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遅
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おそ
ふりがな文庫
“
遅
(
おそ
)” の例文
旧字:
遲
「帰つたかて、おまはん、寝られへんやおへんか。浪華亭はんはな、
遅
(
おそ
)
まで起きてはるよつてな。十二時迄、店しまははらへんえ。」
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
後から追いつかれると何だかずっと追いぬかれたような気がするものである。久野の艇は何だかいつもより船脚が
遅
(
おそ
)
いようであった。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
「お母さん、」と彼は言った、「少し出かけてみたいんです。ブイルの方を一回りしてきます。帰りは少し
遅
(
おそ
)
くなるかもしれません。」
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
平岡は三千代の云つた通りには
中々
(
なか/\
)
帰らなかつた。
何時
(
いつ
)
でも斯んなに
遅
(
おそ
)
いのかと尋ねたら、笑ひながら、まあ
左
(
そ
)
んな所でせうと答へた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
扉
(
ドア
)
がスイと開いて矢口が今朝の新聞と、盆の上に一葉の名刺を載せて入ってきた。私はとる手も
遅
(
おそ
)
しとその名刺をつまみあげた。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
すると、
母親
(
ははおや
)
は、たいへんに
長吉
(
ちょうきち
)
の
帰
(
かえ
)
りが
遅
(
おそ
)
いので
心配
(
しんぱい
)
して
門口
(
かどぐち
)
の
雪
(
ゆき
)
の
上
(
うえ
)
に
立
(
た
)
って
待
(
ま
)
っていました。そして
我
(
わ
)
が
子
(
こ
)
の
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
ると
残された日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「今日」と、お宮は
嬉
(
うれ
)
しさを包みきれぬように
微笑
(
わら
)
い徴笑い「これから?
遅
(
おそ
)
かなくって?」行きとうもあるし、
躊躇
(
ためら
)
うようにもいった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「それじゃきょうじゅうに東京へいけばえい。二、三
席
(
せき
)
勝負
(
しょうぶ
)
してからでかけても
遅
(
おそ
)
くはない。うまくいって
逃
(
に
)
げようたってそうはいかない」
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
蕭照は、この人を知ることの
遅
(
おそ
)
かったのを悔いた。彼は初めからこの老画師に害意はもたなかったものの、また好意の
片鱗
(
へんりん
)
も持たなかった。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いか
程
(
ほど
)
機会を待つても
昼中
(
ひるなか
)
はどうしても不便である事を
僅
(
わづ
)
かに
悟
(
さと
)
り得たのであるが、すると、今度はもう学校へは
遅
(
おそ
)
くなつた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「今日は光ちゃん一日暇やねんわなあ? 帰り
遅
(
おそ
)
なってもかめへんやろ?」「かめへんとも。」「あてもそのつもりで行くさかい」いうて
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もうあの人が通ったから、あなたお役所が
遅
(
おそ
)
くなりますなどと春眠いぎたなき主人を揺り起こす軍人の細君もあるくらいだ。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
当の真佐子は別にじくじく一つ事を考えているらしくもなくて、それでいて外界の刺戟に対して、極めて
遅
(
おそ
)
い反応を示した。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ちょうど
袖子
(
そでこ
)
はある
高等女学校
(
こうとうじょがっこう
)
への
受験
(
じゅけん
)
の
準備
(
じゅんび
)
にいそがしい
頃
(
ころ
)
で、
遅
(
おそ
)
くなって
今
(
いま
)
までの
学校
(
がっこう
)
から
帰
(
かえ
)
って
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
に、その
光子
(
みつこ
)
さんの
声
(
こえ
)
を
聞
(
き
)
いた。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
遅
(
おそ
)
きとは三月にはじめて梅の花を見、五月の
瓜
(
うり
)
・
茄子
(
なす
)
を
初物
(
はつもの
)
とす。山中にいたりては山桜のさかり四月のすゑ五月にいたる所もあるなり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
お辰とちがって、柳吉は蝶子の帰りが
遅
(
おそ
)
いと散々
叱言
(
こごと
)
を言う始末で、これではまだ死ぬだけの人間になっていなかった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「お
遅
(
おそ
)
うござんした事。お待たされなすったんでしょう。……さ、おはいりなさいまし。そんなもの足ででもどけてちょうだい、散らかしちまって」
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
前の汽車と停車場で
交換
(
こうかん
)
したのでしょうか、こんどは南の方へごとごと走る音がしました。何だか車のひびきが大へん
遅
(
おそ
)
く貨物列車らしかったのです。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と俺は叫んで、小便を無理にとめようとしたが、時すでに
遅
(
おそ
)
く、きたないその液体はコップから溢れて床に流れた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
(もういい時分じゃ、また
私
(
わし
)
も
余
(
あんま
)
り
遅
(
おそ
)
うなっては道が困るで、そろそろ青を引出して
支度
(
したく
)
しておこうと思うてよ。)
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一年
(
ひととせ
)
と二月は
仇
(
あだ
)
に過ぎざりき、ただ
貴嬢
(
きみ
)
にはあまり早く来たり、われには
遅
(
おそ
)
く来たれり、
貴嬢
(
きみ
)
は
永久
(
とこしえ
)
に来たらざるを
希
(
こいねが
)
い、われは一日も早かれとまちぬ
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
この間じゅう、民さんは怠けて朝は
遅
(
おそ
)
く、どうかすると迎えにやっても、昼
頃
(
ごろ
)
にならなければ出て来なかった。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
こちらへおいでになるのがお
遅
(
おそ
)
くなるのですものね、いつも皆奥様なども
寝
(
やす
)
んでおしまいになっていますわね。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
この
権衡
(
つりあひ
)
の
失
(
うしな
)
はれたる時に
於
(
おい
)
て
胸
(
むな
)
づくしを取るも
遅
(
おそ
)
からずとは、これも
当世
(
たうせう
)
の
奥様気質也
(
おくさまかたぎなり
)
、
虎
(
とら
)
の
巻
(
まき
)
の一
節也
(
せつなり
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
又
頽然
(
ぐたり
)
となると、足の運びも自然と
遅
(
おそ
)
くなり、そろりそろりと草履を
引摺
(
ひきずり
)
ながら、
目的
(
あて
)
もなく
小迷
(
さまよ
)
って行く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ほんの少し、
堤
(
つつみ
)
の上が明るんでいるなかで、
茄子色
(
なすいろ
)
の水の風だけは冷たかった。
千穂子
(
ちほこ
)
は
釜
(
かま
)
の下を
焚
(
た
)
きつけて、
遅
(
おそ
)
い
与平
(
よへい
)
を
迎
(
むか
)
えかたがた、河辺まで行ってみた。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
遅
(
おそ
)
マキナガラ返上ニ及ビマシタノデ、仰セノ通リアノ時分ノコトヲオモイマスト、何ダカオカシクナリマス
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
二郎次は、こんなに夜
遅
(
おそ
)
くお殿様はどこへ行くのだろうかと疑いながらも、黙って付いて行きました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
五万の群集は
熱狂
(
ねっきょう
)
的な
声援
(
せいえん
)
を送ったが、時
既
(
すで
)
に
遅
(
おそ
)
く、一艇身半を
隔
(
へだ
)
てて伊太利は決勝線に
逃
(
に
)
げ
込
(
こ
)
んだ。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
こちらの
世界
(
せかい
)
では
遅
(
おそ
)
く
歩
(
ある
)
くも、
速
(
はや
)
く
歩
(
ある
)
くも、すべて
自分
(
じぶん
)
の
勝手
(
かって
)
で、そこはまことに
便利
(
べんり
)
でございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
持ち行きて商主に
訣
(
わか
)
れると、何故
遅
(
おそ
)
く来たか、荷物は皆
去
(
い
)
ってしまった、気は心というから、何か上げたいものと考えた末、かの新たに生まれた駒こそ災難の本なれ
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そういう時、妻はわざわざ私の所へやって来て、『
遅
(
おそ
)
くなりますから、お先へ休ませて
戴
(
いただ
)
きます』と言う、
丁寧
(
ていねい
)
に三つ指をついてお辞儀をし、それから自分の
寝床
(
ねどこ
)
へ入る。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼らは部屋を隣り合わせているというだけで、別に話をするでもなく、暮した。太田は朝早く家を出、
遅
(
おそ
)
くなって帰る日が多いのでしみじみ話をする機会もなかったわけである。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
「そんなら
別
(
べつ
)
に、一
時
(
とき
)
やそこいら
遅
(
おそ
)
くなったとて、
案
(
あん
)
ずることもなかろうじゃないか」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
これを聞くとかの急ぎ
歩
(
あし
)
で遣って来た男の児はたちまち歩みを
遅
(
おそ
)
くしてしまって、声のした方を見ながら、ぶらりぶらりと歩くと、女の児の方では何かに
打興
(
うちきょう
)
じて笑い声を
洩
(
も
)
らしたが
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
喲
(
やよ
)
、黄金丸、今日はなにとてかくは
遅
(
おそ
)
かりし。待たるる身より待つわが身の、
気遣
(
きづか
)
はしさを
猜
(
すい
)
してよ。
去
(
いぬ
)
る日の事など思ひ出でて、安き心はなきものを」ト、
喞言
(
かこと
)
がましく聞ゆれば
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
君
(
きみ
)
はあれから
奥州
(
あうしう
)
の
塩竈
(
しほがま
)
まで
行
(
い
)
つたか、
相変
(
あひかは
)
らず心に
懸
(
か
)
けられて
書面
(
しよめん
)
を
贈
(
おく
)
られて誠に
辱
(
かたじ
)
けない、
丁度
(
ちやうど
)
宴会
(
えんくわい
)
の
折
(
をり
)
君
(
きみ
)
の
書状
(
しよじやう
)
が
届
(
とゞ
)
いたから、
披
(
ひら
)
く
間
(
ま
)
遅
(
おそ
)
しと
開封
(
かいふう
)
して
読上
(
よみあ
)
げた所が、
皆
(
みんな
)
感服
(
かんぷく
)
をしたよ
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人がそこを出たのは、もう大分
遅
(
おそ
)
かった。街には全く人通りが絶えていた。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
これは江戸の昔から祖父や父の住んでいた古家を
毀
(
こわ
)
した時のことである。僕は数え年の四つの秋、新しい家に住むようになった。したがって古家を毀したのは
遅
(
おそ
)
くもその年の春だったであろう。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「新しき
樽
(
たる
)
よりとおもひて、
遅
(
おそ
)
うなりぬ。許したまへ」とことわりて、前なる杯飲みほしたりし人々にわたすを、少女、「ここへ、ここへ」と呼びちかづけて、まだ杯持たぬ巨勢が前にも置かす。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
其
(
それ
)
は
外日
(
いつぞや
)
友人
(
いうじん
)
の
処
(
ところ
)
で、
或冬
(
あるふゆ
)
の
夜
(
よ
)
、
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
みながら
遅
(
おそ
)
くまで
話込
(
はなしこ
)
んでゐた
時
(
とき
)
の
事
(
こと
)
、
恋愛談
(
れんあいだん
)
から
女学生
(
ぢよがくせい
)
の
風評
(
うはさ
)
が
始
(
はじ
)
まつて、
其時
(
そのとき
)
細君
(
さいくん
)
が
一人
(
ひとり
)
の
同窓の友
(
クラスメート
)
に、
散々
(
さん/″\
)
或学生
(
あるがくせい
)
に
苦労
(
くらう
)
をした
揚句
(
あげく
)
、
熱湯
(
にえゆ
)
を
呑
(
のま
)
されて
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
後
(
あと
)
で
聞
(
き
)
けば、
何
(
なん
)
でも
太平洋汽船会社
(
たいへいやうきせんぐわいしや
)
と
税関
(
ぜいくわん
)
だか
桟橋会社
(
さんばしぐわいしや
)
だかとの
間
(
あひだ
)
に、
前々
(
まへ/\
)
からひどい
確執
(
かくしつ
)
があつて、
之
(
これ
)
が
為
(
ため
)
に
船
(
ふね
)
の
著
(
つ
)
くのも
遅
(
おそ
)
くなれば、
灯光
(
あかり
)
一
(
ひと
)
つない
桟橋
(
さんばし
)
の
中
(
なか
)
に
人
(
ひと
)
を
立
(
た
)
たせるにも
至
(
いた
)
つたのだといふ。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
かの
六〇
八雲たつ国は
六一
山
陰
(
ぎた
)
の
果
(
はて
)
にありて、ここには百里を
隔
(
へだ
)
つると聞けば、けふとも定めがたきに、其の
来
(
こ
)
しを見ても
六二
物すとも
遅
(
おそ
)
からじ。左門云ふ。赤穴は
信
(
まこと
)
ある
武士
(
もののべ
)
なれば必ず
約
(
ちぎり
)
を
誤
(
あやま
)
らじ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
鐸
(
すず
)
鳴らす
路加
(
ルカ
)
病院の
遅
(
おそ
)
ざくら春もいましかをはりなるらむ
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
考える間もとし
遅
(
おそ
)
しで、老武士は近道を突っ走った。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
歩
(
あゆみ
)
遅
(
おそ
)
むることもなく、急ぎもせずに、悠然と
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
『
遅
(
おそ
)
く成つた、遅く成つた。
行
(
い
)
かう。』
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
お前さんの来るのがあんまり
遅
(
おそ
)
いので
幸福が遅く来たなら
(新字旧仮名)
/
生田春月
(著)
「どうしてそんなに
遅
(
おそ
)
くなったか。」
物のいわれ
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
花にゆく老の歩みの
遅
(
おそ
)
くとも
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
遅
常用漢字
中学
部首:⾡
12画
“遅”を含む語句
遅々
遅鈍
遅緩
遅疑
遅刻
遅蒔
遅速
大穴牟遅
鈍遅
大穴牟遅神
多遅比
多遅
遅桜
遅滞
遅疑逡巡
遅咲
遅日
遅延
手遅
阿遅須枳高日子
...