家内かない)” の例文
何だってお前はかくすんだね。私の家内かないは、お前がかぞえきれないほどたくさんの金貨を手に入れたので、ますではかったってことを
井戸は小屋をかけかはやは雪中其物をになはしむべきそなへをなす。雪中には一てん野菜やさいもなければ家内かない人数にんずにしたがひて、雪中の食料しよくれうたくはふ。
なにとして今日けふはとうなじばすこゝろおなおもてのおたか路次口ろじぐちかへりみつ家内かないのぞきつよしさまはどうでもお留守るすらしく御相談ごさうだんすることやまほどあるを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其癖そのくせ、ガラ/\とまた……今度こんど大戸おほどしまつたときは、これで、う、家内かないわたしは、幽明いうめいところへだてたとおもつて、おもはずらずなみだちた。…
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大庭 家内かない生憎あいにく留守でどうも……さあ、まあお上り下さい。おい、かな、かなはゐないのか。(女中現はれる)座布団を……。
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
これは男女にかかわらず私を悩ます所の質問であるが、その外にもう一つ、私の家内かないく親しい婦人けがそっと私に聞きに来る疑問がある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
双鶴館そうかくかんにいる間もおれは幾日も浜には行きはしなんだのだ。たいていは家内かないの親類たちとの談判で頭を悩ませられていたんだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
『ええ、います。なあに家内かないですよ』とあの人は答えた。すると、そのお客は『台所はたいへんむし暑いからいっそ外へ出て話しましょう』
その子は今日家内かないの一人にして、これを手離すときはたちまち世帯せたいの差支となりて、親子もろとも飢寒きかん難渋なんじゅうまぬかれ難し。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
主人五郎兵衛は六十二歳、妻つねは五十歳になつて、娘かつ、孫娘かくのほか家内かない下男げなん五人、下女げぢよ一人を使つてゐる。上下十人暮しである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
『や。ちょうどよいおりに戻った。平太、見知っておいてくれい。家内かないだ。——去年まで、上西門院じょうせいもんいん雑仕ぞうしに召されていた袈裟けさまえと申すもの』
わづらるやどうぢやとあるに重助御意ぎよいの通り今以て眼病にてなやみ居りますと申せば大岡殿其藤助が家内かないの樣子はどうぢや兩親はあるか又渡世は何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先生は平生からむしろ質素な服装なりをしていた。それに家内かない小人数こにんずであった。したがって住宅も決して広くはなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むらじ女鳥王めとりのみこのお死がいのお手首に、りっぱなお腕飾うでかざりがついているのを見て、さっそくそれをはぎ取って、自分の家内かないに持ってかえってやりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
もっとも、なくなりました家内かないがのこしていったむすめがひとりおりますが、これは発育はついくもおくれておりまして、いつもはいだらけのきたないかっこうを
主は彼に向ひて宮の家内かないの様子をたづねけるに、知れる一遍ひととほりは語りけれど、娘は猶能なほよく知るらんを、のちに招きて聴くべしとて、夫婦はしきりさかづきすすめけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ありがとうございました。さっそく、いえにかえって、家内かない先生せんせいのおはなしをきかせてやって、元気げんきをつけてやります。
十日とおかほどたって、ごんが、弥助やすけというお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内かないが、おはぐろをつけていました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
へえゝ綺麗きれいなもんですなア、私共わたしども家内かないは、時々とき/″\わたし貴方あなたところへお療治れうぢまゐつてるとむかひにた事もありますが、わたし女房にようばうは今のやうなをんなですか。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
お話は元へ戻りますが、その娘がしきりに自分の家がこういうようによい都合になっておるのみならず、私の地方ではラマでも皆家内かないを持って居られる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
知れたことよ。これから無電室へいって、今すぐ家内かないのやつを、無電で呼びだしてもらって宙一という名を
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『今度のかぜうつやすいからめったな者を付き添わせることはできない。私の家内かないはこの間感冒をやったばかりで免疫になっているから、付添人には最も適当だ』
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ほとんど人のみさかいもないように見えた細君さいくんも、礼子れいこ下女げじょ増山ますやま家内かないから、いろいろなぐさめられていうがままにとこについた。やがて増山夫婦ますやまふうふも帰った。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「このさかずきだけは、わらないようにしてくれ。」と、かれは、家内かないのものに、よくいいきかせました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で思切つて此の一家内かないのむほん人を家から放逐ほうちくするだけの蠻勇ばんゆうも無かツた。雖然家は周三よりも大事である。結局周三を壓伏あつぷくして自分の考に服從ふくじゆうさせやうとした。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
この頃の家内かない動静ようすを詳く叔父の耳へ入れて父親の口からとくとお勢に云い聞かせる、という一策で有る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
だんだん左前ひだりまえになって職人もひとり出、ふたり出、親父の代から住みこんでいる三人ばかりの下染したぞめ家内かないのおもんを相手に張りあいのない様子で商売をつづけていた。
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
妻の何某なにがしはいつの頃よりか、何となく気欝の様子見え始めたれど、家内かないのものは更なり、近所合壁のやからもしたる事とは心付かず、唯だ年けたる娘のみはさすが
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
道端みちばたの人家は道よりも一段低い地面に建てられてあるので、春の日の光をよそに女房共がせっせと内職している薄暗い家内かないのさまが、通りながらにすっかりと見透みとおされる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
フランドル人は家内かないを呼んで、そのできごとを話した。いったい市長はどこへ行くんだろう? 二人は相談し合った。「パリーへ行くんでしょうよ。」と家内は言った。
うさ。自分の家内かないばかりが女だと信じている人もある。兎に角自分の周囲が世界の中心なんだから、他所よその人は中央の消息に通じない田舎漢さ。例えば下関で大阪屋を
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし、この方のことは私は至って暢気のんきで、く考えて見るほどの気もありませんでした。というは、両親がそろっていて、その上に家内かないを持つとなると、責任が三人になる。
なにしろ其の正体を見とどけなければ安心が出来ないので、若い者も小僧も総掛かりで毒蛇のゆくえを詮策したが、家内かないは勿論、庭にもそれらしい姿は見いだされなかった。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
線路脇の焼いた枕木まくらぎさくに接近した六畳と四畳半ぐらいの小さな家だったが、その六畳の方には五人家内かない沖仲士おきなかしか何かの一家族が住み、私達は四畳半の間に住むことになっていた。
そしてまた自分がこの人の家内かないであり、半身であると無意識的に感じると同時に、が身が夫の身のまわりにいてまわって夫をあつかい、衣類を着換きかえさせてやったり、を定めさせてやったり
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし実際をいうと私も憶病なので、丁度ちょうど前月の三十日の晩です、十時頃『四谷』のお岩様の役の書抜かきぬきを読みながら、弟子や家内かないなどと一所いっしょに座敷に居ますと、時々に頭上あたまのうえの電気がポウと消える。
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
と彼の家内かないまでそこへ出て言葉を添える。案内顔な主人のあとについて、寿平次は改まった顔つき、半蔵もまゆをあげながら奥の方へ通ったあとで、佐吉は二人の脱いだ草鞋のひもなど結び合わせた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私、朝倉です。……こちらは私の家内かないで、寮母りょうぼといったような仕事を
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
家内かないにわかにさわぎ立ち、やれ何者のしわざなるぞ、提灯ちやうちん松明たいまつと、上を下へとかへすにぞ、以前の男も心ならず足にまかせて逃げゆきしが、思はずもわが家にかへり、(中略)ひとり住みの身なれば
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たくへくれば、おいもうとさんは大抵たいてい場合ばあひ玄関外げんくわんそとたしておくやうです。家内かないもいくらかおはなしうかゞつてるさうですが、うつかりしたことへば、たゝりがおそろしいんでせう、あまくちかれないさうで。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「いやでもなんでも、家内かないは家内ぢやアありませんか?」
れで失敬する、家内かないの室ででも悠然ゆつくり遊んで行き給へ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
みぎ車麩くるまぶのあるのをつけて、おかみさんと馴染なじみだから、家内かないたのんで、ひとかゞり無理むりゆづつてもらつたので——少々せう/\おかゝをおごつてた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夕暮ゆふぐれうすくらきにまよこゝろもかきくらされてなにいひれんのすきよりさしのぞ家内かないのいたましさよ頭巾づきん肩掛かたかけはつゝめど
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
家内かないも、さういふ点では僕に対して、これといふ隙を見せず、自然言ひがかりをつけやうにも、つけるたねがなかつたんです。
クロニック・モノロゲ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それから奥、東照宮とうせうぐう境内けいだいの方へ向いた部屋々々へや/″\家内かないのものの居所ゐどころで、食事の時などに集まる広間には、鏡中看花館きやうちゆうかんくわくわんと云ふ匾額へんがくかつてゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さま/″\の浪言らうげんをのゝしりて家内かないくるひはしるを見て、両親ふたおや娘が丹精たんせいしたる心の内をおもひやりてなきになきけり。
と呼べど、家内かないの者はきの騒ぎにいずれへか逃げてしまい、一人も居りませんから、寂然ひっそりとして返事がなければ
なだ家内かない和合わがふ致さるゝやうなさるべし不如意ふによいの事は及ばずながら此長兵衞見繼みつぎ申さんと利解りかいのべけれどもお常は一かう得心とくしんせず又七事菊と忍合しのびあひ情死しんぢうなさんとせしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二人は家内かないの紳士をあつかふことのきはめて鄭重ていちようなるをいぶかりて、彼の行くより坐るまで一挙一動も見脱みのがさざりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)