北風きたかぜ)” の例文
「おじさんのたこ、一ばんだこになれる?」と、北風きたかぜかれながら、あくまであおれわたったそら見上みあげて、賢二けんじがいいました。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
これにはまったくへいこうしたね。ぼくは身をきるような北風きたかぜが、雪といっしょに吹きつけてくる道を、あてどもなくさまよいつづけたんだ
ふゆ何事なにごともなく北風きたかぜさむくにつた。やまうへあきらかにしたまだらゆき次第しだいちて、あとからあをいろ一度いちどいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ぼくは北風きたかぜじゃないとおもうんだよ。北風きたかぜはしんせつじゃないんだよ。ぼくはきっとからすさんだろうとおもうね。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さらつもりつゝある大粒おほつぶゆききたからなゝめ空間くうかん掻亂かきみだしてんでる。おつぎは少時しばしすくんだ。大粒おほつぶゆきげつゝちる北風きたかぜがごつとさむさをあふつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まアまアなにしろみなしに雪がつては為方しかたがない、此家檐下のきした拝借はいしやくしようか……エーう日がれたからな、一倍いちばい北風きたかぜが身にむやうだ、ばうは寒くはないか。
ゴト/\とゆかおと、そしてり/\ふゆちまたあら北風きたかぜまどガラスをかすめるひゞきである。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たまたま北風きたかぜあふられれば一度に褐色の葉裏を見せる。さうして男らしい笑ひ声を挙げる。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ふゆのことですから、北風きたかぜがつよく、くるもくるも、あらしにおそわれました。
園生そのふうゑてもかくれなきもの中村なかむらのおぢやうさんとあらぬひとにまでうはさゝるゝ美人びじんもうるさきものぞかしさても習慣しふくわんこそは可笑をかしけれ北風きたかぜそらにいかのぼりうならせて電信でんしんはしら邪魔じやまくさかりしむかしはわれむかしおもへど良之助りやうのすけ千代ちよむかふときは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
厳寒げんかん北風きたかぜとにさらされて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
北風きたかぜかよ鳥屋とやのひま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
北風きたかぜに消えてゆく。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
北風きたかぜ葉をふるへ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
それで、北風きたかぜは、えだをさげすむようにわらったのでした。そして、北風きたかぜは、うぐいすのいったことを、えだかたったのです。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
おつぎは一ぱいんでひよつとふりかへつたときうしろたけはやしつよ北風きたかぜ首筋くびすぢしつけてはゆきつかんでぱあつとげつけられながらちからかぎりあらそはうとして苦悶もがいてるのをた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ぼくもなるよ。きっとここからちればすぐ北風きたかぜそらへつれてってくれるだろうね。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてそこへると、そりのあとかぜにかきされて、あるかなしかにしかえなく、さむ北風きたかぜかおあしいたのでした。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれ幾度いくたびげても徒勞むだであつた。るやうな北風きたかぜ田圃たんぼわたつて、それをへだてようとするうしろはやしをごうつとおさへてはちて、かれ運動うんどうまつたにぶくしてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
北風きたかぜがわらって
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、おつがいいました。みんな、おそれをいだいてうみほうをながめました。そしてこえをあげてむらほうかえりました。さむ北風きたかぜいている。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ながれのほとりに、三ぼんのぶなのっていました。ふゆあいだえだについた北風きたかぜにさらさらとらしつづけていました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふゆへかけてのたびは、はげしい北風きたかぜこうしてすすまなければならなかった。としとったがんは、みんなをれているという責任せきにんかんじていました。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
ああまた、ながい、物憂ものうふゆあいだ、このとしとったと、北風きたかぜと、ゆきとのたたかいがはじまるのであります。そして、かしのは、ついに孤独こどくでした。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのときは、ゆきさかんにっていました。北風きたかぜがヒューヒューとって、まちなかは、晩方ばんがたのように、うすくらかったのです。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
北風きたかぜさん、わたしは、我慢がまんをします。どうぞ、もっともっとつよいて、ゆきさかんにらしてください。」といいました。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆきまじりの北風きたかぜきつけるまどしたで、おとうと父親ちちおやのそばでわらじをつくったり、なわをなったりしているであろう。したいて、だまっている父親ちちおや
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
もし、もし、北風きたかぜさん、そうわたしをいじめるものではありません。わたしは、いま、はるになるまえ用意よういをしているのです。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
くもれめから、すごいほしひかりが、きらきらとかがやいている。しろしもは、電信柱でんしんばしらに、屋根やねうえっている。さむ北風きたかぜが、あのようにおとをたててゆく。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
いままでかがやかしかったやまも、野原のはらも、もはや、冬枯ふゆがれてしまいました。そして、あわれな、えだまったはとのはねにはなおさむ北風きたかぜいているのであります。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
いさむちゃんは、ハーモニカをくちびるにあてて、ねえさんのきだったきょくを、北風きたかぜかってらしていたのです。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
じいあるきながら胡弓こきゅうは、さむ北風きたかぜおくられて、だんだんととおくにえてゆくのでありました。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼんは、その北風きたかぜこえわせて、いつになくかなしいうたをうたったのであります。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、なんというなさけない、またかなしいことだったでしょう。しずんでから、そのつのした、北風きたかぜに、は、昨日きのうにもましてかなしいこえうたをうたったのであります。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらのにわいた、さるすべりのはなも、一は、あかくきれいだったが、そのさかりをすぎてしまいました。夕日ゆうひが、西空にしぞらにしずむと、北風きたかぜつめたさをかんじるようになりました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふゆばんには、さむい、すような北風きたかぜが、用捨ようしゃなく、屋根やねうえきまくりました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのばんは、かしのは、まんじりともねむりませんでした。とりたちのうえ気遣きづかったからであります。それに、さむ北風きたかぜいて、かしのかってたたかいをいどんだからでありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
北風きたかぜくたびにかさこそと、まどのそとではのとぶけはいがしました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
こう、おかあさんがおっしゃると、おねえさんも、自分じぶんがして、はじめてわかったので、ちょっとしたことできよをしかったことを、ほんとにわるかったとおもいました。そとには、北風きたかぜいています。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、北風きたかぜか、あすもお天気てんきだな。」と、ひとりごとをしました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゴウ、ゴウと、おとをたて北風きたかぜつのりはじめました。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのよるであった。すさまじい北風きたかぜつのった。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)