引込ひつこ)” の例文
いへ小路せうぢ引込ひつこんで、とほりのかどに「蒲燒かばやき」といた行燈あんどうばかりあり。はややつがむやみと飛込とびこむと仕立屋したてやなりしぞ不思議ふしぎなる。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
牧師は慌ててステツキ引込ひつこめた。ステツキといふのは、さる富豪ものもち寡婦ごけさんが贈つて来たもので、匂ひの高い木に金金具きんかなぐが贅沢に打ちつけてあつた。
かれ夏休なつやすまへから、すこ閑靜かんせい町外まちはづれへうつつて勉強べんきやうするつもりだとかつて、わざ/\この不便ふべん村同樣むらどうやう田舍ゐなか引込ひつこんだのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところ仕合しあはせにもミハイル、アウエリヤヌヰチのはうが、此度こんど宿やど引込ひつこんでゐるのが、とうとう退屈たいくつになつてて、中食後ちゆうじきごには散歩さんぽにと出掛でかけてつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
Aの字形じがたに間口を引込ひつこめて建てた大きな家をヌエは指さして、あの妙な恰好かつかふの家の理由を知つて居るかと問ふた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「悪魔……。お前は悪魔だな。何しに出て来たんだ。引込ひつこめ。打殺すぞ。」
悪魔の宝 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
それはたゞひとつの下顎骨かがくこつでありますが、このほねあご内側うちがは引込ひつこみ、今日こんにち人間にんげんとはよほどちがつてゐますけれども、類人猿るいじんえんとはまつた別種べつしゆであり、もはや人間にんげん仲間なかまであることはあきらかであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
引込ひつこませる、とみづのでばなとふのでも、おくみはさすがに武家ぶけ女房にようばう中間ちうげんはだいたものを無理むりようとはしなかつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「厭になるよ。こんなに身代が肥つて来ちや、今度の邸が出来上つたからつて、おいらの身分として今更あんな土地ところにも引込ひつこめなからうしさ。」
しか我々われ/\隨分酷ずゐぶんひど田舍ゐなか引込ひつこんだものさ、殘念ざんねんなのは、這麼處こんなところ往生わうじやうをするのかとおもふと、あゝ……。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いなその二三にしろすゝんで實行じつかうにかゝると、かへつてそのためつひやす時間じかんはうをしくなつてて、ついまた引込ひつこめて、じつとしてゐるうちに日曜にちえう何時いつれて仕舞しまふのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
窓からす薄暗いあかりの中で厭な姿が二つの大きな鏡へ映る。「大将、だいぶ弱つて居るぢや無いか」と僕の心の中の道化役の一つがひよつこりと現れて一言ひとことせりふを投げたきり引込ひつこんで仕舞しまふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
著述家や学者のやうにいつも書斎にばかり引込ひつこんでゐる人達が、女房かないに好かれないのは大抵かうした理由わけによるものである。
引込ひつこませる、とみづ出花でばなふのでもおきみはさすがに武家ぶけ女房にようばう仲間ちうげんはだいたものを無理むりようとはしなかつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
んなときに六でふいてゐれば、あさからでも引込ひつこ場所ばしよがあるのにとおもふと、宗助そうすけ小六ころくに六でふてがつたことが、間接かんせつ御米およね避難場ひなんばげたとおな結果けつくわおちいるので
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
のちかれすこしも外出ぐわいしゆつせず、宿やどばか引込ひつこんでゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
で、をとこさうとして、引込ひつこめた。——をんなくちで、風呂敷ふろしき桔梗色ききやういろなのをいたから。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
突然いきなりどんつくの諸膚もろはだいだいきほひで、引込ひつこんだとおもふと、ひげがうめかた面當つらあてなり、うでしごきに機關ぜんまいけて、こゝ先途せんど熱湯ねつたうむ、揉込もみこむ、三助さんすけ意氣いき湯煙ゆげむりてて
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さま/″\のをんな引込ひつこむのをとしたが、當春たうしゆん天氣てんきうらゝかに、もゝはなのとろりと咲亂さきみだれた、あたゝかやなぎなかを、川上かはかみほそステツキ散策さんさくしたとき上流じやうりうかたよりやなぎごとく、ながれなびいて
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
如何いかゞですか、られはしますまい。が、蚊帳かやへはくに引込ひつこみました。……おたくは?」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一度いちど、ぶらりとした風呂敷ふろしきを、そでした引込ひつこめて、むねいて、むかうをく。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども言出いひだしたことは、いきほひだけに誰一人たれいちにん深切しんせつづくにもあへめやうとするものはく、……同勢どうぜいで、ぞろ/\と温泉宿をんせんやどかへ途中とちゆうなはて片傍かたわき引込ひつこんだ、もりなかの、とあるほこら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちひさき潛門くゞりもんなか引込ひつこんで、利口りこうさうなをぱつちりと、蒋生しやうせいじつ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「へーい。」とやつこが、つゝんだつゝみを、ひよいとをんなわたしながら、引込ひつこめず、背後うしろたなに、煮豆にまめ煮染にしめものなどを裝並もりならべたたなしたの、賣溜うりだめの錢箱ぜにばこをグヮチャリとらして、銅貨どうくわ一個ひとつ
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えるかとおもふと、たちまて、だまつてまたもちいたゞいて、すつと引込ひつこむ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて、車麩くるまぶ行方ゆくへは、やがてれた。つたのでもなんでもない。地震騷ぢしんさわぎのがらくただの、風呂敷包ふろしきづつみを、ごつたにしたゝか積重つみかさねたとこおくすみはう引込ひつこんであつたのをのちつけた。畜生ちくしやう
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもはずこゑして、唯吉たゞきちまどからくび引込ひつこめた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まどからかほ引込ひつこませた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)