)” の例文
野毛のげの橋がけられる。あくる万延元年の四月には、太田屋新田の沼地をうずめて港崎みよざき町の遊廓が開かれる。外国の商人館が出来る。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして、朽木丸太をけておいた所へ出るまで、流れぎわの岩石と水草の間を這ってくると、何やら、妙なものがフト指先にふれた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その山地をおりて、例の川にかった古風な木橋を渡ると、そこはどこの田舎いなかにもあるような場末で、葉子の家もそう遠くなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
關館と大木おほきと兩方から土手をきづき出して、まん中に橋をけた處まで來ると、馬のはだよりも黒い若い衆が一人裸でうまを洗つてゐた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「こっちから二番めです」と一人の声が云っていた、「あのかけはしはけ直さなければいけません、支えの木が腐っていますよ」
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たゞ五人の中央にけられたる初花太夫が、振り乱したる髪の下にてすゝり上げ/\打泣く姿、此上もなく可憐いぢらしきを見るのみ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
高くけられた絵のやうな橋、綺麗な衣服きものを着て其上を通つて行く女、ぶつつかりはしないかと思はれるほど近くかすめて行く多くの舟
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
前の時には、大勢の川越し人足がいたけれども、今は水の出も少ないし、人足でなしに、橋をけて橋銭を取って渡していました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一段高いだんの上に、新月を頭上にけたように仰いで、ただひとり祈る白衣はくいの人物こそ、アクチニオ四十五世にちがいなかった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
流れは、深いわりにさほど広くはないが、両岸の川原の幅が広いので、その全体にかっている橋はかなりに長いものだった。
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
葦も池の輪郭りんかくせばまって池の水が小さな流れになる、上に井の頭線の鉄橋がかっている辺に、わずかに見られるばかりである。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
二階から二階へ丸太で橋をけることは俺も直ぐ考へたが、丸太を大地に立てて、二階から二階へ飛付くことは考へなかつたよ
その請に応じて、山嶽、大巌を抜き、自分の身上にあるだけの無数の石をかかげて幾回となく海浜に積み、ついに大陸と島地の間にけ渡した。
御者ぎょしゃは馬のくつわを取ったなり、白いあわを岩角に吹き散らして鳴りながら流れる早瀬の上にけ渡した橋の上をそろそろ通った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しまに手をひかれて、物置と古びた南京羽目との間の細い道を入って行きますと、別棟べつむねの小さい平屋建の入口へ母屋から渡板がかっています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
明治六年筋違見附すじかいみつけを取壊してその石材を以て造った眼鏡橋めがねばしはそれと同じような形の浅草橋あさくさばしと共に、今日は皆鉄橋にけ替えられてしまった。
二三株にさんかぶ比較的ひかくてきおほきなはんつてところわづか一枚いちまいいたはしなゝめけてある。おしなはしたもと一寸ちよつとどまつた。さうしてちかづいた自分じぶんいへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
通行とほり少き青森街道を、盛岡から北へ五里、北上川にけた船綱橋ふなたばしといふを渡つて六七町も行くと、若松の並木が途断えて見すぼらしい田舎町に入る。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
侍女三人、燈籠二個ふたつずつ二人、一つを一人、五個いつつを提げて附添い出で、一人々々、廻廊のひさしけ、そのまま引返す。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小女こむすめは黙って山を右におりて、小さな池の中にけた橋の方へ往った。月の光は木立こだちさえぎられて四辺あたりは暗かった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けれども、さしあたりまず、大きな木の十字を切って、それをおとうさんのお墓に立てなければなりません。
橋があるといわれた橋は「しらつる橋」、それは谷にけ渡された吊り橋である。踏めばきしきしと揺れ、子供達が駈けて通ると、欄干がぎいぎいときしんだ。
浅間山麓 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
初冬の雨上りの朝には、く此樣な光景を見るものだと思ツただけである。そして何時か、此のまちの東の方を流れてゐるS……川にけられた橋の上まで來た。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ヴィエンヌ河はその町はずれを流れていた。仏蘭西の国道に添うてけてある石橋、騾馬らばに引かせて河岸かしの並木の間を通る小さな荷馬車なぞが眼の下に見える。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
(中略)世間がつとに認めてゐることを、尻馬しりうまに乗つて、屋上をくじやうおくして見たつて、なん手柄てがらにもならない
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
駕籠かごかえしたおせんの姿すがたは、小溝こどぶけた土橋どばしわたって、のがれるように枝折戸しおりどなかえてった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
面白おもしろき柳の巨木の、水に臨んで、幾株か並んでいる広い河原、そこにけたる手摺てすりなき長い橋を渡ると鰍沢かじかざわの町だ。私は右側の粉奈屋という旅店に投じた。丁度三時半。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
橋は一方少し坂になっている処からとちけやきぶななどの巨樹の繁茂している急峻な山の中腹に向ってけられてあるのだ。橋の下は水流は静かであるが、如何いかにも深そうだ。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
これより鳳山亭ののぼりみち、いづみある処に近き荼毘所とびじょあとを見る。石を二行にぎょうに積みて、其間の土をりてかまどとし、その上にけたの如く薪をし、これをかんするところとす。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すると、石切橋と小桜橋との中間に、せられている橋を中心として、そこに、常には見馴みなれない異常な情景が、展開されているのに気がいた。橋の上にも人が一杯いっぱいである。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
重い身体を、どツこいしよと浮かして、源太郎が腰硝子ガラスの障子を開け、水の上へけ出した二尺の濡れ縁へ危さうに片足を踏み出した時、河の中からはまた大きな声が聞えた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
家貧にしてもっぱら農業をつとめたり、然もその読書をたしなむの深き、米く時はスガリ木に棚をし、これに書を載せて米をき舂きこれを読み、畑に出でてもあぜの草の上に置きて
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
二人は遠眼にそれを見ていよいよ焦躁あせり渡ろうとするを、長者はしずかに制しながら、洪水おおみずの時にても根こぎになったるらしき棕櫚しゅろの樹の一尋余りなをけ渡して橋としてやったに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
金五郎は、両手を頭の下にって、寝ころんだまま、ひとり言のように、呟いた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
水声にす橋を渡って、長方形の可なり大きな建物に来た。導かるゝまゝにドヤ/\戸口から入ると、まぶしい洋燈らんぷの光に初見の顔が三つ四つ。やがて奥から咳払せきばらいと共に爺さんが出て来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
太古たいこ日本家屋にほんかおくは、匠家せうかのいはゆる天地根元宮造てんちこんげんみやづくりしやうするもので無造作むざうさごろの合掌がつしやうしばつたのを地上ちじやうてならべ棟木むなぎもつてそのいたゞきわたし、くさもつ測面そくめんおほうたものであつた。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
内の燈火あかしは常よりあざやかあるじが晩酌の喫台ちやぶだいを照し、火鉢ひばちけたるなべの物は沸々ふつふつくんじて、はや一銚子ひとちようしへたるに、いまだ狂女の音容おとづれはあらず。お峯はなかば危みつつも幾分の安堵あんどの思をもてあそび喜ぶ風情ふぜいにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「橋をけるとこじゃないんでしょうか。」女の子が云いました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
此二つが美々しい装ひで、棚をいた上に載せてあつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
我ならで叫びぬ、『神よ此身をばにもけね』と。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いつし、いづれの日にけそめて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
右の腕には十、左の腕には呂宋文字るそんもじのいれずみをしているところから、野武士のぶし仲間なかまでは門兵衛を呂宋兵衛とよびならわしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二階から二階へ丸太で橋をけることは俺もすぐ考えたが、丸太を大地に立てて、二階から二階へ飛付くことは考えなかったよ
額にしてけたりしてありますので、そんな絵や字なぞを、お母様が朝晩に見ておいでになりますと、お腹に居る子供が
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「だから言わねえこっちゃあねえ、待っていりゃあ丸太を持って来て橋をけてやるものを、気の短けえことったら」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あれッ、これは意外なるおん仰せ。何ごとが御前の機嫌を損じましたか、その次第を——ほほう、これは変った絵をおけになりましてございまするな」
庸三はかさをそこにおいて、上がった。そして狭い中庭にかった橋を渡って、ちんまりした部屋の一つへ納まった。薄濁った大川の水が、すぐ目の前にあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
枕橋まくらばしの二ツ並んでいるあたりからも、花川戸はなかわどの岸へ渡る船があったが、震災後河岸通かしどおりの人家が一帯に取払われて今見るような公園になってから言問橋ことといばしけられて
水のながれ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
に近きところには、盜人の屍の切り碎きて棄てたるなり。隻腕かたうで隻脚かたあしは猶その形を存じたり。それさへ心を寒からしむるに、我すみかはこゝより遠からずとぞいふなる。
あなのやうな眞暗まつくら場末ばすゑ裏町うらまちけて、大川おほかはけた、近道ちかみちの、ぐら/\とれる一錢橋いちもんばしふのをわたつて、土塀どべいばかりでうちまばらな、はたけいけ所々ところ/″\侍町さむらひまち幾曲いくまがり、で
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)