其等それら)” の例文
実に北国の冬は、笛を吹くか、歌を歌うか、酒を飲んで女に悪戯からかうか、而して其等それらの遊び方が原始的で、其処に言い知れぬ哀れがある。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかして今は専門学者の高級にして精到な注釈書が幾つも出来ているから、私の評釈の不備な点は其等それらから自由に補充することが出来る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
言葉を換えていえば、左右両側は、断崖なり急斜面なり、または深い沢或は平野でもよい、其等それらに依って絶縁されていることが望ましい。
高原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
家の周りの花園や畑や牧場や、其等それらを取り巻く野鳥野獣を棲息させて猟をする雑木林の中の小路を突きけて七・八丁も走りましたわ。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
部屋へやには箪笥たんすほかに、鏡台きやうだいもある。針函はりばこもある。手文庫てぶんこもある。秘密ひみつがあるとすれば、其等それらなかにもいとはしがたい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其等それらの用をいいつける主人というのが、昼間は己の最も卑しい下僕である筈の男である。之が又ひどく意地悪で、次から次へと無理をいう。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
其等それらが「長十山、三国の峰の松風吹きはらふ国土にまぢる松風の音」だの、上に梵字ぼんじを書いて「爰追福者為蛇虫之霊発菩提也ここについふくするものはだちゅうのれいぼだいをはっせんがためなり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かえって心配の種子たねにて我をも其等それらうきたる人々と同じようおぼいずらんかとあんそうろうてはに/\頼み薄く口惜くちおしゅう覚えて、あわれ歳月としつきの早くたてかし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
火箸ひばしさきんでて、それからつゞいて肉汁スープなべや、さら小鉢こばちあめつてました。公爵夫人こうしやくふじんは、其等それらつをも平氣へいきりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
山「いえつれではございません、手前は相州東浦賀で、高沢までは遠くも離れませんから其等それらの訳をもちまして願いますので、何うか幾重にも御勘弁を」
其等それら工業的近世の光景と江戸名所の悲しき遺蹟とは、いづれも個々別々に私の感想を錯乱させるばかりである。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
篁村翁くわうそんおう読売新聞よみうりしんぶん軽妙けいめう短編たんぺんさかんに書いてました、其等それらを見て山田やまだく話をした事ですが、此分このぶんなら一二年内ねんないには此方こつちも打つて出て一合戦ひとかつせんして見やう
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
地震ぢしんともな火災かさい大抵たいてい地震ぢしんのちおこるから、其等それらたいしては注意ちゆうい行屆ゆきとゞき、小火ぼやうち消止けしとめる餘裕よゆうもあるけれども、潰家かいかしたから徐々じよ/″\がるものは
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
もつとかれまへにもくるまつゞいた。爾時そのときはしうへをひら/\肩裾かたすそうすく、月下げつか入亂いりみだれて對岸たいがんわたつた四五にんかげえた。其等それら徒歩かちで、はやめに宴會えんくわいした連中れんぢう
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
国境の峠を越して来る祭客の中に交つて来る少女をとめ達、大阪から来る親類の少女をとめ達、其等それらいづれも平常ふだんに逢ふことが稀で、大方は一年振で祭に出逢ふ人達なのですから、その一かうかう
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
至極しごくそゝくさとおちつききが差配さはいのもとにきたりて此家このいへたしといふ、案内あんないして其處此處そここゝ戸棚とだなかずなどをせてあるくに、其等それらのことは片耳かたみゝにもれで、たゞ四邊あたりしづかとさはやかなるをよろこ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その歩きぶりは其等それらの凡ての条件を全うすべき資格をもっているのである。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
眦裂ねめつける體を見て重四郎はおくへも行れねば其儘そのまゝそこ/\我が家へ立歸り獨り倩々つく/″\かんがふるに毎度いつに變りし今日の樣子且番頭が我を眦裂ねめつけし事合點行ず扨は彼の文を父平兵衞に見せしにや其等それらの事より我が足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其等それらの、さま/″\の室の中には生活をことにし、気持を異にした、いろ/\な、相互いに顔も知り合わないような人が住んでいる。
夕暮の窓より (新字新仮名) / 小川未明(著)
しか其等それらの説も後立山という一箇の山体が存在しているということを主として取扱ったものではなく、此立脚点から見ればや根本を離れたものであった。
いはのあたりは、二種ふたいろはなうづむばかりちてる……其等それらいろある陽炎かげらふの、いづれにもまらぬをんな風情ふぜいしたなかに、たゞ一人いちにんこまやかにゆきつかねたやうな美女たをやめがあつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其等それらは所謂文明の手にはえの如く簑虫みのむし宿やどの如く払いのけられねばならぬのであろうか。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あいちやんはおどろきのあまり、いかさけび、其等それらはらけやうとして、どてうへに、ねえさんのひざまくらたのにがつきました、ねえさんはしづかに、かほはらつてりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
うちには小供が三人まであるが、其等それらは一切人のい亭主にたゝきつけておいて、年中近所の放蕩子息のらむすこや、若い浮氣娘と一緒になつて、芝居の總見そうけんや、寄席入よせつぱいりに、浮々うか/\と日を送り、大師詣だいしまゐりとか
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
私はすこしく書物を読むようになるが早いか、世に裁判と云い、懲罰と云うものの意味を疑うようになったのも、あるいは遠い昔の狐退治。其等それらの記念が知らず知らずの原因になって居たのかも知れない。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
という是れが決闘状はたしじょう取遣とりやりでございますが、むこうは盗賊の同類が多人数たにんず居りますから、其等それらが取巻いて飛道具でも向けられゝば其れり、左もない所が相手も粥河圖書だからおめ/\とも討たれまい
さてまた、其等それら各種の虫の多きに過ぐれば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
つけ追出し候儀と存じ奉つり候其後右九助多分の金子にて質地取戻し其上そのうへあらたに田地でんぢ買請かひうけ當時名主役つかまつり候へ共私欲しよく押領あふりやう宜しからざる儀共多く有之に付惣内歸役きやく願ひも致させたく小前こまへの百姓共時々とき/″\寄合も有之由之に依て其等それらの儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其等それらの薬は何でも遠くへ行って、旅へ出て売るということだ。けれど人の噂に聞いていたことで、実際にあることだとは思われなかった。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其等それらの歌は『夫木集』や『甲斐国志』に載っている。その中の一首で『夫木集』にある権大納言長家の
マル及ムレについて (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
其等それらえだからえだたまつて何十年なんじうねんぶりではじめてつちうへまでおちるのかわからぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其等それらに半死の心臓をあたためながら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
なほひたすらに其等それらを追ふ。
はつせられオヽ九郎兵衞よくこそ委細ゐさいに申たてたりコリヤ九助其方は只今九郎兵衞が申立によれ左右とかく伯父女房とも無體に追出したる樣なり此儀如何いかなるぞと問るゝに九助はつゝしんでこたふるやう其等それらの儀は先日御詮議の節も申上し通り先妻里儀は惣内と不義ふぎ仕つりし而已のみか藤八へ預け候金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其等それらの人々の踏んで来、踏んで去った足跡は、自然、微かな道となって、この仄白ほのじろい月の下に認めることが出来るだろう。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其等それらうちのどれが利根川の水源と文殊とを結び付けた最初の記文であるか、精しく調べては見ないが、出所は一つであって、それが各書に引用されたものに相違ないと想うのである。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
其等それらみな我のかたへを離れざりしを。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一時、この村には、隔った町から移って来た人などもあって、其等それらの人々の中には、病身勝びょうしんがちな者や、気の狂っている者もあった。秋も末になると寒い風が吹く。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
而して、床の上に其等それらの人々が使っていたかめや、びんや、食器が転っているばかりだと思う。
日没の幻影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また賽銭箱の上にはだらりと赤、白、紫の交りの紐が垂下たれさがっていて、青錆の出た鈴が上に吊されていた。其等それらの紐は、多くの人々の手垢に汚れて下の方が黒くなっていたことを覚えている。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
偶然ふとした北の故郷にあった幼児おさなごの昔を懐想して、黄色な雲——灰色の空——白衣の行者——波の音——眼に尚お残っている其等それらの幻が私の心からぬぐい去られないで、いかにも神秘に感ぜられる。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ後に腐れた畳や、紙のすすけた障子などがその儘はたけの中に置いてあったが、どういうものか其等それらのものは、その明る日になっても、ついに幾日たっても持って行かずに、其処そこで腐れてしまった。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
森に居る小鳥の他うして家の内の其等それらの人はいるかを知らなかった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
其等それらは多分宿屋の目標めじるしであるなと思った。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)