後悔こうくわい)” の例文
が、うちもんをはひらないまへに、かれはからつぽになつた財布さいふなかつま視線しせんおもうかべながら、その出來心できごころすこ後悔こうくわいしかけてゐた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
土瓶形どびんがた香爐形かうろがた洋人やうじん百圓宛ひやくえんづゝつたらうか。おそらく今頃いまごろは、あのをとこに、十箇とを二錢にせんりんつたはうかつたと、後悔こうくわいをしてるであらうよ。
立去りつゝやれ/\危き目にあふものかな何さま親父殿や兄貴あにきは夜道は浮雲あぶなき故朝立にせよと言れしは今こそ思ひ當りたれと後悔こうくわいなして急ぎけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かの鵞鳥がてうこゑ婦人ふじんくちあんぐり、眞赤まつかになつて白黒しろくろにしてる、さだめて先刻せんこく失言しつげんをば後悔こうくわいしてるのであらう。
わたし仕樣しやうわるかつたに相違無さうゐな旦那樣だんなさまのおこゝろ何時いつとはしにぐれさせましたはわたしこゝろかたちがつたゆゑいまではつく/″\後悔こうくわいなみだがこぼれまする。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それが大當て違ひ。あの中間の半次の野郎が、前非を後悔こうくわいして、自分で自分の胸を突いて死にましたよ」
おつぎがときはおしな身體からだけてた。おしな自分じぶんあとではママればよかつたのにと後悔こうくわいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
(おみちびきで來合きあはせたくすりはいでは、病人びやうにん心許こゝろもとない。おいたゞきなされぬと、後悔こうくわいをされうが。)
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宛然ゑんぜん僕にその硯屏を買ふ義務でもありさうな口吻こうふんである。しかし御意ぎよい通りに買つたことをいまだに後悔こうくわいしてゐないのは室生のためにも僕のためにもかく欣懐きんくわいといふほかはない。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今になつて、私は、堅實にしてゐればよかつたと思ふ——その氣持は神樣が御存じだ! あなたがあやまちに誘ひ込まれた時には、後悔こうくわいといふことをお恐れなさい。後悔は人生の毒ですよ。
自分は何故なぜあの時あのやうな心にもない意見をして長吉ちやうきちの望みをさまたげたのかと後悔こうくわいの念にめられた。蘿月らげつはもう一度思ふともなく、女に迷つて親のいへ追出おひだされた若い時分じぶんの事を囘想くわいさうした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
家督かとくとし近村よりおやすといふよめもら親子おやこ夫婦のなかもよくいとむつまじくかせぎけり斯てあに作藏は勘當の身と成しを後悔こうくわいをもせず江戸へ出で少しの知己しるべ便たよりて奉公の口を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それに自分じぶんでも可成かな後悔こうくわいしかけてゐる矢先やさきだつたのが、反撥的はんぱつてきに、をつと氣持きもちをあまのじやくにした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
もつともさねそりや、それだがはら時分じぶんにくやつだとおもつても後悔こうくわいするときいともママひないしね
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何故なぜ紀念塔きねんたふ建立けんりつをはつたとき素直すなほもとみちかへらなかつたらうと、今更いまさら後悔こうくわいえぬのである。
當人の娘も後悔こうくわいしたが、此方から追ん出ると、注ぎ込んだ千兩以上の金は、一文も戻らないことになる、——さて、此んな有樣で、夫婦もしうとよめも、いがみ合ひになつて居るとしたら
これまで歩きぬいた身の疲労と苦痛とを長吉ちやうきちつひ後悔こうくわいしなかつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いたしませぬ勘藏かんざう乳母ばあやながあひだこゝろづかひさぞかしとどくわたしこゝろいまもいふとほはれてみればまよひは雲霧くもきりこれまでのすこしもなしかならかなら心配しんぱいしてくださるなよと流石さすがこゝろよわればにや後悔こうくわいなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぶんでは二三ねんはまだ野田のだはうしであつたと後悔こうくわいねんくこともあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
締殺しめころせしだんもつと重罪ぢうざいなり然ながら後悔こうくわい致し自訴じそに及びし段神妙しんめうたり其始末しまつは何故何樣の所業しよげふに及びしや仔細しさい有る事ならん眞直まつすぐに申立よと有ければ久八かうべたれ私し事はからずも千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いま吾等われらは、重大ぢゆうだい使命しめいびながら、何時いつ大陸たいりくくといふ目的あてく、此儘このまゝ空中くうちう漂蕩へうたうしてつて、其間そのあひだむなしく豫定よてい期日きじつ經※けいくわしてしまつたことならば、後悔こうくわいほぞむともおよぶまい。
平次もこの冒險に八五郎を驅り出したことを後悔こうくわいして居る樣子です。
だれだとおも長吉ちようきちなまふざけた眞似まねをして後悔こうくわいするなと頬骨ほうぼねうち、あつと魂消たまげ逃入にげいゑりがみを、つかんで引出ひきだ横町よこてうの一むれ、それ三五らうをたゝきころせ、正太しようた引出ひきだしてやつて仕舞しまへ、弱虫よはむしにげるな
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うれしいとはおもひもせでよしなき義理ぎりだてにこゝろぐるしくよしさまのおあとふてとおもひしはいくたびかさりとてはいのちふたつあるかのやうに輕々かる/″\しい思案しあんなりしと後悔こうくわいしてればいままでのこと口惜くちをしくこれからの大切たいせつになりました阿房あほうらしいんだひとへのみさをだてなになることでもなきを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
抱持はうぢ不十分ふじふぶん甲斐かひなきうらめしくなりててたしとおもひしは咋日きのふ今日けふならず我々われ/\二人ふたりくとかば流石さすが運平うんぺい邪慳じやけんつのれるこゝろになるはぢやうなりおやとてもとほ一徹いつてつこゝろやはらぎらば兩家りやうけ幸福かうふくこのうへやある我々われ/\二人ふたりにありては如何いか千辛萬苦せんしんばんくするとも運平うんぺい後悔こうくわいねんまじくしてや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)