トップ
>
佇
>
たゝず
ふりがな文庫
“
佇
(
たゝず
)” の例文
内
(
うち
)
より
明
(
あ
)
けて
面
(
おもて
)
を
出
(
いだ
)
すは
見違
(
みちが
)
へねども
昔
(
むかし
)
は
殘
(
のこ
)
らぬ
芳之助
(
よしのすけ
)
の
母
(
はゝ
)
が
姿
(
すがた
)
なり
待
(
ま
)
つ
人
(
ひと
)
ならで
待
(
ま
)
たぬ
人
(
ひと
)
の
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らず
佇
(
たゝず
)
むかげに
驚
(
おどろ
)
かされて
物
(
もの
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
箪笥の前に小柄な女が
佇
(
たゝず
)
んでいた。年の頃は二十七、八で、男勝りを思わせるような顔は蒼醒めて、眼は訴えるように潤んでいた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
夜の更けかゝつた風が、泣きたい思ひの私の
両脇
(
りやうわき
)
を吹いて通つた。私は外套の
袖
(
そで
)
を
掻
(
か
)
き合せ乍ら、これからどうしようかと思つて
佇
(
たゝず
)
んだ。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
今しも彼が
佇
(
たゝず
)
んでゐる波止場の石段の下には近海通ひの
曳船
(
ひきふね
)
が着いたところだつた。
田舎風
(
ゐなかふう
)
の男女の客が二十人ばかり上つた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
手を伸べて燈を
揺
(
か
)
き消せば、今までは松の軒に
佇
(
たゝず
)
み居たる小鬼大鬼共哄々と笑ひ興じて、わが広間を
填
(
うづ
)
むる迄に入り来れり。
松島に於て芭蕉翁を読む
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
▼ もっと見る
小池はさうやつて、三つ四つ五つの
籾
(
もみ
)
を
噛
(
か
)
み
潰
(
つぶ
)
してから、稻の穗をくる/\と振り𢌞はしつゝ、
路傍
(
みちばた
)
に
佇
(
たゝず
)
んで、
後
(
おく
)
れたお光の近づくのを待つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
船
(
ふね
)
が
下流
(
かりう
)
に
落
(
お
)
ちると、
暮雲
(
ぼうん
)
岸
(
きし
)
を
籠
(
こ
)
めて
水天一色
(
すゐてんいつしよく
)
、
江波
(
かうは
)
渺茫
(
べうばう
)
、
遠
(
とほ
)
く
蘆
(
あし
)
が
靡
(
なび
)
けば、
戀々
(
れん/\
)
として
鷺
(
さぎ
)
が
佇
(
たゝず
)
み、
近
(
ちか
)
く
波
(
なみ
)
が
動
(
うご
)
けば、アヽ
鱸
(
すゞき
)
か?
鵜
(
う
)
が
躍
(
をど
)
つた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
悪い奴は悪い奴で、おやまの
家
(
うち
)
の軒下へ
佇
(
たゝず
)
んで様子を聞くと、おやま山之助は、何かこそ/\話をしている様子でございます。とん/\/\/\。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女
(
をんな
)
は
研桶
(
とぎをけ
)
と
唄
(
うた
)
との二つの
聲
(
こゑ
)
が
錯綜
(
さくそう
)
しつゝある
間
(
あひだ
)
にも
木陰
(
こかげ
)
に
佇
(
たゝず
)
む
男
(
をとこ
)
のけはひを
悟
(
さと
)
る
程
(
ほど
)
耳
(
みゝ
)
の
神經
(
しんけい
)
が
興奮
(
こうふん
)
して
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
廓の門を守れる兵士に敬禮せられて、我は始めてこゝは猶太街の入口ぞと
覺
(
さと
)
りぬ。その時門の内を見入りたるに、黒目がちなる猶太の少女あまた群をなして
佇
(
たゝず
)
みたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
狹い路地に入ると一寸
佇
(
たゝず
)
んで、
蝦蟇口
(
がまぐち
)
の緩んだ口金を齒で締め合せた。心まちにしてゐた
三宿
(
みしゆく
)
のZ・K氏の口述になる小説『狂醉者の遺言』の筆記料を私は貰つたのだ。
足相撲
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
夫 (それにかまはず)「が、そこに
佇
(
たゝず
)
むものとては
他
(
ほか
)
にないから、男ごころをときめかす香りも、伊太郎以外には、たゞ
徒
(
いたづ
)
らに暗きにたゞよひ、吹き消されるばかり」
世帯休業
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
更に
行
(
ゆ
)
きて
畑
(
はたけ
)
の中に
佇
(
たゝず
)
む。月は
今
(
いま
)
彼方
(
かなた
)
の
大竹薮
(
おほだけやぶ
)
を離れて、
清光
(
せいくわう
)
溶々
(
やう/\
)
として
上天
(
じやうてん
)
下地
(
かち
)
を浸し、身は水中に立つの
思
(
おもひ
)
あり。星の光何ぞ
薄
(
うす
)
き。
氷川
(
ひかわ
)
の森も淡くして
煙
(
けぶり
)
と
見
(
み
)
ふめり。
良夜
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
其
様
(
さま
)
異
(
こと
)
なる人の丈いと高く痩せ衰へて凄まじく骨立ちたるが、此方に向ひて
蕭然
(
せうぜん
)
と
佇
(
たゝず
)
めり。
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
つつましやかな氣持で
甲板
(
かんぱん
)
の
一隅
(
ひとすみ
)
にぢつと
佇
(
たゝず
)
みながら、今まで心の中に持つてゐた、人間的なあらゆる
醜
(
みにく
)
さ、
濁
(
にご
)
り、曇り、
卑
(
いや
)
しさ、暗さを
跡方
(
あとかた
)
もなくふきぬぐはれてしまつたやうな
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
平次は飛んで出ると、宵闇の中に、
襤褸切
(
ぼろき
)
れのやうに
佇
(
たゝず
)
む中老人を引入れました。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
余は彼の
燈火
(
ともしび
)
の海を渡り来て、この狭く薄暗き
巷
(
こうぢ
)
に入り、楼上の
木欄
(
おばしま
)
に干したる敷布、
襦袢
(
はだぎ
)
などまだ取入れぬ人家、頬髭長き
猶太
(
ユダヤ
)
教徒の
翁
(
おきな
)
が
戸前
(
こぜん
)
に
佇
(
たゝず
)
みたる居酒屋、一つの
梯
(
はしご
)
は直ちに
楼
(
たかどの
)
に達し
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
柔かい青葉に充ちた外の色に対して
佇
(
たゝず
)
むと、何だかその青い色が、人の感情を吸ひ集めでもするやうに、すが/\しい中にも何となく物の哀れになつかしいやうな心持が
烟
(
けむ
)
つて、なんでもない
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
二人
(
ふたり
)
で
門
(
もん
)
の
前
(
まへ
)
に
佇
(
たゝず
)
んでゐる
時
(
とき
)
、
彼等
(
かれら
)
の
影
(
かげ
)
が
折
(
を
)
れ
曲
(
まが
)
つて、
半分
(
はんぶん
)
許
(
ばかり
)
土塀
(
どべい
)
に
映
(
うつ
)
つたのを
記憶
(
きおく
)
してゐた。
御米
(
およね
)
の
影
(
かげ
)
が
蝙蝠傘
(
かうもりがさ
)
で
遮
(
さへ
)
ぎられて、
頭
(
あたま
)
の
代
(
かは
)
りに
不規則
(
ふきそく
)
な
傘
(
かさ
)
の
形
(
かたち
)
が
壁
(
かべ
)
に
落
(
お
)
ちたのを
記憶
(
きおく
)
してゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
両腕をしつかり胸に組んで、
佇
(
たゝず
)
んでゐるではございませんか。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
並木の
蔭
(
かげ
)
に
佇
(
たゝず
)
み
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
杖と
佇
(
たゝず
)
む。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
其
(
そ
)
の
松
(
まつ
)
の
蔭
(
かげ
)
に、
其
(
そ
)
の
後
(
のち
)
、
時々
(
とき/″\
)
二人
(
ふたり
)
して
佇
(
たゝず
)
むやうに、
民也
(
たみや
)
は
思
(
おも
)
つた、が、
母
(
はゝ
)
には
然
(
さ
)
うした
女
(
をんな
)
のつれはなかつたのである。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
萬世橋
(
よろづよばし
)
へ
參
(
まゐ
)
りましたがお
宅
(
たく
)
は
何方
(
どちら
)
と
軾
(
かぢ
)
を
控
(
ひか
)
へて
佇
(
たゝず
)
む
車夫
(
しやふ
)
、
車上
(
しやじやう
)
の
人
(
ひと
)
は
聲
(
こゑ
)
ひくゝ
鍋町
(
なべちやう
)
までと
只
(
たゞ
)
一言
(
ひとこと
)
、
車夫
(
しやふ
)
は
聞
(
き
)
きも
敢
(
あ
)
へず
力
(
ちから
)
を
籠
(
こ
)
めて
今
(
いま
)
一勢
(
いつせい
)
と
挽
(
ひ
)
き
出
(
いだ
)
しぬ
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と
手水場
(
ちょうずば
)
の
上草履
(
うわぞうり
)
を
履
(
は
)
いて庭へ
下
(
お
)
り、
開戸
(
ひらき
)
を開け、折戸の
許
(
もと
)
へ
佇
(
たゝず
)
んで様子を見ますと、本を読んでいる声が聞える。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
情婦はボックスの外に
佇
(
たゝず
)
んでゐるので、細君はまんざら知らない間柄でもないその情婦に近づいて言葉をかけた。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
思い切ってその窓を離れた彼は、更に新橋の方へ歩みを進めて、今度は大きな時計店の前に
佇
(
たゝず
)
んだ。彼は又金側時計が欲しいと思った。然し無論買うのではない。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
子供等
(
こどもら
)
の
間
(
あひだ
)
に
交
(
まじ
)
つて
與吉
(
よきち
)
も
互
(
たがひ
)
の
身體
(
からだ
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
ける
樣
(
やう
)
にして
飮
(
の
)
んだ。
村落
(
むら
)
の
者
(
もの
)
が
飮
(
の
)
んでる
後
(
うしろ
)
から
木陰
(
こかげ
)
に
佇
(
たゝず
)
んで
居
(
ゐ
)
た
乞食
(
こじき
)
がぞろ/\と
來
(
き
)
て
曲物
(
まげもの
)
の
小鉢
(
こばち
)
を
出
(
だ
)
して
要求
(
えうきう
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
暫し避けて
佇
(
たゝず
)
む程に、さきの車又かへり路に我を見て、再び「コンフエツチイ」を投げかけたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
汝
(
なんぢ
)
は空しき白日の呪ひに生きよ!——こんなふうの詩とも散文とも訳のわからない口述原稿を、
馬糞
(
ばふん
)
の多い其処の郊外の路傍に
佇
(
たゝず
)
んで読み返し、ふと気がつくと涙を呑んで
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
偖主人の鬼一殿は何処に
在
(
おは
)
すぞと見てあれば、大玄関の真中に、大礼服の
装
(
よそほひ
)
美々しく、
左手
(
ゆんで
)
に
剣𣠽
(
けんぱ
)
を握り、右に
胡麻塩
(
ごましほ
)
の
長髯
(
ちようせん
)
を
撫
(
ぶ
)
し、
厳
(
いかめ
)
しき顔して、眼鏡を光らしつゝ
佇
(
たゝず
)
みたまふが
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
庭木戸を押し開けて入ると、中は小大名の下屋敷ほどの豪勢さ、泉石の
佇
(
たゝず
)
まひも尋常でなく、縁側の
隅
(
すみ
)
、座敷の
隈
(
くま
)
に、二人三人の男女が、額を
鳩
(
あつ
)
めて何やらコソコソと話して居るのです。
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
仲間
(
ちゅうげん
)
は
仰向
(
あおむけ
)
になって見ると驚きました。
傍
(
かたわ
)
らに一
本揷
(
ぽんさし
)
の品格の
好
(
い
)
い男が
佇
(
たゝず
)
んで居るから少し
怯
(
おく
)
れて居ました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お秋さんは人に好かれるといふのは極つて居ることなのだ。自分は規則正しく植ゑられた櫻の木の青葉の蔭に
佇
(
たゝず
)
んで待つて見たがどういふものかお秋さんは遂に來ない。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
穉
(
をさな
)
かりし程は、母上我に怪我せさせじとて、とある街の角に
佇
(
たゝず
)
みて祭の
盛
(
さかり
)
を見せ給ひしのみ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
下女のお徳は、平次に呼留められて、キヨとんと
階子段
(
はしごだん
)
の下に
佇
(
たゝず
)
みました。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
厚く礼を述べ白翁堂の家を
立出
(
たちい
)
で、見え隠れに跡をつけ、馬喰町へまいり、下野屋の
門辺
(
かどべ
)
に
佇
(
たゝず
)
み待って
居
(
お
)
るうちに、供の者が買ものに出て
行
(
ゆ
)
きましたから、孝助は宿屋に
入
(
はい
)
り
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
恥しいのも寒いのも打忘れて
極月
(
ごくげつ
)
ヒュー/\風の吹きまするのをも
厭
(
いと
)
わず
深更
(
しんこう
)
になる迄往来
中
(
なか
)
に
佇
(
たゝず
)
んで居て、人の袖に
縋
(
すが
)
るというは誠に気の毒な事で、人も善い時には善い事
許
(
ばか
)
り有りますが
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
斯う庭の
面
(
おも
)
を
見詰
(
みつめ
)
ますと、生垣の外に
頬被
(
ほゝかぶり
)
をした男が
佇
(
たゝず
)
んで
居
(
お
)
る様子、
能々
(
よく/\
)
透かして見ますると、飽かぬ別れをいたしたる恋人、
伊之助
(
いのすけ
)
さんではないかと思ったから、
高褄
(
たかづま
)
をとって庭下駄を履き
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
待てよ、
先刻
(
せんこく
)
から表に
佇
(
たゝず
)
んだまゝ近寄らぬ処を見れば、日頃女房に恋い
焦
(
こが
)
れている我が心に附け入って、
狐狸
(
こり
)
のたぐいが我を
誑
(
たぶら
)
かすのではないか知らん、いや/\全く人かも知れぬ、兎も角も声を
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と思って
佇
(
たゝず
)
んで居りますと、
後
(
うしろ
)
から
女郎屋
(
じょろや
)
の
若衆
(
わかいしゅ
)
が
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
佇
漢検1級
部首:⼈
7画
“佇”を含む語句
佇立
立佇
佇止
佇徊
佇立所
佇立瞑目
御佇