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棄
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す
ふりがな文庫
“
棄
(
す
)” の例文
(
茫然
(
ぼんやり
)
してると、
木精
(
こだま
)
が
攫
(
さら
)
ふぜ、
昼間
(
ひるま
)
だつて
用捨
(
ようしや
)
はねえよ。)と
嘲
(
あざけ
)
るが
如
(
ごと
)
く
言
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
てたが、
軈
(
やが
)
て
岩
(
いは
)
の
陰
(
かげ
)
に
入
(
はい
)
つて
高
(
たか
)
い
処
(
ところ
)
の
草
(
くさ
)
に
隠
(
かく
)
れた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼はその後も彼の異様な恋情を
棄
(
す
)
てなかったばかりか、それは月日がたつに従って、
愈々
(
いよいよ
)
濃
(
こまや
)
かに、愈々深くなりまさるかと思われた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは神に見
棄
(
す
)
てられたる男だった。徒刑囚だった。この徒刑囚という一語は、彼にとっては、審判のラッパの響きのように思えた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
故に
姦雄的
(
かんゆうてき
)
権略的の性質を備ふるものにあらざれば之を軽侮し之を棄却せざるなり(例へばナポレヲンがヨーゼフㇶンを
棄
(
す
)
つるが如し)
舞姫
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
「そんならついて来い。葡萄などもう
棄
(
す
)
てちまへ。すっかり
唇
(
くちびる
)
も歯も紫になってる。早くついて来い、来い。
後
(
おく
)
れたら棄てて行くぞ。」
谷
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
彼女
(
かのぢよ
)
は、
片山
(
かたやま
)
一人
(
ひとり
)
を
得
(
う
)
る
爲
(
ため
)
には、
過去
(
くわこ
)
の一
切
(
さい
)
を
棄
(
す
)
てた。
肉親
(
にくしん
)
とも
絶
(
た
)
たなければならなかつた。もつとも、
母親
(
はゝおや
)
は
實母
(
じつぼ
)
ではなかつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
その爲に武士を
棄
(
す
)
てたといふひどい
跛者
(
ちんば
)
で、身體も至つて
華奢
(
きやしや
)
、町人のやうに腰の低い、縞物などを着た、至つて碎けた人柄です。
銭形平次捕物控:164 幽霊の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
みんな家郷を
棄
(
す
)
て親兄弟を棄てて国事に身を
捧
(
ささ
)
げる人々だ、名も求めず栄達も望まず、王政復古の大業のために骨身を削る人々だ。
日本婦道記:尾花川
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
王子
(
おうじ
)
はこういう
憐
(
あわ
)
れな
有様
(
ありさま
)
で、
数年
(
すうねん
)
の
間
(
あいだ
)
、
当
(
あて
)
もなく
彷徨
(
さまよ
)
い
歩
(
ある
)
いた
後
(
のち
)
、とうとうラプンツェルが
棄
(
す
)
てられた
沙漠
(
さばく
)
までやって
来
(
き
)
ました。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
おまけに舶来の
絹巻線
(
きぬまきせん
)
が気に入らないと云って、自分で器械を作って絹巻線を製作しては切り
棄
(
す
)
て、作っては切り棄てる事二万
哩
(
マイル
)
。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
児を
棄
(
す
)
てる日になりゃア金の
茶釜
(
ちゃがま
)
も出て来るてえのが天運だ、
大丈夫
(
だいじょうぶ
)
、銭が無くって
滅入
(
めい
)
ってしまうような
伯父
(
おじ
)
さんじゃあねえわ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこには、ゴロンと二つの生首が転がり、二人分の滅茶滅茶になった血みどろな躰が、二三間先きに、
芥
(
あくた
)
のように、
棄
(
す
)
てられてあった。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
心の許さぬ、望みのない思ひをいさぎよく
棄
(
す
)
てるに最も安全な
途
(
みち
)
は
寧
(
むし
)
ろ其の相手の欠陥に幻滅を起すことより他になかつたからである。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
「いやいや拙者の考えでは、浮気者の
大莫連
(
だいばくれん
)
。それで許婚の貴殿を
棄
(
す
)
て、
仇
(
あだ
)
し男と逃げた筈でござる。……競争相手はなかったかな?」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
尤
(
もっと
)
もこれは
地上
(
ちじょう
)
の
母
(
はは
)
に
就
(
つ
)
いて
申上
(
もうしあ
)
げることで、
肉体
(
にくたい
)
を
棄
(
す
)
てて
了
(
しま
)
ってからの
母
(
はは
)
の
霊魂
(
たましい
)
とは、むろん
自由自在
(
じゆうじざい
)
に
通
(
つう
)
じたのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
田口は敬太郎の矛盾をこの一句で切り
棄
(
す
)
てたなり、それ以上に追窮する
愚
(
ぐ
)
をあえてしなかった。そうして問題をすぐ改めて見せた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この雉を持って来た序詞は、鑑賞の邪魔をするようでもあるが、私は、意味よりも音調にいいところがあるので
棄
(
す
)
て難かったのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
しかし、それでもまだ
棄
(
す
)
てられるほどではなかったが、間もなく
瘡
(
おでき
)
が出来て、それが
潰
(
つぶ
)
れて
牀席
(
ねどこ
)
をよごしたので、とうとう
逐
(
お
)
い出された。
翩翩
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
そうして滅亡するか復興するかはただその時の偶然の運命に任せるということにする外はないという
棄
(
す
)
て
鉢
(
ばち
)
の哲学も可能である。
津浪と人間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
自分の皮膚を
棄
(
す
)
てて顧みないやうな無関心さがあつた。或ひはそれを伊曾に、全く別の事にいつも気を取られてゐるといふ風にも見えた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
薬嫌いで医者がくれた薬さえ二度に一度は
秘密
(
ないしょ
)
で
棄
(
す
)
てたほどなのに、今の場合父の常用の消化薬をさえ手頼りにする気になった。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
端折
(
はしょ
)
りのしごきを解き
棄
(
す
)
て、
膝
(
ひざ
)
の上に抱かれたまま身をそらすようにして
仰向
(
あおむ
)
きに打倒れて、「みんな取って
頂戴
(
ちょうだい
)
、
足袋
(
たび
)
もよ。」
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そういい
棄
(
す
)
てると博士をはじめ、幹部連はさっさと
引揚
(
ひきあ
)
げてしまいましたが、そうなると、今度はかえって、あとの
騒
(
さわ
)
ぎが大変。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
このためにもちろん親を
棄
(
す
)
てずにいた罪はゆるされたのみか、のちに神にまつって、
蟻通明神
(
ありとおしのみょうじん
)
というのがそれだということになっている。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
物の貴き
所以
(
ゆえん
)
はこれを得るの手段難ければなり。
私
(
ひそか
)
に案ずるに、今の学者あるいはその難を
棄
(
す
)
てて易きにつくの弊あるに似たり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
このまま進めば、結局自分のすべてを与えて、一茎の日かげの花、パトロンと愛人との関係に、青春の日を
棄
(
す
)
てて行くのではあるまいか。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかしそういう時はまたそういう時で、とかく切り
棄
(
す
)
てにくいのであった。
嫉妬
(
しっと
)
は第三者が現われたときに限るのではなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
例之
(
たとえ
)
ば筆法を正すにも「
徳安
(
とくあん
)
さん、その点はこうお
打
(
うち
)
なさいまし」という。鉄三郎はよほど前に
小字
(
おさなな
)
を
棄
(
す
)
てて徳安と称していたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
夜泣きの刀、乾雲丸の取り戻し方を思いとどまってくれ……というお艶のことばは、さながら
弊履
(
へいり
)
を
棄
(
す
)
てよとすすめるに
等
(
ひと
)
しい口ぶりだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
踊
(
をど
)
つて
唄
(
うた
)
うて
渇
(
かつ
)
した
喉
(
のど
)
に
其處
(
そこ
)
に
瓜
(
うり
)
が
作
(
つく
)
つてあるのを
知
(
し
)
れば
竊
(
ひそか
)
に
瓜
(
うり
)
や
西瓜
(
すゐくわ
)
を
盗
(
ぬす
)
んで
路傍
(
みちばた
)
の
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
に
打
(
う
)
ち
割
(
わ
)
つた
皮
(
かは
)
を
投
(
な
)
げ
棄
(
す
)
てゝ
行
(
ゆ
)
くのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
私が今日の目的に就いて水車小屋の
主
(
あるじ
)
に語った後に、杖を
棄
(
す
)
て、ゼーロンを
曳
(
ひ
)
き出そうとすると彼は、その杖を
鞭
(
むち
)
にする要があるだろう——
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
赤い
襷
(
たすき
)
をかけた女工たちは、
甲斐甲斐
(
かいがい
)
しく脱ぎ
棄
(
す
)
てられた労働服を、ポカポカ湯気の立ち
罩
(
こ
)
めている
桶
(
おけ
)
の中へ突っ込んでいる。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
それは決してその詩人が赤まんまの花や何かを歌い
棄
(
す
)
てたからではなく、いわばそれを歌い棄てようと決意しているところに
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
騎馬隊の
烈
(
はげ
)
しい突撃を避けるため、李陵は車を
棄
(
す
)
てて、
山麓
(
さんろく
)
の疎林の中に戦闘の場所を移し入れた。林間からの猛射はすこぶる効を奏した。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それは貴方のせいで美しかったのでございます。それなのに貴方はとうとうわたくしを
無慙
(
むざん
)
にも
棄
(
す
)
てておしまいなさいました。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
この帽子は、当時、一番かぶるものが多く、したがって一番余計
棄
(
す
)
てられる帽子である。だから、漂浪者が多くかぶっている。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
己れ炊事を
親
(
みずか
)
らするの覚悟なくば
彼
(
か
)
の豪壮なる壮士の
輩
(
はい
)
のいかで
賤業
(
せんぎょう
)
を
諾
(
うべな
)
わん、私利私欲を
棄
(
す
)
ててこそ、
鬼神
(
きしん
)
をも服従せしむべきなりけれ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
なるべくおのれを
棄
(
す
)
てて
姑
(
しゅうと
)
に調和せんとするをば、さすがに母も知り、あまつさえそのある点において趣味をわれと同じゅうせるを感じて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それにしても、
轎夫
(
かごかき
)
もいなければ
伴
(
とも
)
の者もいない。まるで投げ
棄
(
す
)
ててでもあるように置いてあるのが不思議でならなかった。
棄轎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それを信仰の暮しに帰すことは誤りであろうか。迷信は
棄
(
す
)
てていい。だが迷信の奥深くに潜んでいるある神秘なものをも棄てていいだろうか。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
数寸ずつ切り
棄
(
す
)
てて、
𧋬
(
す
)
との結びめを新にし、疲れたる
綸𧋬
(
いとす
)
を用いず、言わば、一尾を釣る毎に、釣具を全く新にするなり。
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
先生はいきなり私たちの
真似
(
まね
)
をしてシャツを脱ぎ
棄
(
す
)
て、上半身裸になつてもう一度酒を飲みました。先生のその格好は古い壁画のやうでした。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
「食えませんけれど、釣れないよりは宜いと見えて持って来ます。しかし
彼奴
(
あいつ
)
は鶏が食っても死にますから、
肥溜
(
こえだめ
)
へ
棄
(
す
)
てるより外ありません」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
衆人の攻撃も
慮
(
おもんぱか
)
るところにあらず、美は簡単なりという古来の標準も
棄
(
す
)
てて顧みず、卓然として複雑的美を成したる蕪村の功は没すべからず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
少数のなまけ者共に有らゆる
贅沢
(
ぜいたく
)
をさせる為めに、自分の生活を美しくする一切のものを永久に見
棄
(
す
)
てなければならぬのか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「うち、もう学校は
止
(
や
)
めよ
思
(
おも
)
てんねん」いうて、うしろから
上衣
(
うわぎ
)
着せたげて、そのままそこに、脱ぎ
棄
(
す
)
てた着物たとみながらすわってました。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
主人夫婦を呼び
棄
(
す
)
てにして、少しでもその意地の悪い心に落ちないことがあると、
意張
(
いば
)
りたがるお客が家の者にがなりつくような権幕であった。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
かねて師匠から小刀を譲られて、今さら、今日に及び
生計
(
たずき
)
のためと申して、その家業の木彫りを
棄
(
す
)
てて牙彫りをやるというわけには参りません。
幕末維新懐古談:39 牙彫りを排し木彫りに固執したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
おおかた
銜
(
くわ
)
えた
楊枝
(
ようじ
)
を
棄
(
す
)
てて、
顔
(
かお
)
を
洗
(
あら
)
ったばかりなのであろう。まだ
右手
(
みぎて
)
に
提
(
さ
)
げた
手拭
(
てぬぐい
)
は、
重
(
おも
)
く
濡
(
ぬ
)
れたままになっていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
あはれなる
哉
(
かな
)
吾友
(
わがとも
)
よ、我のラサ府にありし時、その身につみの
及
(
およ
)
ばんを、知らぬこころゆ
吾
(
わが
)
ために、
尽
(
つく
)
せし君を
我
(
われ
)
いかに、
棄
(
す
)
てゝや安く
過
(
すご
)
すべき
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
棄
常用漢字
中学
部首:⽊
13画
“棄”を含む語句
打棄
放棄
自暴自棄
抛棄
棄置
自棄
聞棄
呼棄
焼棄
見棄
脱棄
投棄
破棄
揚棄
言棄
棄恩入無為
掛棄
切棄
棄賣
棄措
...