飛上とびあが)” の例文
ひよいと飛上とびあがるのもあれば、ぐる/\と歩行あるまはるのもあるし、どうばして矢間やざまからて、天守てんしゆむね鯱立しやちほこだちにるのもえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
文治郎は細竹をもってズーッと突きさえすれば、ヒラリと高い屋根へ飛上とびあがる妙術のある人でございますから、なんぞ竹はないかと四辺あたりを見ると
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もしか兵隊さんの大きなつらが窓越しにのぞきでもしようものなら、みんな護謨毬ごむまりのやうに一度に腰掛から飛上とびあがつたかも知れない。
と、きふひと院長ゐんちやうだとわかつたので、かれ全身ぜんしんいかりふるはして、寐床ねどこから飛上とびあがり、眞赤まつかになつて、激怒げきどして、病室びやうしつ眞中まんなかはし突立つゝたつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
水谷氏みづたにしも、おもはずらずあなから飛上とびあがつた。焚火連たきびれんはしつてた。一どう公爵穴こうしやくあなのぞいてると、なるほどる。
とり真中まんなかあなあたま突込つきこんで、まるでカラーのように、石臼いしうすくびへはめ、またうえ飛上とびあがって、うたしました。
私達は廣い野地やらを別れ/\になつてうろつきまはつた。まつすぐに飛上とびあがりまた飛下りる雲雀のあとを追つて。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
国貞と鶴屋の主人あるじは共々に風通しのいいこの欄干の方へとその席を移しかけた時、外を見ていた種員が突然飛上とびあがって、「皆さん、先生がお帰りで御座ります。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あるひは兵卒へいそつ頸筋元くびすぢもと駈𢌞かけまはる、するとてきくびゆめやら、攻略のっとりやら、伏兵ふせぜいやら、西班牙イスパニア名劍めいけんやら、底拔そこぬけ祝盃しゅくはいやら、途端とたん耳元みゝもと陣太鼓ぢんだいこ飛上とびあがる、さます、おびえおどろいて、一言二言ひとことふたこといのりをする
坊主はしめたりと思い引上ひきあげようとすると、こは如何いかにその魚らしいものが一躍して岡へ飛上とびあがり、坊主の前をスルスルと歩いて通りぬけ、待網のうしろの方から水音高く、再び飛入とびいってついに逃げてしまった
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
と、きゅうひと院長いんちょうだとわかったので、かれ全身ぜんしんいかりふるわして、寐床ねどこから飛上とびあがり、真赤まっかになって、激怒げきどして、病室びょうしつ真中まんなかはし突立つったった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ばちやんとねて、足袋たびはびつしより、わアと椅子いすかたむけて飛上とびあがると、真赤まつかになつて金魚きんぎよわらつた。あはは、あはは。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其の夜の丑刻こゝのつ頃庭口のへい飛上とびあがり、内庭の様子をうかゞいますると、夏の夜とてまだ寝もやらず、庭の縁台には村とばゞの両人、縁側には舎弟の蟠作と安兵衞の両人、蚊遣かやりもとに碁を打って居りました
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おもはず飛上とびあがつて総身そうしんふるひながら大枝おほえだしたを一さんにかけぬけて、はしりながらまづ心覚こゝろおぼえやつだけは夢中むちうでもぎつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
明進軒めいしんけん島金しまきん飛上とびあがつて常磐ときは(はこがはひる)とところを、奴等やつら近頃ちかごろ景氣けいきでは——蛉鍋はまなべと……あたりがついた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つとこずゑしづまつたとおもふと、チチツ、チチツとててまたパツとえだ飛上とびあがる。曉方あけがたまでがなかつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五月雨さみだれ陰氣いんき一夜あるよさかうへから飛蒐とびかゝるやうなけたゝましい跫音あしおとがして、格子かうしをがらりと突開つきあけたとおもふと、神樂坂下かぐらざかした新宅しんたく二階にかいへ、いきなり飛上とびあがつて
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬に乗ったいきおいで、小庭を縁側えんがわ飛上とびあがって、ちょん、ちょん、ちょんちょんと、雀あるきにひらきを抜けて台所へ入って、おへッついの前を廻るかと思うと、上の引窓ひきまどへパッと飛ぶ。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぽぷらのに、どつとまると、それからの喧噪さわぎふものは、——チチツ、チチツと百羽ひやつぱ二百羽にひやつぱ一度いちどこゑて、バツとこずゑ飛上とびあがると、またさつえだにつく。むわるわ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
身のおきどころがなく成つて、紫玉のすそが法壇に崩れた時、「ざまを見ろ。」「や、身を投げろ。」「飛込とびこめ。」——わツと群集の騒いだ時、……たまらぬ、と飛上とびあがつて、紫玉をおさへて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其時そのときまでとははりの有つた目を、なかば閉ぢて、がつくりと仰向あおむくと、これがため蠅はほっぺたをめて居たくちばしから糸を引いて、ぶう/\と鳴いて飛上とびあがつたが、声も遠くには退かず。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その鼻を引挘ひきむしいで小鳥の餌をってやろう、というを待たず、猟夫の落した火縄たちまち大木の梢に飛上とびあがり、たった今まで吸殻ほどの火だったのが、またたくうちに松明たいまつおおきさとなって
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『そんなはづい。そんな、おまへ、』とたしなめるやうにひ/\飛上とびあがつたのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くて婦人が無体にも予が寝しふすまをかゝげつゝ、と身を入るゝに絶叫して、護謨球ごむだまの如く飛上とびあがり、しつおもて転出まろびいでて畢生ひつせいの力をめ、艶魔えんまを封ずるかの如く、襖をおさへて立ちけるまでは
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんにも、脱けかかった脊筋から振上げるように一振り振ったはずみですわ!……いいかげん揉抜もみぬいた負い紐がゆるんだ処へ、飛上とびあがろうとするいきおいで、どん、と肩を抜けると、ひっくりかえった。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飛上とびあがつては引据ひきすゑらるゝやうに、けたゝましくいてちて、また飛上とびあがる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引き息で飛着とびついた、本堂の戸を、力まかせにがたひしと開ける、屋根の上で、ガラガラというひびきかわらが残らず飛上とびあがって、舞立まいたって、乱合みだれあって、打破うちやぶれた音がしたので、はッと思うと、目がくらんで
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いき飛着とびついた、本堂ほんだうを、ちからまかせにがたひしとける、屋根やねうへで、ガラ/\といふひゞきかはらのこらず飛上とびあがつて、舞立まひたつて、亂合みだれあつて、打破うちやぶれたおとがしたので、はツとおもふと、くらんで
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とあとから仔雀がふわりとすがる。これで、羽を馴らすらしい。また一組は、おなじくを含んで、親雀が、狭い庭を、手水鉢ちょうずばちの高さぐらいに舞上まいあがると、その胸のあたりへ附着くッつくように仔雀が飛上とびあがる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
キャッと云って飛上とびあがった友だちと一所いっしょに、すぐ納戸の、父の寝ている所へ二人でころがり込みました。これが第一時の出現で、小児こどもで邪気のない時の事ですから、これは時々、人に話した事がありますが。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はしに小さな芋虫いもむしを一つくわえ、あっち向いて、こっち向いて、ひょいひょいと見せびらかすと、籠の中のは、恋人から来た玉章たまずさほどに欲しがって駈上かけあが飛上とびあがって取ろうとすると、ひょいとかおを横にして
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐに此奴こいつが法壇へ飛上とびあがつた、其のはやさ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)