根元ねもと)” の例文
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
平岡のうちまへた時は、くもつたあたまあつく掩ふかみ根元ねもと息切いきれてゐた。代助はいへに入るまへづ帽子をいだ。格子にはしまりがしてあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その声はもの考えする人の神経しんけいをなやましそうな声であった。ほうきめのついてる根元ねもと砂地すなちに、ややばんだせんだんのみだしてある。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
大久保おほくぼが、奈美子なみこうつくしいかみを、剃刀かみそりはさみでぢよき/\根元ねもとからまつたつてしまつたことは、大分だいぶたつてからつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
電信柱でんしんばしらがあるごとに、その根元ねもとへおしっこをかけたり、ほかの犬の姿をみつけると遠くからにらめていたり、ちっともおちついていないのです。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ですが、その若い枝の根元ねもとから、私達は、ひねくれながら横へそれている老木の姿を想い求めずにはいられないのです。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
貫く根元ねもとから。それから、行つて見たかや田沢たざはうみへ、そこの浮木うきぎの下のみづ。かういふのは幾らでも出ます。校歌の方は一遍さいに書かせてみます
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
山は奥羽山脈の支脈の梵珠ぼんじゆ山脈である。この山脈は津軽半島の根元ねもとから起つてまつすぐに北進して半島の突端の竜飛岬まで走つて海にころげ落ちる。
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
瀧口は、あはやと計り松の根元ねもと伏轉ふしまろび、『許し給へ』と言ふもせつなる涙聲、哀れを返す何處の花ぞ、行衞も知らず二片三片ふたひらみひら、誘ふ春風は情か無情か。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
やがて麦の根元ねもとばみ、菖蒲あやめつぼみは出で、かしの花は散り、にわやなぎの花は咲いた。かいこはすでに三眠さんみんを過ぎた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
マリちゃんはそのほね杜松ねず根元ねもとくさなかくと、きゅうむねかるくなって、もうなみだなくなりました。
ハルクは、そのステッキの根元ねもとをもって、さしだしたのであるが、それもノルマンからいわれたとおりにした。すると、彼の手は、ボタンをおさえたことになる。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
またいはには、青紫あをむらさきのちしまぎきょう、いはぎきょう、はな白梅はくばいて、まめのようにあつぼつたいいはうめ、鋸齒のこぎりばのある腎臟形じんぞうがた根元ねもとして
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うじゃうじゃとかたまって草むらになっているものもあれば、頭から根元ねもとまで三角形につぼみのすずなりになったものもあった。どうして目のめるように美しかった。
見返みかへると、くろ黄色きいろしまのある大柄おほがらはちで、一たかあがつたのがまたたけ根元ねもとりてた。と、地面ぢべたから一しやくほどのたかさのたけかはあひだ蜘蛛くも死骸しがいはさんである。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
よしこの原石器げんせつき疑問ぎもんがあるにしても、そのぎにならべてあるこぶしのようなかたちをしたいしになると、たれても(第二十一圖だいにじゆういちず左下ひだりした)かう根元ねもとふとつてさきとがつたいしばかりが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
によっては、根元ねもとからたおされる場合ばあいもありますが、そのときあなたがたうなさる?』
そして、ふところなかをさぐりだしたので、これは喜捨きしゃしてくれるなとおもっていると、とりしたのはふるくさい莨入たばこいれでした。おじいさんは椿つばき根元ねもとでいっぷくすってってしまいました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
とものマストは二日まえに吹き折られて、その根元ねもとだけが四しゃくばかり、甲板かんぱんにのこっている、たのむはただ前方のマストだけである、しかもこのマストの運命は眼前がんぜんにせまっている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
なにか珍らしい三尺ばかりの木の棒の、同じ太さにけずったものを持ってきて、これはどちらが先のほうで、どちらが根元ねもとかあてて見てくださいと、言ってこられたので困ってしまった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
脱げば——フッサリと切り下げた根元ねもと、色糸で巻き締めたのがりんとしている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あゝ、薄命はくめいなあの恋人達はこんな気味きみのわるい湿地しつちまちに住んでゐたのか。見れば物語の挿絵さしゑに似た竹垣たけがきの家もある。垣根かきねの竹はれきつて根元ねもとは虫にはれて押せばたふれさうに思はれる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その手は、中指が根元ねもとからなくて、四本指である。
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
みぎつの根元ねもとより摧折ひしをられた
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あなたは私に会ってもおそらくまださびしい気がどこかでしているでしょう。私にはあなたのためにその淋しさを根元ねもとから引き抜いて上げるだけの力がないんだから。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これはみきのまはりが、地上ちじよう五尺ごしやくたかさのところでしたが七十三尺八寸しちじゆうさんじやくはつすんあり、根元ねもとのまはりは百二十五尺四寸ひやくにじゆうごしやくしすんもあつて、たかさは十五間じゆうごけん樹齡じゆれい八百年はつぴやくねんはれてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
わざと大袈裟おほげさあたまをかきながら、をつとまりつた。そして、にはの一すみ呉竹くれたけ根元ねもとにころがつてゐるそれをひろげようとした刹那せつな、一ぴきはち翅音はおとにはつとをすくめた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そのおびただしい白いはしら根元ねもとには、同じ色のガス・タンクのようなものが一つずつあった。そばへ寄ってみると、たしかに大型のガス・タンクほどの大きさなのでおどろいた。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おっとおんな杜松としょう根元ねもとめました。そしてそのときには、大変たいへんきましたが、ときつと、かなしみもだんだんうすくなりました。それからしばらくすると、おとこはすっかりあきらめて、くのをやめました。
その巨石記念物きよせききねんぶつといふものゝうち風變ふうがはりのものは、やはり地中海ちちゆうかいのサルジニヤとうにあるねるげといふもので、これはいしまるくつみ根元ねもとふとく、さきほどすこしづつほそくなつてゐるとうのようなもので
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
やなぎ根元ねもと支木さゝへぎをよせかけながら蹲踞しやがんでしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いまかりにその根元ねもとからつたぐちたゝみいてみるとしますと六十九疊ろくじゆうくじようけますから、けっきよく、八疊はちじよう座敷ざしきやつつと、五疊ごじよう部屋へやひとつとれる勘定かんじようになります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
あめは本当につて来た。雨滴あまだれが樋にあつまつて、流れるおとがざあときこえた。代助は椅子から立ちがつた。まへにある百合のたばを取りげて、根元ねもとくゝつた濡藁ぬれわらむしつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「もしかわたしがんだら、あの杜松としょう根元ねもとめてくださいね。」
杉かひのきか分からないが根元ねもとからいただきまでことごとく蒼黒あおぐろい中に、山桜が薄赤くだんだらに棚引たなびいて、しかと見えぬくらいもやが濃い。少し手前に禿山はげやまが一つ、ぐんをぬきんでてまゆせまる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)