奴等やつら)” の例文
もともとナオミを妻にしたのも彼女をうんと美しい夫人にして、毎日方々へ連れ歩いて、世間の奴等やつらに何とかかとか云われて見たい。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……畜生ちくしゃう兩方りゃうはう奴等やつらめ!……うぬ! いぬねずみ鼷鼠はつかねずみ猫股ねこまた人間にんげん引掻ひっかいてころしをる! 一二三ひふうみいけん使つか駄法螺吹家だぼらふきめ! 破落戸ごろつき
日本一にっぽんいちの無法な奴等やつら、かた/″\殿様のおとぎなればと言つて、綾錦あやにしきよそおいをさせ、白足袋しろたびまで穿かせた上、犠牲いけにえに上げたとやら。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そりゃア闘うのはいい。だが、お前さんのやりかたがくだらなくはないか……結局は奴等やつらと心中するようなことになるんだ」
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
やき大勢おほぜいながら餘り目はしのきか奴等やつらだ兄と云ば某しが弟にちがひなし何故早く然樣さう云ないなどと無理むりばかり云中に長兵衞長八の兩人は足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鈍痴漢とんちんかんの、薄鈍うすのろ奴等やつらくすり絲瓜へちまるものか、馬鹿ばかな、輕擧かるはずみな!』ハヾトフと郵便局長いうびんきよくちやうとは、權幕けんまく辟易へきえきして戸口とぐちはう狼狽まご/\く。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほかのことならともかく、太夫たゆう急病きゅうびょうだッてのを、そのままにしといたんじゃ、世間せけん奴等やつらになんていわれるとおもうんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おれが何か云いさえすれば笑う。つまらん奴等やつらだ。貴様等これほど自分のわるい事を公けにわるかったと断言出来るか、出来ないから笑うんだろう。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此奴等こねやつられはぐつたこたりやしねえ、それにさうだにさわぎやがつて、五月繩うるせ奴等やつらつてるもんだ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
A 或程なるほどきみしかつたつて仕樣しやうがない。いまおれおほいにほか奴等やつらしかつてやるんだから、今日けふはマアきみをんなはなしでもしよう。はうならきみ專門せんもんだから。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
『……なアに、他の奴等やつらは、ありゃ医者じゃねえ、薬売だ、……とても、話せない……』なんて、エライ気焔きえんだ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だ東京の奴等やつらを言ったのサ、名利みょうり汲々きゅうきゅうとしているその醜態ざまは何だ! 馬鹿野郎! 乃公おれを見ろ! という心持サ」と上村もまた真面目で註解ちゅうかいを加えた。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
東京で暮して来た奴等やつらは、むだ使いしてだらしがないと言うし、それかと言って、あなたたちと同様にケチな暮し方をするともう、本物ほんものの貧乏人の、みじめな
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
なあに、あっしゃああんな鬼畜に等しい奴等やつらに、理窟を聞かせたってはじまらねえっていうんだけれど、いい年をして手荒な真似まねをする事もねえと我慢してやったのさ。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
……都の奴等やつらと来たら、全く軽佻浮薄けいちょうふはくだ。あのような惰弱だじゃくな逸楽に時を忘れて、外ならぬうぬが所業で、このやまとの国の尊厳をきずつそこねていることに気がつかぬのじゃ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
現在、陸上おかでは酒場のみやでも税関でも海員ふね奴等やつらが寄るとさわるとそのうわさばっかりで持切もちきってますぜ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
如何いかにもれは仕様のない奴等やつらだ、誰も彼も小さくなるなら小さくなり、横風おうふうならば横風でし、うも先方の人を見て自分の身を伸縮のびちぢみするような事では仕様しようがない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「君、奴等やつらの密猟も、あと二、三日だぜ。いまのうちに何とかしないと、生命いのちがあぶないぞ」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
いばったやつで、ロボめ、自分は手出しもせずに、仲間の奴等やつらに仕事をまかせているのです。
ひと使つかはふをもりやがらない、んだお老婆ばあさんはあんなのではかつたけれど、今度こんど奴等やつらたら一人ひとりとしてはなせるのはい、おきやうさんおまへ自家うち半次はんじさんをきか
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「女史からの電波に、殺人電気を載せるなんて、アカグマ国の奴等やつらは、人か鬼かですねえ」
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「豚どもの大砲や小銃がなんになるものですか。奴等やつらと一緒に地獄へでもうせろだ!」
風変りな決闘 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
直ぐ来て呉れねばどんなことになるも知れぬと云ふのだからよんどころない——実に梅、悪い奴共の寄合よりあひだ、警視庁へ掛合つて社会党の奴等やつら片端から牢へでもブチ込まんぢや安心がならない
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
無邪気むじゃきだったとも、言えますが、ぼくにしてみれば、彼が、あなた達、女子選手をいかにも、中性の化物らしく批評ひひょうし、「熊本や、内田の奴等やつらがなア」 と二言目には、あなた達が
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
『第一、電車の音や、乗合自動車の音だけでも奴等やつらにとっては大威嚇でしょう』
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「それや大丈夫。奴等やつら、まさか金ピカ自動車が二台も来ようとは知らぬものだから、まんまと思うつぼにはまりましたぜ。いまごろは空っぽのにせの棺が、焼場のかまどでクスクス燃えてることでしょうよ」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
奴等やつらも警戒して迂濶に出て来ないのだろう。」と、父は思った。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これ、待て待て、悪い奴等やつらだ!」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なんだ奴等やつらとハツタとにらむ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
氣障きざ奴等やつらの居ないとこ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ナオミは私から精養軒での話を聞くと、「まあ、失敬な! 何て云う物を知らない奴等やつらだろう!」と口汚くののしって一笑に附してしまいました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
以て來ぬか氣のきかぬ奴等やつらだナニ其所にある夫なら早く草鞋わらんぢとき何ぜ洗足せんそくをせぬのだと清兵衞はうれまぎれに女共をしかちらして彼の是のと世話せわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すずの鉱石の中に、酸化砒素ひそというやつが入っていますんで、日がな一日細かい鉱砂を吸っている奴等やつらは、砒素に中毒しているんです……しかし
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
鈍痴漢とんちんかんの、薄鈍うすのろ奴等やつらくすり糸瓜へちまもあるものか、馬鹿ばかな、軽挙かるはずみな!』ハバトフと郵便局長ゆうびんきょくちょうとは、この権幕けんまく辟易へきえきして戸口とぐちほう狼狽まごまごく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ベンヺ マーキューシオーどの、もうかへらう。あつくはある、カピューレット奴等やつら出歩であるいてもゐる、出會でっくはしたが最後さいご鬪爭けんくわをせねばなるまい。
わしさ屈腰かがみごしで、膝はだかって、つらを突出す。奴等やつら三方からかぶさりかかって、棒を突挿そうとしたと思わっせえまし。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「えゝ、なさけねえ奴等やつらだな」ぢいさんはかけかみてた。店先みせさき駄菓子だぐわしれた店臺みせだいをがた/\とうごかすものがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
生徒は小供こどもの上に、生意気で、規律を破らなくっては生徒の体面にかかわると思ってる奴等やつらだから、職員が幾人いくたりついて行ったって何の役に立つもんか。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「折角だがお任かせ出来ねえね。この向うきずは承知してもはた奴等やつらが承知出来ねえ。可哀相かわいそうと思うんなら早くあの小僧をおろしてやっておくんなさい。つらを見ても胸糞むなくそが悪いから」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
し例の奴等やつらに踏込まれた時に、うまく逃げられゝばいが、逃げられなければ揚板から床の下に這入て其処そこから逃出にげだそうと云う私の秘計で、今でも彼処あすこの家はうなって居ましょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わけがわからない。不潔だ! 卑劣だ。ばかな騒ぎを、離れて見ているうちに、激しい憤怒がいて来た。ゆるせないような気がして来た。もう、こんな奴等やつらとは、口もきくまいと思った。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『第一、電車の音や、乗合自動車の音だけでも奴等やつらにとつては大威嚇だいゐかくでせう』
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
なに其樣そんいたものりさうにもしないうまれるとすぐさまはしたもと貸赤子かしあかごされたのだなどゝ朋輩ほうばい奴等やつら惡口わるくちをいふが、もしかすると左樣さうかもれない、それなられは乞食こじき
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……まあ、あれは大納言の決めた人達なんで、心配でないこともないんだが、……しかし、父上のあの高邁こうまいな「人格」はたとえどんな腹黒い奴等やつらでも、たちどころに腹心の家来にしてしまうよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
あのKの話———事に依ったら、あれは会社の人の悪い奴等やつらが、己をからかうのじゃなかろうか? ほんとうに、そうであってくれればいいが。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こんな不都合ふつごうきわま汽車きしゃいとか、みな盗人ぬすびとのような奴等やつらばかりだとか、乗馬じょうばけば一にちに百ヴェルスタもばせて、そのうえ愉快ゆかいかんじられるとか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「なあに、さうだもかうだもるもんか、えゝから、さうだ奴等やつらばしてやれ」しばらだまつて先刻さつきぢいさんは小柄こがら身體からだかためてまた呶鳴どなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
サン はて、飼犬いぬたゞけでもむかうてゆくわい。モンタギューの奴等やつらりゃ、をとこでもをんなでもかまうたことァない。
色気も娑婆気しゃばけも沢山な奴等やつらが、たかが暑いくらいで、そんなざまをするのではありません。実はまるで衣類がない。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けちな奴等やつらだ。自分で自分のした事が云えないくらいなら、てんでしないがいい。証拠しょうこさえ挙がらなければ、しらを切るつもりで図太く構えていやがる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)