せつ)” の例文
勘次かんじ菜種油なたねあぶらのやうに櫟林くぬぎばやしあひせつしつゝ村落むら西端せいたん僻在へきざいして親子おやこにんたゞ凝結ぎようけつしたやうな状態じやうたいたもつて落付おちついるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
非局部性ひきよくぶせい大地震だいぢしんおこことのある海洋底かいようていせつした海岸地方かいがんちほうは、大搖おほゆれの地震ぢしん見舞みまはれた場合ばあひ津浪つなみについての注意ちゆういようする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
把手とつてでもあるかと、そろ/\つてると、把手とつてには相違さうゐないが、それは土瓶どびんのツルカケのと、それにせつして土瓶どびんくち
来客にせつしたあとしばらくは、独坐どくざふけるが代助のくせであつた。ことに今日けふの様に調子の狂ふ時は、格別その必要を感じた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
〔評〕南洲人にせつして、みだりまじへず、人之をはゞかる。然れども其の人を知るに及んでは、則ち心をかたむけて之をたすく。其人に非ざれば則ち終身しゆうしんはず。
吉野川よしのがはそばにある象山きさやまやまのま、すなはちそらせつしてゐるところのこずゑ見上みあげると、そこには、ひどくたくさんあつまつていてゐるとりこゑ、それがきこえる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さうこたへて玄関げんくわんにあがると、機嫌きげんのいいときにするいつものくせで、青木さんは小がらおくさんのからだかるせながら、そのくちびるにみじかせつぷんをあたへた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
宝塔ほうたふごときにせつしたときは、邪気じやきある凡夫ぼんぷは、手足てあしもすくんでそのまゝにしやがんだ石猿いしざるらうかとした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんだか、へだて或物あるものてつして、直接ぢかわたしせつしてやうとする様子やうすが、歴々あり/\素振そぶりえる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
 地衣帶こけたい草本帶そうほんたい上部じようぶせつしてをり、兩帶りようたい區別くべつははっきりとしませんが、ともかく一萬尺いちまんじやくものたかさのところでは、きびしいさむさと、はげしいかぜとでほとんどくさえることが出來でき
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
つののあるもの、いもの、おおきなもの、ちいさなもの、ねむっているもの、あばれているもの……。はじめてそんな無気味ぶきみ光景ありさませつしたわたくしは、おぼえずびっくりしてけてさけびました。——
そらさはやかれて、とほ木立こだちそらせつするあたり見渡みわたされるすゞしい日和ひより
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しなかうしてつめたいかばねつてからもあしそこ棺桶くわんをけいたまいへだてただけでさら永久えいきうつちあひせつしてるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これに反して、佐川のむすめの方は、つい先達せんだつて、写真を手にしたばかりであるのに、実物にせつしても、丸で聯想がうかばなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かくしてわがくに大平洋側たいへいようがは沿岸えんがん非局部性ひきよくぶせい大地震だいぢしんおこ海洋底かいようていせつしてゐるわけであるが、しかしながら其海岸線そのかいがんせん全部ぜんぶ津浪つなみ襲來しゆうらい暴露ばくろされてゐるわけではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その後もなく、ちやうど三うらさき宿屋やどや滯在たいざい中に訃音にせつした時、わたしはまだあまりにまざまざしいそのをり印象いんせうおもひ出させられるだけに、哀悼あいとう持も一そう痛切つうせつだつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わたし小家こいへ餘寒よかんいま相去あひさまをさずだつたが——おたく來客らいきやくがくびすをせつしておびたゞしい。玄關げんくわんで、わたしたち友達ともだち留守るす使つかふばかりにもるからと、おにいりの煎茶茶碗せんちやぢやわんひとつ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうしてわづかあひせつした兩性りやうせいこゝろからあひときあひたがひすべてにたいして恐怖きようふねんいだきはじめるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しば/\海底かいてい大地震だいぢしんおこ場所ばしよせつし、そこにむかつておほきく漏斗形じようごがたひらいた地形ちけい港灣こうわんがそれにあたるわけであるが、これにいで多少たしよう注意ちゆういはらふべきは、遠淺とほあさ海岸かいがんである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かれうしてあたらしいところつて、あたらしいものせつするのが、用向ようむき成否せいひかゝはらず、今迄いままでかずにぎたきた世界せかい斷片だんぺんあたまやうがしてなんとなく愉快ゆくわいであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さびしく物凄ものすごさに、はじめて湖神こしん片影へんえいせつしたおもひがした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけはじめてその視線しせんせつしたときは、暗中あんちゆう卒然そつぜんとして白刄はくじんおもひがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)