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蔭
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かげ
ふりがな文庫
“
蔭
(
かげ
)” の例文
彼はその宿屋の門口に、朝から晩まで腰をすえ、日光を避けて、いつも大きな木の
蔭
(
かげ
)
に入っているようにするほかには動かなかった。
リップ・ヴァン・ウィンクル:ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
自分の
教
(
おす
)
わった師匠がその電気を取り
続
(
つ
)
いで、自分に掛けてくれて、そのお
蔭
(
かげ
)
で自分が生涯ぴりぴりと動いているように思っている。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かたがた
私
(
わたくし
)
としては
態
(
わざ
)
とさし
控
(
ひか
)
えて
蔭
(
かげ
)
から
見守
(
みまも
)
って
居
(
い
)
る
丈
(
だけ
)
にとどめました。
結局
(
けっきょく
)
そうした
方
(
ほう
)
があなたの
身
(
み
)
の
為
(
た
)
めになったのです……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「実は今夜突然、竹屋三位様が寮へお越しになりました。で明晩のことについて、お家様も
蔭
(
かげ
)
ながらひどくご心配いたしております」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしてその刺戟は過敏にされた神経のお
蔭
(
かげ
)
にほかならないと考えた。ではお延の行為が彼の神経をそれほど過敏にしたのだろうか。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
げに珍しからぬ人の身の上のみ、かかる翁を求めんには山の
蔭
(
かげ
)
、水の
辺
(
ほとり
)
、国々には
沢
(
さわ
)
なるべし。されどわれいかでこの翁を忘れえんや。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その友だちの植えた
檜
(
ひのき
)
の木ももう
蔭
(
かげ
)
をなしていたが、最近行った時には、周囲の垣がこわれて、他の墓との境界がなくなっていた。
『田舎教師』について
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
大部分は朽ちてしまったあとの少し残った
透垣
(
すいがき
)
のからだが隠せるほどの
蔭
(
かげ
)
へ源氏が寄って行くと、そこに以前から立っていた男がある。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
雪割草
(
ゆきわりそう
)
は、だれかと
思
(
おも
)
って、その
方
(
ほう
)
を
見
(
み
)
ると、しゅろ
竹
(
ちく
)
の
蔭
(
かげ
)
から、うす
紅
(
あか
)
いほおをして、
桜草
(
さくらそう
)
が
笑
(
わら
)
いながらいっているのでありました。
みつばちのきた日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
此
(
こ
)
の
樹
(
き
)
の
蔭
(
かげ
)
から、すらりと
向
(
むか
)
うへ、
隈
(
くま
)
なき
白銀
(
しろがね
)
の
夜
(
よ
)
に、
雪
(
ゆき
)
のやうな
橋
(
はし
)
が、
瑠璃色
(
るりいろ
)
の
流
(
ながれ
)
の
上
(
うへ
)
を、
恰
(
あたか
)
も
月
(
つき
)
を
投掛
(
なげか
)
けた
長
(
なが
)
き
玉章
(
たまづさ
)
の
風情
(
ふぜい
)
に
架
(
かゝ
)
る。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
少し意地悪い人に
遭
(
あ
)
ったら、「西洋の旦那」という言葉の
蔭
(
かげ
)
には、封建性が骨まで
染
(
し
)
み込んだ一種の卑屈さがあるといわれるであろう。
日本のこころ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼女の
頬
(
ほお
)
は、
入日時
(
いりひどき
)
の山脈の様に、くっきりと
蔭
(
かげ
)
と
日向
(
ひなた
)
に別れて、その分れ目を、
白髪
(
しらが
)
の様な長いむく毛が、銀色に
縁取
(
へりど
)
っていた。
火星の運河
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「さうですか。どうもありがたうございました。お
蔭
(
かげ
)
さまでございます。」署長はまるで飛ぶやうにおもてに出てまた戻って来た。
税務署長の冒険
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
すると佐川二等兵は複雑な
蔭
(
かげ
)
の見られる微笑を浮べながら、大丈夫ですよ、と簡単に答えた。その時は私もホッとした思いに置かれた。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
この頃のこんな田舎暮しのお
蔭
(
かげ
)
で、そう言った私の暗い半身は、もう一方の私の明るい半身に
徐々
(
じょじょ
)
に打負かされて行きつつあったのだ。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
中折帽の
庇下
(
ひさしした
)
からチラチラ光っている無感動な冷たい眼や、鉄柱の
蔭
(
かげ
)
で一人一人に薄笑いを浴びせている若いモダンボーイ風のや……。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
振乱す幽霊の毛のように打なびく柳の
蔭
(
かげ
)
からまたしても怪し気なる女の姿が
幾人
(
いくたり
)
と知れず
彷徨
(
さまよ
)
い
出
(
い
)
で、何ともいえぬ
物哀
(
ものあわれ
)
な泣声を立て
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「やあ! お
蔭
(
かげ
)
さまで。」と、勝平は
傲然
(
ごうぜん
)
と答えた。『
茲
(
ここ
)
にも俺の金の力で動いている男が一人いる。』と、心の中で思いながら。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
これが
今日
(
こんにち
)
多
(
おほ
)
くの
石器
(
せつき
)
が
發見
(
はつけん
)
される
理由
(
りゆう
)
の
一
(
ひと
)
つでありまして、お
蔭
(
かげ
)
で
私共
(
わたしども
)
が
皆
(
みな
)
さんと
共
(
とも
)
に
石器
(
せつき
)
を
探
(
さが
)
しに
行
(
い
)
つても、
獲物
(
えもの
)
があるわけです。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
お
蔭
(
かげ
)
で
名誉
(
めいよ
)
は
助
(
たす
)
かった。もう
出発
(
しゅっぱつ
)
しましょう。こんな
不徳義
(
ふとくぎ
)
極
(
きわま
)
る
所
(
ところ
)
に一
分
(
ぷん
)
だって
留
(
とどま
)
っていられるものか。
掏摸
(
すり
)
ども
奴
(
め
)
、
墺探
(
おうたん
)
ども
奴
(
め
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しかし塗るのをその人たちに
悟
(
さと
)
られてはいかないからお
手水
(
ちょうず
)
に行くという都合にしてある岡の
蔭
(
かげ
)
に隠れて油をすっかり塗って来たです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
己
(
おれ
)
は幽霊に百両の金を持って来ておくんなせえ、
私
(
わっち
)
ども夫婦は萩原様のお
蔭
(
かげ
)
で
何
(
ど
)
うやら
斯
(
こ
)
うやら暮しをつけて居ります者ですから
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あなたは、
蔭
(
かげ
)
ではひそかに
美味
(
うま
)
いものを食っていたンでしょう? アンナ・カレニナ、復活、ああどうにもやりきれぬ
巨
(
おお
)
きさ……。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
好運が急角度で自分の方に
嚮
(
む
)
きかえり、時節が到来したように思われ、大島の
対
(
つい
)
の不断着のままの銀子を料亭の庭の松の
蔭
(
かげ
)
に立たせて
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
尚
(
な
)
お一層この娘を嫌う※
但
(
ただ
)
しこれは普通の
勝心
(
しょうしん
)
のさせる
業
(
わざ
)
ばかりではなく、この娘の
蔭
(
かげ
)
で、おりおり高い鼻を
擦
(
こす
)
られる事も有るからで。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
白糠の宿に帰ると、秋の日が暮れて、ランプの
蔭
(
かげ
)
に
妻児
(
さいじ
)
が淋しく待って居た。夕飯を食って、八時過ぎの終列車で釧路に引返えす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
中には、娘さんや奥様の姿もあった。そうかと思うと、この町では全く見なれない人物が、塀の
蔭
(
かげ
)
や
横丁
(
よこちょう
)
の曲り角に立っていた。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ウド
闇
(
ぐら
)
き柳の
蔭
(
かげ
)
に一軒の小屋あり、主は牧勇蔵と言う小農夫、この正月
阿園
(
おその
)
と呼べる隣村の少女を
娶
(
めと
)
りて愛の夢に世を過ぎつつ
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
蔭
(
かげ
)
で聞いていると
寧
(
むし
)
ろ浮き浮きしている者のようにさえ感じられた、——これでいい、靱負はそう頷いてほっとしたのであった。
日本婦道記:二十三年
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それ見ろ、馬鹿七の
嘘吐
(
うそつ
)
き! 何も出やしないぢやないか。」といつて智慧蔵が大声で呶鳴りました時、向ふの大きな
樟
(
くす
)
の木の
蔭
(
かげ
)
から
馬鹿七
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
「何がいったい出たのでござるな?」「白刃をさげた
逞
(
たくま
)
しい武辺者」「そうしてどこから出たのでござろう?」「あの桜の古木の
蔭
(
かげ
)
から」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
でもあの人が通り合せたお
蔭
(
かげ
)
で助かりはしたもののこわいことだったねえ、もうもう気をつけておくれでないとほんに困りますよ
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
僕に向かってはよい顔しながら、
蔭
(
かげ
)
にまわると悪口する、はなはだ
卑
(
いやし
)
むべき人であると思って以来、丙を見てもロクに
挨拶
(
あいさつ
)
しなくなった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
バルタ
最前
(
さいぜん
)
、
此
(
この
)
水松
(
いちゐ
)
の
蔭
(
かげ
)
で
居眠
(
ゐねむ
)
ってゐますうちに、
夢
(
ゆめ
)
うつゝに、
主人
(
しゅじん
)
とさる
人
(
ひと
)
とが
戰
(
たゝか
)
うて、
主人
(
しゅじん
)
が
其人
(
そのひと
)
をば
殺
(
ころ
)
したと
見
(
み
)
ました。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
そうして子供たちとわかれて、私ひとり石段をゆっくりのぼって来ると、石段の上の、
藤棚
(
ふじだな
)
の
蔭
(
かげ
)
にお母さまが立っていらして
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この家の主人らしい、頭に
白髪
(
しらが
)
のまじったやさしそうな男の人が衝立の
蔭
(
かげ
)
から出て来て、木之助と松次郎を見ると、にこにこと笑いながら
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
佐助は何という意気地なしぞ男の
癖
(
くせ
)
に
些細
(
ささい
)
なことに
怺
(
こら
)
え
性
(
しょう
)
もなく声を立てて泣く
故
(
ゆえ
)
にさも
仰山
(
ぎょうさん
)
らしく聞えお
蔭
(
かげ
)
で私が叱られた
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そのお
蔭
(
かげ
)
のことを考えているような意見でも、職工たちの(殊に臨時工の)目先きだけの利益を巧みにつかんでいるのである。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
畑
(
はたけ
)
の
作主
(
さくぬし
)
が
其
(
その
)
損失
(
そんしつ
)
以外
(
いぐわい
)
にそれを
惜
(
をし
)
む
心
(
こゝろ
)
から
蔭
(
かげ
)
で
勢
(
いきほ
)
ひ
激
(
はげ
)
しく
怒
(
おこ
)
らうともそれは
顧
(
かへり
)
みる
暇
(
いとま
)
を
有
(
も
)
たない。
勘次
(
かんじ
)
の
痩
(
や
)
せた
茄子畑
(
なすばたけ
)
もさうして
襲
(
おそ
)
はれた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
見合せ一
聲
(
せい
)
叫
(
さけ
)
んで肩先より乳の下まで一刀に切放せば茂助はウンとばかりに
其儘
(
そのまゝ
)
死
(
しゝ
)
たる處へ以前の
曲者
(
くせもの
)
石塔
(
せきたふ
)
の
蔭
(
かげ
)
より
現
(
あらは
)
れ出るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
うす暗い電灯の中で見るせいか、ずっと前の席に向合って来た青年の顔半分が
蔭
(
かげ
)
になって、だいぶ年寄りじみた印象に変る。
浴槽
(新字新仮名)
/
大坪砂男
(著)
男は窓の
処
(
ところ
)
に行って、そこの
蔭
(
かげ
)
になっている処に立っている。
蝋燭
(
ろうそく
)
の光は男の足の所にちら付いているだけである。
暫
(
しばら
)
くして男が言い出した。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
このお
蔭
(
かげ
)
によって山から迎えらるる我々の農神が、家ごとにちがった神であったことが、ほぼ明らかになってくるのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
世に売れている人たちの仕事場などに比べては見る
蔭
(
かげ
)
もないほどの
手狭
(
てぜま
)
な処、当り前ならば、こっちから
辞
(
ことば
)
を低くして訪問もすべきであるのを
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
一曲
(
いつきよく
)
舞ひ納む
春鶯囀
(
しゆんあうてん
)
、細きは珊瑚を碎く一雨の曲、風に靡けるさゝがにの絲輕く、太きは
瀧津瀬
(
たきつせ
)
の鳴り渡る千萬の聲、
落葉
(
おちば
)
の
蔭
(
かげ
)
に
村雨
(
むらさめ
)
の
響
(
ひゞき
)
重
(
おも
)
し。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
あなたのお
蔭
(
かげ
)
で、
私
(
わたし
)
共の世界が元どほりに、
真
(
まつ
)
すぐになりましたことは、誠に御礼の申さうやうもないことでございます。
夢の国
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
で、万事うまくいったと見ると、彼女は意気揚々として、こんなに無事におさまっているのは誰のお
蔭
(
かげ
)
だと言わんばかりに、鼻声で歌い始める。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その御婚礼の日に、ウイリイは、小さな灰色の馬のところへ行って、みんなお前のお
蔭
(
かげ
)
だと言ってよろこびました。馬は
黄金鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
父は母の
歿後
(
ぼつご
)
、後妻も
貰
(
もら
)
わないで不自由を
忍
(
しの
)
んで来たのであったが、
蔭
(
かげ
)
では田舎者と
罵倒
(
ばとう
)
している貝原から
妾
(
めかけ
)
に要求され
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そこで、嫌疑を招くことになり、たった一人のばか者のお
蔭
(
かげ
)
で、万事がらがらといってしまった! え、いったいこんな話ってあるもんですか?
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
蔭
漢検準1級
部首:⾋
14画
“蔭”を含む語句
木蔭
樹蔭
日蔭
御蔭
小蔭
蔭言
蔭干
江見水蔭
岩蔭
水蔭
庇蔭
橘千蔭
蔭間茶屋
江見水蔭子
御庇蔭
蔭口
山蔭
物蔭
藪蔭
日蔭者
...