おい)” の例文
ソレはつまらない、君はこれもっおどすつもりだろうが、長い刀を家において今の浪人者をおどそうといっても、威嚇おどかしの道具になりはしない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ナゼこんなに硬いだろうと聞きますと肉が新しいからだと申します。それならばと食頃たべごろの日までおいてみてもやっぱり硬くっていけません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
仕出しいだしませうまつたく舊冬御呼出およびいだしの節は丸龜へまゐりし留守るすの事又貴方あなたおいて參りたる廿五兩の金は私し共夫婦相談さうだんの上一人の娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
主人の少女は小さな箱から氷のかけを二ツ三ツ、皿に乗せて出して、少年の枕頭まくらもとおいて、「もう此限これぎりですよ、また明日あした買ってあげましょうねエ」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
初め刑部けいぶに至るまで丸ッきり手掛が無い様に思って居るけれど未だ目がきかぬと云う者だ己は一ツ非常な証拠者しょうこものを見出して人しれず取ておいた(大)エ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さういふところよんどころなくすて置いていつか分る時もあらうと茫然ばうぜん迂遠うゑんな区域にとどおいて、別段くるしみもいたしませんかつた。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
夫というのは懶惰者なまけものの、酒飲みで普通あたりまえの人間でない。けれど翁は斯様こんな者でも自分の傍において意とせなかった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
成程なるほどハー左様さやうかね、それぢやうちおいてもつまらぬからもつてつてれ、ついで其所そこに大きなかめがあるぢやらう、誠に邪魔じやまになつてかぬからそれも一しよもつくがい。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
基督のことは今ま歌を歌ひなされた、大和先生から段々御聞きなさい、わたしが差当り一つ御話して置くのは、——貴所方あなたがたが忘れない様に聞いておいて頂きたいのは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
この島は敵も少し油断していて守りの兵もさほどおいていなかったので、我藩の兵はその島の上の庄というへ討ちかかって、敵が散乱したに乗じてそこを占領した。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
最後に、警部は部下に命じてさっき摺鉢でふせておいた足跡の型をとらせ、大切そうに警察署へ持帰った。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おつかゞくなつてこまんなわればかしぢやねえんだから」勘次かんじしばらあひだおいてぽつさりとしていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小間癪こましゃくれて先の知れぬ所へゆくいやだと吼顔ほえづらかいてにげでも仕そうな様子だから、買手の所へ行く間一寸ちょっと縛っておいたのだ、珠運しゅうんとかいう二才野郎がどういう続きで何の故障こしょう
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
家へちょっとそう云っておいてお呉れと云えば、はいと箱丁はすぐに新道の角を曲った。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
のぶさんの下駄げたれがげてかう、臺處だいどこほうんでおいたら子細しさいはあるまい、さあへてれをおしと世話せわをやき、鼻緒はなをれしを片手かたてげて、それならのぶさんいつておいで
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
◎これはちと古いが、旧幕府の頃南茅場町みなみかやばちょう辺の或る者、乳呑子ちのみごおいて女房になくなられ、その日稼ぎの貧棒人びんぼうにんとて、里子に手当てあても出来ず、乳がたりぬのでなきせがむ子を、もらちちして養いおりしが
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
予はなお母牛の注意を男共に示しておいて寝てしまった
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
薩人、英人と談判松木の話は次にしておいて、横浜に英吉利イギリスの軍艦がかえって来た跡で、薩摩から談判のめに江戸に人が出て来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
老人は死切しにきらずに居て、必死の思いで頭を上げ、傷口から出る血に指を浸して床へ罪人の名を書附ておいしんだ。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
... 触れずにおいても古くなれば自然と光沢が出る。決して人が手でさするから光沢の出る訳ではない」小山「それでよく解った。今の問題中に玉子は何故なにゆえに銀器を ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
はなすにぞ女房お富はあきはて暫時しばし言葉ことばもなかりしが夫と云ふも皆お前がらちも無き事を云ひ出してこんなさわぎに成りしなり初めから私し呉々くれ/″\口止くちどめをしておいたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
簿記函とかいた長方形の箱が鼠入らずの代をしている、其上に二合入の醤油徳利しょうゆどくりと石油の鑵とがおいてあって
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「もう翼が利かないのだ。こうなってはやはり籠の中においてやった方がいい。」と、ってしまった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先刻さっき内々戸のすきから見たとは違って、是程までに美しいそなたを、今まで木綿布子ぬのこ着せておいた親のはずかしさ、小間物屋もよばせたれば追付おっつけくるであろう、くしかんざし何なりとすきなのを取れ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
貞之進は冷たくなった猪口ちょく残酒のこりを飲干し、顫えまいと力を入れるほど顫えて、口へは遣らずやっぱり膳へおいたが、その時小歌は考え附いたか、たしかあなたは過日このあいだ鳴鳳楼でと云うと
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
そつかくして出てくのを主人が見て、アハヽこれが子供の了簡れうけんだな、人が見たらかへるとは面白おもしろい、一ツあの牡丹餅ぼたもちを引き出して、かへるいきたのをれておいたら小僧こぞうかへつておどろくだらうと
日本の小僧 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
読むものゝうちにはにくところもとよりすくなからず有升ありましたから本をひざの上へおいて母に質問することが度々有つて、それでも分らぬところは想像にたより、よく/\夢中で読むところもないではありませんでしたが
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
亥之ゐのとほくちおもたちだしいづれおかゝつてもあつけない御挨拶ごあいさつよりほか出來できまいとおもはれるから、何分なにぶんともおまへなかつてわたしどものこゝろつうじるやう、亥之ゐの行末ゆくすゑをもおたのまをしおいてお
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
元来がんらい私の教育主義は自然の原則に重きをおいて、数と理とこの二つのものをもとにして、人間万事有形の経営はすべてソレから割出して行きたい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
醒したけれど平気で居たのだ別に咎めもせずに捨ておいて又眠ッて仕舞ッたのだ(大)併し其様な大勢集ッて喧嘩を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
心快こゝろよく請合うけあひけるにぞ半四郎は大いに悦び夫は千萬忝けなし夫にてまづ安心あんしん致したりしかしながら此金は兎も角も貴樣があづかおいくだされよと金子二十兩をかへして渡しあつく夫婦の身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
四の五のなしとは結構なおおせ、私も手短く申しましょうならお辰様をうらせたくなければ御相談。ふざけた囈語ねごとおいてくれ。コレ七、しずかに聞け、どうか売らずと済む工夫をと云うをも待たず。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼等は、日本国中、何様どんな小さな村でも見舞わずに通り過ぎることがなかった。今年、或家に黄色な薬袋をおいて去ると、来年、忘れずにその家を見舞って、古いのを新しいのと取り換えて行った。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
人の住んで居ない町かと思われる程で、少女が(産婆)の軒燈の前まで来た時、其二階で赤児あかんぼの泣声が微かにした。少女は頭を上げてちょっと見上げたが、其儘すぐ一軒おい隣家となりの二階に目を注いだ。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そこで權官けんくわん首尾しゆびよく天下てんか名石めいせきうばてこれを案頭あんとうおい日々ひゞながめて居たけれども、うはさきし靈妙れいめうはたらきは少しも見せず、雲のわくなどいふ不思議ふしぎしめさないので、何時いつしか石のことは打忘うちわす
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)