-
トップ
>
-
囘想
殊に自分が過去の経歴を
囘想すれば、
蘿月は
長吉の心の
中は問はずとも底の底まで
明かに
推察される。
「へーえ、役者になりたい。」
訝る
間もなく
蘿月は七ツ八ツの
頃によく
三味線を
弄物にした
長吉の
生立ちを
囘想した。「
当人がたつてと望むなら
仕方のない話だが………困つたものだ。」
自分は
何故あの時あのやうな心にもない意見をして
長吉の望みを
妨げたのかと
後悔の念に
迫められた。
蘿月はもう一度思ふともなく、女に迷つて親の
家を
追出された若い
時分の事を
囘想した。