ひき)” の例文
真に千古末だ見ざるの凶、万代遭わざるの禍、社稜宗廟しゃしょくそうびょう、危、旦夕たんせきに在り。乞う皇上早く宮眷きゅうけんひきいて、速やかに楽土にうつれよ云云。
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
『わざわざ遠方とおくからあまたの軍兵つわものひきいて御出征おいでになられるようなことはありませぬ……。』橘姫たちばなひめはそうっしゃってられました。
森林の王鬼王丸が眷族けんぞくひきいて出陣したと早くも聞き伝えた妖精どもが谷々峰々から数を尽くし味方しようとせ加わったのである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「出羽守が人数をひきいて狩猟まきがりをしたあとは、全村、暴風雨あらしの渡ったあとのごとく、青い物ひとつとどめなかった惨状でござりました。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これが傍に坐し、左の者の傍には、恩を忘れ心つねなくかつそむやすき民マンナに生命いのちさゝへし頃かれらをひきゐし導者坐す 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その中に、藤吉郎のひきいる三十人の足軽小隊も交じっていた。休息ッ——という声が、部将からかかると、藤吉郎も、自分の組の者へ
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく兵を動かす指揮官は隊の中にありとはいいながら、身そのものは隊より数歩先に進んでひきゆると同じようなものである。
自由の真髄 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しこうしてさらに外患の眉端びたんに迫るを見たり。この内おのずから潰解せんとする社会をひきい、如何にして、猛然としてきたり迫る外患に応ずるを得んや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
敢えて男子に譲らんやと、古井に同意を表して稲垣をば東京に帰らしめ、決死の壮士十数名をひきいて渡韓する事に決しぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
群がる天兵を打倒しぎ倒し、三十六員の雷将をひきいた討手うっての大将祐聖真君ゆうせいしんくんを相手に、霊霄殿りょうしょうでんの前に戦うこと半日余り。
しかるに今その敵に敵するは、無益むえきなり、無謀むぼうなり、国家の損亡そんもうなりとて、もっぱら平和無事に誘導ゆうどうしたるその士人しじんひきいて、一朝いっちょう敵国外患がいかんの至るに当り
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのなかに、一ぴきおおきなこうもりがありました。そのおおきなこうもりは、ちょうど女王じょおうのように、ほかのこうもりをひきいているごとく、えました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
堀の手は島町通しまゝちどほりを西へ御祓筋おはらひすぢまで進んだ。丁度大塩父子ふしひきゐた手が高麗橋に掛かつた時で、橋の上に白旗しらはたが見えた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
およそ抜穂は卜部、国郡司以下及び雑色人ぞうしきびと等をひきゐて田にのぞんでこれを抜く。——先づ初抜四束を取つて供御くごの飯にし、自余は皆黒白二酒にす 云々
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まあ軍隊をひきいて行くかあるいは乞食になって行かれるか、どっちか知らんですが一体どういう風にして行かれるか
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
陳は下役の者どもをひきいて荘重な祭事をおこなった。それが済んで、鐘のまわりにとばりを垂れさせた。彼はひそかに命じて、鐘に墨を塗らせたのである。
そうなれば、かかる人のひきいる民はおのずから徳化されてくる。孔子がその温良恭倹譲の徳のゆえに至るところ政治の相談を受けたのはよき例である。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼は周密なる思慮をひきいて、満腔まんこうの毒血を相手の頭から浴びせかけ得る偉大なる俳優であった。もしくは尋常以上の頭脳と情熱を兼ねた狂人であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで義家よしいえ身方みかた軍勢ぐんぜいひきいて、こんどもえとさむさになやみながら、三ねんあいだわきもふらずにたたかいました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
干戈かんかに訴えるという大騒動となり、一四六九年には、双方各々五百人ばかりの勢をひきいてニブレー・グリーン(Nibley Green)の野に戦った。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「うむ、それはその何だ、むにゃむにゃ。あああれか。あれが博士のひきいてきた驚異きょうい軍艦ホノルル号か。うむ、すばらしい。全く浮かべるくろがねの城塞じょうさいじゃ」
その女の子のお兄さまらしい、六つばかりのお子さんが、大将のやうに二人をひきゐてゐられた。そのお家は、一寸した西洋間なぞの附いた、上品な家であつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
それは一八二七年の七月、わたしが自分の連隊をひきいて、ルーアンに宿営している当時のことでした。
此事あつてより将門は遺恨ゐこんがたくなつたであらう、今までは何時いつも敵に寄せられてから戦つたのであるが、今度は我から軍をひきゐて、良兼が常陸ひたちの真壁郡の服織はつとり
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
房吉は植木屋の仕事としては、これと云うこともさせられずに日を送って来たが、始終家にばかり引込んで、母親の傍にひきつけられていたので、友達というものもなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
我がリヒヤード・ワグネルも亦、愛妻ミンナと愛犬ルツスをひきゐ、飄然へうぜんとして祖国を去つて巴里パリーに入るや、淋しき冷たき陋巷ろうかう客舎かくしやにありてつぶさに衣食の為めに労苦をめぬ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
前者は伊太利大盜の名にして、同胞魔君の義なり。實の氏名をミケレ・ペツツアといふ。千七百九十九年夥伴なかまひきゐて拿破里王に屬し、佛兵と戰ひて功あり。官職を授けらる。
其議論のはげしきつひに小西技師をして、国境論者こくけうろんしやは別隊をひきゐてべつ探検たんけんすべしとの語をはつせしむるにいたりたる程なりき、もし糧食れうしよくそなへ充分にして廿日以上の日子をつひやすの覚悟なりせば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
政治界には、伊藤博文が自由党を基礎に官僚をひきゐて、三十三年九月、政友会を組織したので、山県は直に伊藤を推薦して、辞表を提出し、十月伊藤を首相とする政友会内閣が出来た。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しかもこの同じ宿屋だったかもしれないが、のちに何万という軍勢ぐんぜいひきいる大将たいしょうがここで生まれたのだ。はじめはうまやのこぞうから身を起こして、公爵こうしゃくがなり、のちには王さまになった。
師のねがふ事いとやすし。待たせ給へとて、はるかのそこくと見しに、しばしして、かむり装束さうぞくしたる人の、さき大魚まなまたがりて、許多あまた四四鼇魚うろくづひきゐて浮かび来たり、我にむかひていふ。
水上署すいじょうしょに事の次第を告げて、大型ランチの出動を促し、水上署の警官達と共に、自から数名の刑事をひきいて、それに同乗し、夜明け前の隅田川の、黒い浪を蹴立けたて、賊船にと急いだのである。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大唐もろこしの軍将、戦艦いくさぶね一百七十艘をひきいて白村江はくそんこう朝鮮ちょうせん忠清道ちゅうせいどう舒川県じょせんけん)に陣列つらなれり。戊申つちのえさる天智天皇てんちてんのうの二年秋八月二十七日)日本やまと船師ふないくさ、始めて至り、大唐の船師と合戦たたかう。日本やまと利あらずして退く。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
近ごろ本邦村落の凋落はなはだしく、百姓稼穡かしょくを楽しまず、相ひきいて都市に流浪し出で、悪事をなす者多し。これを救済せんとて山口県等では盆踊りをすら解禁し、田中正平氏らはこれを主張す。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
この御世に、海部あまべ・山部・山守部・伊勢部をお定めになりました。劒の池を作りました。また新羅人しらぎびとが渡つて來ましたので、タケシウチの宿禰がこれをひきいて堤の池に渡つて百濟くだらの池を作りました。
ことにメリー女王殿下の閲兵を受けるエンパイヤ・デー(帝国紀念日)の女軍観兵式にはアグネスは女士官として佩剣はいけんを取って級友をひきいた。級友は彼女を其の父の位の通りアグネス中尉閣下とはやした。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
領主 暫時しばらく叫喚けうくわんくちぢよ、この疑惑ぎわくあきらかにしてその源流げんりう取調とりしらべん。しかのち、われ卿等おんみら悲歎なげきひきゐて、かたきいのちをも取遣とりつかはさん。づそれまでは悲歎ひたんしのんで、この不祥事ふしゃうじ吟味ぎんみしゅとせい。
二人ふたり頭上づじやう連峯れんぽうひきゐてそびゆることわすれてはならぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
望蜀生ぼうしよくせいとをひきゐてこととなつた。
衆と共に仕事をされる場合には小酒井さんは身をもつってひきいました。ですから自然と衆人が小酒井さんを頭目の位置に据えてしまいました。
小酒井さんのことども (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
秀吉は播州に下って、加古川城を営とし、日夜、軍議をこらしていたが、彼がひきいて来た派遣軍なるものは、わずか七千五百程度であった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、つぎの、つぎのとしも、なつになると、一ぴきのおおきなこうもりが、おおくのこうもりをひきいてきて、りんごばたけうえ毎晩まいばんのようにびまわりました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼が戦いに敗れ地獄にち、しばらく夢中に卒倒してあった後、たちまちいきふき返して、わが身辺を見廻わすと、彼の同僚および彼のひきいたる軍勢は
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
軽慓けいひょう狠険こんけん篤信とくしん小吏しょうり大塩平八が、天保八年の饑饉に乗じ、名を湯武とうぶ放伐ほうばつり、その一味いちみひきい、火を放ちて大坂城を乗り取らんとしたるが如きは
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
事と品とによれば刃金はがねつばとが挨拶あいさつを仕合ふばかりです、といふ者が多かつたのだらう、とう/\天慶二年十一月廿一日常陸の国へ相馬小次郎郎党らうだうひきゐて押出した。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
加番は各物頭ものがしら五人、徒目付かちめつけ六人、平士ひらざむらひ九人、かち六人、小頭こがしら七人、足軽あしがる二百二十四人をひきゐて入城する。其内に小筒こづゝ六十ちやう弓二十はりがある。又棒突足軽ぼうつきあしがるが三十五人ゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一座をひきいる丸木花作まるきはなさく鴨川布助かもがわぬのすけとが散々さんざん観客を笑わせて置いて、定紋じょうもんうった幕の内へ入った。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はこれをかず、初め江東の子弟八千をひきいて西し、幾回いくかいの苦戦に戦没せんぼつして今は一人の残る者なし、かかる失敗の後に至り、何の面目かた江東にかえりて死者の父兄を見んとて
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ここにおいて、精神界と物質界とを問わず、若き生命の活火を胸に燃した無数の風雲児ふううんじは、相ひきいて無人の境に入り、我みずからの新らしき歴史を我みずからの力によって建設せんとする。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
天童利根太郎の三羽烏のひきいる、遊佐剛七郎、春藤幾久馬、鏡丹波ら以下百に余る源助町無形一刀流の面々、その背後の御書院番頭脇坂山城守及び残余十三名のお帳番士一統……剣の色彩は
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)