は既製洋服を吊した蔭に立って覗き始めた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
お政は
鼠微塵
(
ねずみみじん
)
の糸織の一ツ小袖に黒の
唐繻子
(
とうじゅす
)
の丸帯、
襦袢
(
じゅばん
)
の
半襟
(
はんえり
)
も黒
縮緬
(
ちりめん
)
に金糸でパラリと縫の
入
(
い
)
ッた奴か何かで、まず気の利いた
服飾
(
こしらえ
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ゑり治は、ゑりえんと共に私の姉などのよく親しんだ店の一つで東都の
半襟
(
はんえり
)
の大頭の一つである。長寿庵というそば屋も古い。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
▼ もっと見る
又その次にはきらきら光る
繻子
(
しゅす
)
の羽織に繻子の着物、幅の狭い帯を胸高に締め、リボンの
半襟
(
はんえり
)
を着けた様子が現れて来る。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
女は
何
(
な
)
にも云わずに眼を横に向けた。こぼれ梅を一枚の
半襟
(
はんえり
)
の
表
(
おもて
)
に掃き集めた
真中
(
まんなか
)
に、
明星
(
みょうじょう
)
と見まがうほどの
留針
(
とめばり
)
が
的皪
(
てきれき
)
と
耀
(
かがや
)
いて、男の眼を射る。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
僕
(
ぼく
)
は
今日
(
けふ
)
まで
女
(
をんな
)
を
喜
(
よろこ
)
ばすべく
半襟
(
はんえり
)
を
買
(
か
)
はなかつたが、
若
(
も
)
し
彼
(
あ
)
の
娘
(
むすめ
)
に
此等
(
これら
)
の
品
(
しな
)
を
與
(
やつ
)
たら
如何
(
どんな
)
に
喜
(
よろ
)
こぶだらうと
思
(
おも
)
ふと、
僕
(
ぼく
)
もうれしくつて
堪
(
たま
)
らなかつた。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
書生「娘ならば先ず
半襟
(
はんえり
)
位かな」大原「半襟を買って持って行こうか」書生「そうなさい、それが一番です」大原
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
この
女
(
ひと
)
が、大学出の子息が二人もあって、一人は出征もしていられるときくと、
嘘
(
うそ
)
のような気のするほど、古代紫の
半襟
(
はんえり
)
と、やや赤みの底にある
唐繻子
(
とうじゅす
)
の帯と
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
仕事を頼むの何がどうしたのと
小五月蠅
(
こうるさく
)
這入込
(
はいりこ
)
んでは前だれの
半襟
(
はんえり
)
の帯つかはのと
附届
(
つけとどけ
)
をして御機嫌を取つてはいるけれど、遂ひしか喜んだ
挨拶
(
あいさつ
)
をした事が無い
わかれ道
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
糸
(
いと
)
を
通
(
とほ
)
した
針
(
はり
)
がまだ
半襟
(
はんえり
)
から
拔
(
ぬ
)
かれないであつたとて、それで
死
(
し
)
んだとて、それでいゝのだ! いつ
私
(
わたし
)
がこの
世
(
よ
)
から
消
(
け
)
されたつて、あの
光
(
ひかり
)
は
少
(
すこ
)
しも
變
(
かは
)
りなく
照
(
て
)
る。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
正雄がある朝十時ごろに、
一
(
いち
)
の
家
(
や
)
を訪ねて行くと、お庄は
半襟
(
はんえり
)
のかかった
双子
(
ふたこ
)
の薄綿入れなどを着込んで、縁側へ
幾個
(
いくつ
)
も
真鍮
(
しんちゅう
)
の火鉢を持ち出して灰を
振
(
ふる
)
っていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
メレンスの
半襟
(
はんえり
)
一かけ、足袋の一足、
窃
(
そっ
)
と
他
(
ひと
)
の女中の
袂
(
たもと
)
にしのばせて、来年の
餌
(
えさ
)
にする家もある。其等の出代りも済んで、やれ一安心と息をつけば、最早彼岸だ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
幾度かいけあらいをしたという
半襟
(
はんえり
)
をかけて。小前がみのあとのすこしはげたるを。
松民
(
しょうみん
)
の
蒔絵
(
まきえ
)
をした朱入りの
櫛
(
くし
)
で。毛をよせてぐっと丸わげの下へさし込んでいる。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
向って左の
方
(
かた
)
、
真暗
(
まっくら
)
に茂れる深き古杉の
樹立
(
こだち
)
の中より、青味の勝ちたる
縞
(
しま
)
の
小袖
(
こそで
)
、
浅葱
(
あさぎ
)
の
半襟
(
はんえり
)
、
黒繻子
(
くろじゅす
)
の
丸帯
(
まるおび
)
、髪は
丸髷
(
まるまげ
)
。
鬢
(
びん
)
やや乱れ、うつくしき
俤
(
おもかげ
)
に
窶
(
やつ
)
れの色見ゆ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
例の寝台の
脚
(
あし
)
の処に、二十二三の
櫛巻
(
くしまき
)
の女が、
半襟
(
はんえり
)
の掛かった
銘撰
(
めいせん
)
の
半纏
(
はんてん
)
を着て、絹のはでな前掛を
胸高
(
むなだか
)
に締めて、右の手を畳に
衝
(
つ
)
いて、体を斜にして据わっていた。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
女の方は
白粉
(
おしろい
)
や
頬紅
(
ほおべに
)
で化粧を
凝
(
こら
)
し、髪はその頃流行の耳かくしに
結
(
ゆ
)
い、
飛模様
(
とびもよう
)
の着物に
錦襴
(
きんらん
)
のようなでこでこな
刺繍
(
ししゅう
)
の
半襟
(
はんえり
)
をかけ
甲高
(
かんだか
)
な調子で笑ったりしている
側
(
そば
)
に
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
半襟
(
はんえり
)
一つでも余裕を見出した時の嬉しさ、もつと大きな買物をするときの輝かしい喜び、選択する間の希望にみちた心、そして買つて来て、幾度か箪笥の
抽斗
(
ひきだし
)
に
納
(
しま
)
つたり
買ひものをする女
(新字旧仮名)
/
三宅やす子
(著)
「いえ、芝居に限らずさ、
簪
(
かんざし
)
だとか
半襟
(
はんえり
)
だとか、お前にやあ欲しいものだらけでもね、……」
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その夜もまたおのぶのために、縫取りのある
半襟
(
はんえり
)
を買い、栄二に預かってもらっていったのだが、すみよしの店の、いつもの小座敷へあがると、栄二は包みをさぶに返した。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
歩いてゐた……それからデパートメントストアに入つた……そこで彼女はショオルか
半襟
(
はんえり
)
かを
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
人形はびんつけで髪を
結
(
ゆ
)
っていた。
半襟
(
はんえり
)
に梅の模様があるのは、野崎村の
久松
(
ひさまつ
)
の家に梅の木のあるのをたよりにしたのだからと云うことだった。手は踊りのように自由に動く。
田舎がえり
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
襟円
(
えりえん
)
の
半襟
(
はんえり
)
、
阿波屋
(
あわや
)
の下駄、「さるや」の
楊子
(
ようじ
)
、
榛原
(
はいばら
)
の和紙、
永徳斎
(
えいとくさい
)
の人形、「なごや」の金物、平安堂の筆墨、こういう店々は東京の人たちには親しまれている名であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
金剛石
(
ダイアモンド
)
と光を争ひし目は
惜気
(
をしげ
)
も無く
瞪
(
みは
)
りて時計の
秒
(
セコンド
)
を刻むを
打目戍
(
うちまも
)
れり。火に
翳
(
かざ
)
せる彼の手を見よ、玉の如くなり。さらば友禅模様ある
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
の
半襟
(
はんえり
)
に
韜
(
つつ
)
まれたる彼の胸を想へ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
資本
(
もとで
)
として是より見世の者へ云付
代物
(
しろもの
)
に色を付
景物
(
けいぶつ
)
に
手拭
(
てぬぐひ
)
等を添て
商
(
あきな
)
ひ或は金一分以上の
買人
(
かひて
)
には
袖口
(
そでくち
)
か
半襟
(
はんえり
)
などを
負
(
まけ
)
て
賣
(
うり
)
ければ是より人の思ひ付よく
追々
(
おひ/\
)
繁昌
(
はんじやう
)
なすに隨ひ見世を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
省作は
無頓着
(
むとんちゃく
)
で白メレンスの
兵児帯
(
へこおび
)
が少し新しいくらいだが、おはまは上着は
中古
(
ちゅうぶる
)
でも
半襟
(
はんえり
)
と帯とは、仕立ておろしと思うようなメレンス友禅の
品
(
ひん
)
の悪くないのに卵色の
襷
(
たすき
)
を掛けてる。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
いつか見たショーウィンドウの高い方のショールや、あの子の好きな
臙脂色
(
えんじいろ
)
の
半襟
(
はんえり
)
や、ヘヤピンや、それから帯だって、着物だって、倹約をすれば一通りは買い揃えることが出来るのだ。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もの言うたびに、黒髪の蔭で金の
蝶簪
(
ちょうかんざし
)
がキラキラする。気をつけてみると、
半襟
(
はんえり
)
や帯、袖口からのぞかれる
襦袢
(
じゅばん
)
といえども、それは、山屋敷に住む者の娘などとは思われない贅沢ずくめ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
緋の
山繭
(
やままゆ
)
の
胴抜
(
どうぬき
)
の上に藤色の紋附の
裾
(
すそ
)
模様の部屋
著
(
ぎ
)
、
紫繻子
(
むらさきじゅす
)
の
半襟
(
はんえり
)
を重ねまして、燃えるような
長襦袢
(
ながじゅばん
)
を
現
(
あら
)
わに出して、若い
衆
(
しゅ
)
に手を引かれて向うへ
行
(
ゆ
)
きます姿を、又市は
一
(
ひ
)
と目見ますと
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「いやねえ。あたし、この
半襟
(
はんえり
)
かけてお店に出ると、きっと雨が降るのよ。」
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
冬など蒼白いほど白い顔の色が一層さびしく沈んで、いつも
銀杏
(
いちょう
)
がえしに結った房々とした鬢の毛が細おもての
両頬
(
りょうほお
)
をおおうて、長く取った
髱
(
たぼ
)
が
鶴
(
つる
)
のような
頸筋
(
くびすじ
)
から
半襟
(
はんえり
)
に
被
(
おお
)
いかぶさっていた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「金銀にて
蝶々
(
ちょうちょう
)
を
縫
(
ぬ
)
ひし野暮なる
半襟
(
はんえり
)
をかけ」と『春告鳥』にもある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
半襟
(
はんえり
)
を十枚ばかり入れたのが
一函
(
ひとはこ
)
、
昆布
(
こんぶ
)
や
乾物
(
かんぶつ
)
類が一函、
小間物
(
こまもの
)
が一函、さまざまの
乾菓子
(
ひがし
)
を取りまぜて一函といった工合に積み重ねた高い
一聯
(
いちれん
)
の重ね箱に、なお、
下駄
(
げた
)
や昆布や乾物等をも加えて
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
白い
半襟
(
はんえり
)
の上で、実枝の言葉をかりると唐きび色に光っていた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
一銭二銭の金も使い
惜
(
お
)
しみ、
半襟
(
はんえり
)
も
垢
(
あか
)
じみた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
母さんの年に一度の
半襟
(
はんえり
)
の香を
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
それは節子が日頃大切にして彼女の
肌身
(
はだみ
)
につけていた
半襟
(
はんえり
)
だ。岸本は
枝折
(
しおり
)
代りに書籍の中に
挾
(
はさ
)
んで置いたその女らしい贈物をも納ってしまった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
伊達巻
(
だてまき
)
や、
足袋
(
たび
)
までも盗まれたいうのんで、「そんなら
半襟
(
はんえり
)
は?」いいましたら、「
襦袢
(
じゅばん
)
は助かってん」いうのんです。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
色の浅黒い
眉毛
(
まみえ
)
の濃い
大柄
(
おおがら
)
な女で、髪を
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに
結
(
ゆ
)
って、
黒繻子
(
くろじゅす
)
の
半襟
(
はんえり
)
のかかった
素袷
(
すあわせ
)
で、
立膝
(
たてひざ
)
のまま、
札
(
さつ
)
の
勘定
(
かんじょう
)
をしている。札は十円札らしい。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
十四
日
(
か
)
の
朝
(
あさ
)
僕
(
ぼく
)
は
支度
(
したく
)
も
匆々
(
そこ/\
)
に
宿
(
やど
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した。
銀座
(
ぎんざ
)
で
半襟
(
はんえり
)
、
簪
(
かんざし
)
、
其他
(
そのた
)
娘
(
むすめ
)
が
喜
(
よろこ
)
びさうな
品
(
しな
)
を
買
(
か
)
ひ
整
(
とゝの
)
へて
汽車
(
きしや
)
に
乘
(
の
)
つた。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
今のは
半襟
(
はんえり
)
の間違いだろう。——なに、人形の首だッさ。——
違
(
ちげ
)
えねえ。またしても口を
揃
(
そろ
)
えて高笑い。——あんまりだから、いい! とお勢は膨れる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
仕事
(
しごと
)
を
頼
(
たの
)
むの
何
(
なに
)
が
何
(
ど
)
うしたとか
小
(
こ
)
うるさく
這入込
(
はいりこ
)
んでは
前
(
まへ
)
だれの
半襟
(
はんえり
)
の
帶
(
おび
)
つ
皮
(
かは
)
のと
附屆
(
つけとゞけ
)
をして
御機嫌
(
ごきげん
)
を
取
(
と
)
つては
居
(
ゐ
)
るけれど、つひしか
喜
(
よろこ
)
んだ
挨拶
(
あいさつ
)
をした
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
い
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
或る時木山が夜おそく帰つて来ると、何か薄い
角
(
かく
)
いものを、黙つて長火鉢の側にゐる晴代の前におくので、彼女は包装紙によつて、仲屋の
半襟
(
はんえり
)
か何かだらうと思つた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
祖母
(
としより
)
は
解
(
ほど
)
き
掛
(
か
)
けた
結目
(
むすびめ
)
を、そのまま
結
(
ゆわ
)
えて、ちょいと
襟
(
えり
)
を引合わせた。細い
半襟
(
はんえり
)
の
半纏
(
はんてん
)
の
袖
(
そで
)
の下に
抱
(
かか
)
えて、店のはずれを板の間から、土間へ下りようとして、暗い
処
(
ところ
)
で
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紙包の中から出て來たのは、眞新らしい
天郡上
(
てんぐんじやう
)
で包んだ紅皿が一つ、赤い
半襟
(
はんえり
)
が一と掛けです。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お登和さん昨日は誠に御馳走さま。僕は昨日のお礼にお登和さんへ差上げたいと思って
半襟
(
はんえり
)
を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
田舎の女には珍らしくみづ/\して其のお
納戸色
(
なんどいろ
)
の型附
半襟
(
はんえり
)
の
裡
(
うち
)
から柔らかな白い首筋の線がのび/\と弧を描いて
耳柔
(
みゝたぶ
)
の裏の
生際
(
はえぎは
)
の奥に静かに消え上つてゐるのなどを彼は見た。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
表梯子
(
おもてばしご
)
の方から
蝶子
(
ちょうこ
)
という三十越したでっぷりした
大年増
(
おおどしま
)
が
拾円
(
じゅうえん
)
紙幣を手にして、「お会計を願います。」と帳場の前へ立ち、壁の鏡にうつる自分の姿を見て
半襟
(
はんえり
)
を合せ直しながら
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黒縮緬
(
くろちりめん
)
の羽織に
夢想裏
(
むそううら
)
に
光琳風
(
こうりんふう
)
の春の野を
色入
(
いろいり
)
に染めて、
納戸縞
(
なんどじま
)
の御召の下に
濃小豆
(
こいあづき
)
の
更紗縮緬
(
さらさちりめん
)
、
紫根七糸
(
しこんしちん
)
に
楽器尽
(
がつきつくし
)
の昼夜帯して、
半襟
(
はんえり
)
は色糸の
縫
(
ぬひ
)
ある肉色なるが、
頸
(
えり
)
の白きを
匂
(
にほ
)
はすやうにて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
半
常用漢字
小2
部首:⼗
5画
襟
常用漢字
中学
部首:⾐
18画
“半襟”で始まる語句
半襟屋