ほう)” の例文
すそ海草みるめのいかゞはしき乞食こじきさへかどにはたず行過ゆきすぎるぞかし、容貌きりようよき女太夫をんなだゆうかさにかくれぬゆかしのほうせながら、喉自慢のどじまん腕自慢うでじまん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
皆樣みなさまは、其樣そんなにあの可愛かあいがつてくださつたのですか。わたくしなん御禮おれい言葉ことばもございません。』とゆきのやうなるほう微※えくぼなみたゝえて
申しあげたるや己れ云はざるに於てはかうするぞとほう爪捻つめりしり爪捻つめり種々いろ/\にして責問せめとへども一向に云はざるゆゑ久兵衞扨は此小僧めが車坂のお民の一件を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その時に限らず、母親の膝を枕に、わたしの父親の話——御国みくにめに戦死したえらい父親の話を聞いてると、いつもわたしほうに冷たいものゝ落ちるのがれいであつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そっと客間の障子をひらき中へり、十二畳一杯に釣ってある蚊帳の釣手つりてを切り払い、彼方あなたへはねのけ、グウ/\とばかり高鼾たかいびき前後あとさきも知らずている源次郎のほうあたりを
たゞぼく心配しんぱいでならぬは家内かない——だ。ことほうべにしたようになつて呼吸こきうせわしくなる。ぼくこれるのがじつつらい。先生せんせい家内かないおなやまいのものが挑動いらだとき呼吸こきうきいことがあるかネ。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
かほをあげしときほうなみだあとはみゆれどもさびしげのみをさへせて、わたし其樣そのやう貧乏人びんぼうにんむすめ氣違きちがひはおやゆづりでおりふしおこるのでござります
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『イエ、このはよくねむりましたが、わたくしふねれませんので。』とこたふ。さもありぬべし、ゆきあざむほうへん幾分いくぶん蒼色あをみびたるは、たしかに睡眠ねむりらぬことしようしてる。
右内得たりと上に乗し掛りて百姓のほう抜刀ぬきみを差附けて
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
顔をあげし時はほうに涙のあとはみゆれども淋しげの笑みをさへ寄せて、私はその様な貧乏人の娘、気違ひは親ゆづりで折ふし起るのでござります
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何事なにごと天命てんめいです、しか吾等われらこの急難きふなんのぞんでも、わが日本につぽんほまれきづゝけなかつたのがせめてもの滿足まんぞくです。』とかたると、夫人ふじんかすかにうち點頭うなづき、俯伏ひれふして愛兒あいじくれないなるほう最後さいご接吻せつぷんあた
くるわことばをまちにいふまでりとははづかしからずおもへるもあはれなり、としはやう/\かぞへの十四、人形にんげういてほうずりするこゝろ御華族ごくわぞくのお姫樣ひめさまとてかはりなけれど、修身しうしん講義こうぎ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
明けの別れに夢をのせ行く車のさびしさよ、帽子まぶかに人目をいと方様かたさまもあり、手拭てぬぐひとつてほうかふり、彼女あれが別れに名残の一撃ひとうち、いたさ身にしみて思ひ出すほど嬉しく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほうのあたりのしはにもしるく、これくだされ、なんではいか、このまああかことさしつけられて、今更いまさらながらまご/\とうれしく、をさしいだすもいさゝかはづかしければ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人形抱いてほうずりする心は御華族のお姫様とて変りなけれど、修身の講義、家政学のいくたても学びしは学校にてばかり、誠あけくれ耳にりしは好いた好かぬの客の風説うはさ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
隣の寺の観音様御手おんてを膝に柔和の御相これもめるがごとく、若いさかりの熱といふ物にあはれみ給へば、此処なる冷やかのお縫も笑くぼをほうにうかべて世に立つ事はならぬか
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
となりてら觀音樣くわんをんさま御手おんてひざ柔和にうわの御さうこれもめるがごとく、わかいさかりのねつといふものにあはれみたまへば、此處こゝなるひややかのおぬひくぼをほうにうかべてことはならぬか
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
子供こどもくせにませたやうでをかしい、おまへつぽど剽輕ひやうきんものだね、とて美登利みどり正太しようたほうをつゝいて、其眞面目そのまじめがほはとわらひこけるに、おいらだつても最少もすこてば大人おとなになるのだ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母が心の何方いづかたに走れりとも知らで、乳にきれば乳房に顔を寄せたるまゝ思ふ事なく寐入ねいりちごの、ほう薄絹うすぎぬべにさしたるやうにて、何事を語らんとや、折々をり/\ぐる口元の愛らしさ
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あねさま唐茄子とうなすほうかふり、吉原よしはらかふりをするもり、且那だんなさまあさよりお留守るすにて、お指圖さしづたまおくさまのふうれば、小褄こづまかた友仙ゆふぜん長襦袢ながじゆばんしたながく、あか鼻緒はなを麻裏あさうらめして、あれよ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お前は余つぽど剽軽ひやうきんものだね、とて美登利は正太のほうをつついて、その真面目がほはと笑ひこけるに、おいらだつても最少もすこし経ては大人になるのだ、蒲田屋かばたやの旦那のやうに角袖外套かくそでぐわいとうか何か着てね
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くちにはへどむづかしかるべしとは十指じつしのさすところあはれや一日ひとひばかりのほどせもせたり片靨かたゑくぼあいらしかりしほうにくいたくちてしろきおもてはいとゞとほほどりかかる幾筋いくすぢ黒髪くろかみみどりもとみどりながらあぶらけもなきいた/\しさよわれならぬひとるとてもたれかは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)