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透
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す
ふりがな文庫
“
透
(
す
)” の例文
和尚
(
おしょう
)
さんのお
部屋
(
へや
)
があんまり
静
(
しず
)
かなので、
小僧
(
こぞう
)
さんたちは、どうしたのかと
思
(
おも
)
って、そっと
障子
(
しょうじ
)
の
透
(
す
)
き
間
(
ま
)
から中をのぞいてみました。
文福茶がま
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
逆光線になったM子さんの姿は耳だけ
真紅
(
しんく
)
に
透
(
す
)
いて見えます。僕は何か義務に近いものを感じ、M子さんの隣に立つことにしました。
手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
投げ込んで行くところは
浚
(
さら
)
われても仕方がない、何でもおちゃっぴいになって、朝比奈をギュウと言わせてやりさえすれば胸が
透
(
す
)
くわ
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この人はどんな朗らかに
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
るような空の下に立っても、四方から閉じ込められているような気がして苦しかったのだそうである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ほッと、息をついて、あたりの闇を
透
(
す
)
かしてみると、ここはいつかの晩、綱倉の窓からお
米
(
よね
)
の
啜
(
すす
)
り泣く声をきいた記憶のある掘割岸。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
皮膚が
透
(
す
)
けるようなぐあいで、なにかの花びらのように柔らかくしっとりと湿っていて、
撫
(
な
)
でると指へ吸いつくような感じである。
寒橋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
青く血管の
透
(
す
)
けるような白い頬で、女は、でも、固く目を閉ざしていた。ふいに、涙がその目じりからあふれた。頬に光の筋を引いた。
暑くない夏
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
町幅一杯
(
まちはばいっぱい
)
ともいうべき
竜宮城
(
りゅうぐうじょう
)
に
擬
(
ぎ
)
したる
大燈籠
(
おおどうろう
)
の中に
幾
(
いく
)
十の火を点ぜるものなど、火光美しく
透
(
す
)
きて
殊
(
こと
)
に目ざましく
鮮
(
あざ
)
やかなりし。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
螢
(
ほたる
)
の
衝
(
つ
)
と
其
(
そ
)
の
裳
(
もすそ
)
に
忍
(
しの
)
び
褄
(
つま
)
に
入
(
い
)
りて、
上
(
うへ
)
の
薄衣
(
うすぎぬ
)
と、
長襦袢
(
ながじゆばん
)
の
間
(
あひだ
)
を
照
(
てら
)
して、
模樣
(
もやう
)
の
花
(
はな
)
に、
葉
(
は
)
に、
莖
(
くき
)
に、
裏
(
うら
)
透
(
す
)
きてすら/\と
移
(
うつ
)
るにこそあれ。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
譬
(
たと
)
えていえば、玲瓏たる富士の峰が紫に
透
(
す
)
いて見えるような型の、貴女をといっている。これはだいぶ歌集『踏絵』に魅せられていた。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
赤緒
(
あかお
)
の
下駄
(
げた
)
と云えば、
馬糞
(
ばふん
)
のようにチビた
奴
(
やつ
)
をはいている。だが、
雑巾
(
ぞうきん
)
をよくあててあるらしく古びた割合に木目が
透
(
す
)
きとおっていた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
また、
街
(
まち
)
の
並木
(
なみき
)
の
葉
(
は
)
は、たいてい
落
(
お
)
ちつくしてしまって、
黒
(
くろ
)
い
小枝
(
こえだ
)
の
先
(
さき
)
が
青
(
あお
)
い
空
(
そら
)
の
下
(
した
)
に
細
(
こま
)
かく、
網
(
あみ
)
の
目
(
め
)
のように
透
(
す
)
いて
見
(
み
)
えていました。
白い影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
が、これがもしスパイの余得であったなら同志を欺くためにもこういう不当所得の
看
(
み
)
え
透
(
す
)
かされるような
真似
(
まね
)
は決して
做
(
し
)
なかったろう。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
小さなボヘミヤンは、罎を地べたの上に置いて、低い戸にぶらさがるようにして中を
覗
(
のぞ
)
き込んだ。彼の眼は闇を
透
(
す
)
かそうと努力をした。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
硝子箱
(
がらすばこ
)
へ物を入れたように中の品物が見え
透
(
す
)
かねばならん。しかるに我邦の文章とか文学と言われるものは鉄板を
累
(
かさ
)
ね
張
(
ば
)
りにしてある。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
しかし君、いくら窮境に陥つたからと言つて、金を
目的
(
めあて
)
に結婚する気に成るなんて——あんまり根性が見え
透
(
す
)
いて
浅猿
(
あさま
)
しいぢやないか。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
袖や
裾
(
すそ
)
のあたりが、
恰度
(
ちょうど
)
蝉
(
せみ
)
の
衣
(
ころも
)
のように、雪明りに
透
(
す
)
いて見えて、それを通して、庭の
梧桐
(
あおぎり
)
や
金目
(
かなめ
)
などの木立がボーッと見えるのである
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
のみならず
臍繰金
(
へそくりがね
)
を高利に廻して、
養蚕
(
ようさん
)
や米の収穫後になると
透
(
す
)
かさずに自分で出かけて、ピシピシと取立てたりするようになったので
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
さては、と思って
透
(
す
)
かして見ると、
酔眼朦朧
(
すいがんもうろう
)
たるかれの瞳に写ったのは、
泥濘
(
ぬかるみ
)
を飛び越えて身軽に逃げて行く女の後姿であった。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「うん、なんか附いてはいるが——」若い男は注射器を、明り窓の方に
透
(
す
)
かして、その茶色の
汚点
(
おてん
)
に眺め入った。「電灯は
点
(
つ
)
きませんか」
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こんな
透
(
す
)
き
徹
(
とほ
)
るやうな感じの女が、どう間違つて伊丹屋の駒次郎などの思ひ者になつて居たことか、平次にはそれが不思議でなりません。
銭形平次捕物控:097 許婚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「海は
凪
(
な
)
いでいました」と、月が言いました。「水は、わたしが
帆走
(
ほばし
)
っていた
澄
(
す
)
みきった空気のように、
透
(
す
)
きとおっていました。 ...
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
呼び出された
女童
(
めのわらわ
)
は、雨の降り込む
簀子
(
すのこ
)
の板敷にしょんぼり立っている男の姿を
闇
(
やみ
)
に
透
(
す
)
かしながら、さも驚いたらしく云った。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あの高間医院といふ字を裏側から
透
(
す
)
かし出した曇り硝子の二枚戸が片寄せになつて、そこに長方形のかつきりした戸口があり
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
鳶尾草
(
いちはつ
)
の花、
清淨
(
しやうじやう
)
無垢
(
むく
)
の
腕
(
かひな
)
の上に
透
(
す
)
いて見える
脈管
(
みやくくわん
)
の薄い水色、
肌身
(
はだみ
)
の
微笑
(
ほゝゑみ
)
、新しい
大空
(
おほぞら
)
の清らかさ、
朝空
(
あさぞら
)
のふと
映
(
うつ
)
つた
細流
(
いさゝがは
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
背は並より高いほう、目の大きい眉のこい
三角形
(
さんかくがた
)
の顔であった。白いうなじが
透
(
す
)
きとおるようにきれいで、それが自分にはただかわいかった。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
岩の
透
(
す
)
きまに
獅噛
(
しが
)
みついた、サクシフラガ Saxifraga の、星のような花をまたいで、十五分も登ると、立派な小屋の裏手に出た。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
そのなかの「壁に來て草かげろふはすがり居り
透
(
す
)
きとほりたる
羽
(
はね
)
のかなしさ」といふ一首に私は云ひやうもなく感動した。
(芥川竜之介の書翰に就いて)
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
聞いてゐると、何だか、それは名前ぢやなくつて、景気好く釘でも叩き込む音のやうな気がして、胸の
透
(
す
)
く思ひがしたぜ。
鏡地獄
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
肌
(
はだ
)
は白魚のように
透
(
す
)
きとおり、
黒瞳
(
こくとう
)
は夢見るように大きく見開かれ、額にかかる
捲毛
(
まきげ
)
は
鳩
(
はと
)
の胸毛のように柔らかであった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
降り立った二人の前に、広い
石畳
(
いしだたみ
)
と、
御影石
(
みかげいし
)
の門柱と、締め切った
透
(
す
)
かし模様の鉄扉と、打続くコンクリート
塀
(
べい
)
があった。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
外へ出て
其処
(
そこ
)
らを見廻しながら立っていると、まだ夜の気の
彷徨
(
さまよ
)
うている谷の向う河岸や此方の林の中で、
青蜩
(
ひぐらし
)
が
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
るような声で鳴き初めた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
我は既に魂等全く
掩
(
おほ
)
ひ
塞
(
ふさ
)
がれ玻璃の中なる
藁屑
(
わらくづ
)
の如く見え
透
(
す
)
ける處にゐたり(これを詩となすだに恐ろし) 一〇—一二
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
お声はごく
透
(
す
)
きとおって重味のある、威厳のあるお声である。ですから自然に敬礼をせなければならんようになるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「人の体も形が形として面白いのではありません。霊の鏡です。形の上に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
って見える内の
焔
(
ほのお
)
が面白いのです。」
花子
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
おかしいぞと思って、内を
透
(
す
)
かすと、男の
隻頬
(
かたほお
)
が見えた、それは父親の顔であった、奴さんの
眼前
(
めさき
)
はまた暗んだのさ
雨夜草紙
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
おもく
落
(
お
)
ちた
油
(
あぶら
)
を
透
(
す
)
かして
見
(
み
)
たが、さてどうやらそれがうまく
運
(
はこ
)
ぶと、これも
足
(
あし
)
の
先
(
さき
)
で
探
(
さぐ
)
り
出
(
だ
)
した
火口
(
ほくち
)
を
取
(
と
)
って、やっとの
思
(
おも
)
いで
行燈
(
あんどん
)
に
灯
(
ひ
)
をいれた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
そして窓明りを
透
(
す
)
かしてその米の
表面
(
おもて
)
を眺めた。平らにならされた面の上には「
寿
(
ことぶき
)
」という字が指で書かれてあった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
透
(
す
)
きとほるやうに
蒼白
(
あをじろ
)
きがいたましく
見
(
み
)
えて、
折柄
(
をりから
)
世話
(
せわ
)
やきに
來
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
たりし
差配
(
さはい
)
が
心
(
こゝろ
)
に、
此人
(
これ
)
を
先刻
(
さき
)
のそゝくさ
男
(
をとこ
)
が
妻
(
つま
)
とも
妹
(
いもと
)
とも
受
(
うけ
)
とられぬと
思
(
おも
)
ひぬ。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
裏の大きな
垂木
(
たるき
)
は落ち、壁は崩れて本堂の中は
透
(
す
)
いて見え、雨は用捨なく天井から板敷の上へと落ちた。仏具なども、金目のものはもう何もなかつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
今晩は私少々伺いたいことがあるんですから外出はお断りですよ、と
透
(
す
)
かさず極めつけますと、何だ? 何だい? とその慌て方ってありませんのよ。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
日の暮れ方にお増は独りで、
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
るような湯のなかに体を
涵
(
ひた
)
して、見知らぬ
温泉場
(
ゆば
)
にでも隠れているような安易さを感じながら、うっとりしていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
緑色に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
った小天地、白い帆かけ舟が一つ中にともした
生命
(
いのち
)
の火のつゞく限りいつまでもと其
表
(
おもて
)
を
駛
(
はし
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
また私は、お前にそれを心のありったけ話し尽したならば、私の此の胸も
透
(
す
)
くだろうと思う、そうでもしなければ私は本当に気でも
狂
(
ふ
)
れるかも知れない。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「ああ、自分は馬鹿であつた! 豐太閤や伊藤公の
透
(
す
)
き、
乃
(
すなは
)
ち、拔けてゐた缺點をいつも指摘しながら、自分も亦いつのまにかその缺陷があつたのだ。」
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
相手の欠点、美に見える! 見え
透
(
す
)
いた手練手管さえ、好もしいものに映って来る。諫められて聞かず説かれて服さず、かえってその人を怨みさえする。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
水飴の中へ毒などは入れられません、
透
(
す
)
いて見えます
極製
(
ごくせい
)
でございますから、へえ、なか/\何う致しまして、
其様
(
そん
)
なことは……御免遊ばして下さいまし
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わが
身
(
み
)
はちやうど
蝗虫
(
いなご
)
のやうだ、こゝよ、かしこよと
跳回
(
はねまは
)
る、
唸
(
うな
)
つて
歩
(
ある
)
く、また
或時
(
あるとき
)
は
色入
(
いろいり
)
の
翅
(
はね
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
小
(
ちひ
)
さな
頸
(
くび
)
の
透
(
す
)
きとほつて、
空
(
から
)
な
処
(
ところ
)
をみせもする。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
「人の体も形が形として面白いのではない。霊の鏡です。形の上に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
って見える内の
焔
(
ほのお
)
が面白いのです。」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
といって、それを幸いに、その嘘を
真実
(
ほんとう
)
にしようなぞという気はもうとう起らなかった。彼にはあまりにも自己本位な兄の性根がありありと見え
透
(
す
)
いていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
透
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“透”を含む語句
見透
透徹
透明
透垣
透綾
滲透
透彫
透過
透間
透通
透見
透視
浸透
透影
透切
射透
透入
無色透明
真透
明透
...