如何いかに)” の例文
成行如何いかに固唾かたずを呑んで居りましたが、二人は睨み合ったままスーッと別れて、紺野は玄関の方へ、香椎は客間の方へ足を返します。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
是に於てか彼かうべを振りて、我等此方こなたに止まるべきや如何いかにといひ、恰も一の果實このみに負くる稚兒をさなごにむかふ人の如くにほゝゑみぬ 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
『俊頼口伝集』下に「忘るなよ田長たおさに付きし虫の色ののきなば人の如何いかに答へん」「ぬぐ沓の重なる事の重なれば井守の印し今はあらじな」
夫ぢやアやつて下さるか如何いかに吾儕われがことをかまて見せようが此姿すがたでは如何どうかう詮方しかたがねへ付ては身姿みなりこせへるだけ金をば五兩貸てくれ。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いさゝか平常ふだん化粧けしやうたがふことなかりしとぞ。いま庇髮ひさしがみ、あのおびたゞしくかほみだれたるびんのほつれは如何いかにはたしてこれなんてうをなすものぞ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここまで身はのがれ来にけれど、なかなか心安からで、両人ふたり置去おきざりし跡は如何いかに、又我がんやうは如何いかになど、彼は打惑へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
近来種々感ずるところあり、如何いかにしてもこの国に永住の事に決心せしにいては、来春早々、此較的人種に区別をおかぬ東部へ出向く考に候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
貴問にいはく、近来娼婦型しやうふけい女人によにん増加せるを如何いかに思ふと。然れども僕は娼婦型の女人の増加せる事実を信ずるあたはず。
娼婦美と冒険 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
身のめぐりはにはかに寂しくなりぬ。書を讀みても物足らぬ心地して、胸の中には遺るに由なきもだえを覺えき。さて如何いかにしてこれを散ずべき。唯だ音樂あるのみ。
三「へえ……さて何うも此処に於て謝せずんば有るべからざる事件が発して、如何いかにとも恐入り奉ります儀で」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今日、ある人(しひて名をのぞく)から聞けば、君と加藤の妹との間には多少の意義があるとのことに候ふが、それはほんたうか如何いかに、お知らせくだされたくそうろう
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
或日、塩谷えんや判官高貞が良馬竜馬を禁裡に献上したことがあった。天皇は之を御覧じて、異朝は知らず我が国に、かかる俊馬の在るを聞かぬ、其の吉凶如何いかにと尋ねられた。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さきだってのいくさの如く、桃井、京極、山名、一色殿等の上に細川殿までしゅとなって、敵勢の四万、味方は二三千とあっては、如何いかにとも致し方無く、公方、管領の御職位
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私は今年こんねん、五十一歳になる、普通のかたならば働き最中、ソレにおめおめ引込む、甚だ意気地いくじない次第だが、如何いかにせん日本では、無理に余裕を造らねば、余裕が出て来ない。
人格を認知せざる国民 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
此方こなたは生きたる心地もなくしげりし草むらの間にもぐり込み、様子如何いかにうかがいをり候処、一人のさむらい無理りに年頃の娘を引連れ参り、すきを見て逃出にげださむとするを草の上に引据ひきす
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(此時仲禎卿雲初見)余が今日は美日なれば、今より駿卿へいひやりて墨田の春色賞するは如何いかにと問ぬ。二人そもよかるべしと、三たりして手紙したゝめし折から、駿卿来かかりぬ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ただそれ識見は如何いかに深く人事の細微に通じ広く世間の状勢を知り人心の転化を究め性情の奥秘を悟るに非ればなんぞ以て時世遠く隔り状況遥に異れる史上の真相を観破し得んや。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
かれらなんじらをわたさば、如何いかになにをわんとおもわずらうな、うべきことは、そのときさずけられるべし。これうものは汝等なんじらにあらず、うちにありていたまうなんじらのちちれいなり。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
元来女の性質は単純シンプルな物事に信じ易いものだから、尚更なおさらこういうことが、いちじるしく現われるかもしれぬ。それがめか、かの市巫いちこといったものは如何いかにも昔から女の方が多いようだ。
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
自然の約束に従て次第に世を去りたらば、跡にのこる壮年輩を如何いかにすべきや。
それをまもつくのは至極しごく結構けつかうでありますが、如何いかにせん無味乾燥むみかんさうなる一ぺん規則きそくでは銘々めい/\好都合かうつがふわからず、他人たにんから命令めいれいされたことのやうにおもはれて、往々わう/\規則きそく忽諸こつしよにするのふうがある。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
ここに大國主の神愁へて告りたまはく、「吾獨して、如何いかにかもよくこの國をえ作らむ。いづれの神とともに、はよくこの國を相作つくらむ」とのりたまひき。この時に海をらして依り來る神あり。
都辺の陶工これを模造して利を得る者また少なからず——と『大日本人名辞書』は叙している——しかして陶器は模しうれども筆跡は模すべからず、相ともに尼に謁してそれがし如何いかにせば可ならんを問ふ。
蓮月焼 (新字新仮名) / 服部之総(著)
そがなかに隱しぬれども、如何いかにせむ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
おもひでのれなるに此身このみあるゆゑじようさまのこひかなはずとせばなんとせん退しりぞくはらぬならねど義理ぎりゆゑくと御存ごぞんじにならば御情おなさけぶかき御心おこゝろとしてひともあれわれよくばとおほせらるゝものでなしらでも御弱およわきお生質たちなるに如何いかにつきつめた御覺悟おかくご
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そは如何いかに、汝等神に許されて登るをうる魂に非ずば誰に導かれてそのきだをこゝまで踏みしや。彼かくいひ、いふも我等はく行けり 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「はてな。」とはじめていて、主人あるじわたしてつたかぎをガツチリ、狼狽眼うろたへまなこひらいてると、如何いかにはこそこから、階下した廊下らうか見通みとほしであつた。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
失敗しつぱいあり、喜怒きど有り哀楽あいらくありで、一部の好小説こうせうせつが出来るのです、でまた今後の硯友社けんいうしや如何いかにふのも面白おもしろい問題で、九年の平波へいはさをさしてわたし気運きうん
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
サア夫はのつめ臺詞ぜりふ忠兵衞今は詮方せんかたなければ左樣御座らば此由を若旦那へ一おう話してと云ども主個あるじは更にきかず何の息子せがれに話すに及ばう如何いかに戀慕こひしたふ美人でも覆轉ひつくりかへつてあわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時に「オリアンタアル」の作者、忽ち破顔して答ふるやう、「詩人は唯一人いちにんあるのみとや。善し、さらば我は如何いかに」と。意コツペエが言をひるがへしておのが仰損を示せるなり。
如何いかにと人に尋候へば、辞安も今は尋常的の医になりし故、儒者めけるものの文通などは面倒に思候覧などと申候。我辞安其ていには有御座間布ござあるまじく、大かたは医をおこなひいそがしき事ならむと奉存候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ソコデお前は一切きいて見ると如何いかにしても学費のないと云うことは明白に分ったから、私が世話をしてりたい、けれどもほかの書生に対して何かお前一人に贔屓ひいきするようにあってはくない。待て/\。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そがなかに隠しぬれども、如何いかにせむ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ねがひ奉つると申立れば越前守殿傳吉を見られ只今憑司が申所まをすところにては其はう人殺ひとごろしに相違さうゐなく又無體むたいに叔母と女房にようばうを追出したる由なるが如何いかにやと尋問じんもんさるゝに傳吉は憑司を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いずれおんなに違いないが、早瀬はいつもこの人から、その収紅拾紫しゅうこうしゅうしうぐいすを鳴かしたり、蝶をもてあそんだりの件について、いや、ああ云ったがこれは何と、こう申したがそれは如何いかに
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かかるたはむれしてはばからず、女も為すままにまかせてとがめざる彼等の関繋かんけいそもそ如何いかに。事情ありて十年来鴫沢に寄寓きぐうせるこの間貫一はざまかんいちは、此年ことしの夏大学にるを待ちて、宮がめあはせらるべき人なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのしつは当時家中かちうきこえし美人なりしが、女心をんなごころ思詰おもひつめて一途に家を明渡すが口惜くちをしく、われ永世えいせい此処このところとゞまりて、外へはでじと、その居間に閉籠とぢこもり、内よりぢやうおろせしのちは、如何いかにかしけむ
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
折から縁に足音するは、老婢の来るならんと、貫一は取られたる手を引放たんとすれど、こは如何いかに、宮はちとゆるめざるのみか、そのかたちをだに改めんと為ず。果して足音は紙門ふすまの外にせまれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)