同情どうじょう)” の例文
たけが、同情どうじょうをしたように、このアルミニウムの湯沸ゆわかしは、まちからわれて、このうちにきてから、すでにひさしいあいだはたらいてきました。
人間と湯沸かし (新字新仮名) / 小川未明(著)
家人かじんのようすにいくばくか不快ふかいいだいた使いの人らも、お政の苦衷くちゅうには同情どうじょうしたものか、こころよく飲食いんしょくして早そうにった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
同級生だった校長先生も、同情どうじょうして、みんなでいっしょに村役場へ押しかけていって、先生をとりかえてくれといったのだという。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そうとも、そうとも! そんな同情どうじょうのねえことをぬかすやつア、江戸ッ子の名折なおれだ。オ、見りゃあ、伊勢甚いせじん極道息子ごくどうむすこじゃアねえか。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
アンドレイ、エヒミチはこのせつなる同情どうじょうことばと、そのうえなみだをさえほおらしている郵便局長ゆうびんきょくちょうかおとをて、ひど感動かんどうしてしずかくちひらいた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぼくたちは、しばらく、へいそとをきゅろきゅろとってゆく乳母車うばぐるまおとをきいていた。ぼくはおじいさんのこころおもいやって、ふか同情どうじょうせずにはいられなかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あふるるばかりの同情どうじょうもって、なにくれとはなしかけてくださいますので、いつのにやらわたくしほうでもこころ遠慮えんりょられ、丁度ちょうど現世げんせしたしいかたひざまじえて
平家のはかのそばにあるあみだでらぼうさんが、それをきいて、たいへん同情どうじょうをし、またじぶんはびわもきだったので、この法師をお寺へひきとり、くらしには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
するとかれはわたしのほっしていたありったけの同情どうじょうをわたしにそそいだ。かれはどうにかしてわたしをなぐさめようと努力どりょくした。そして失望しつぼうしてはいけないと言った。
おれはおめえに同情どうじょうしているんだぜ。だからよ、ゆうべだッて、おれから声をかけたんじゃねえか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、ガンさん、どこへいらっしゃるんです?」と、一白鳥はくちょうびかけながら、アッカのところへちかよってきました。いかにも、同情どうじょうぶかい、まじめな顔つきをしています。
おかみさんは同情どうじょうのこもった声で、やさしくたずねた。すると男は
それだのに、あなたはちっとも同情どうじょうしてくださらないんですか
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さすがに、子供こどもどうしのあいだでは同情どうじょうがあって、行商ぎょうしょうると、鉛筆えんぴつや、かみなどを学校がっこう生徒せいとってくれます。ありがたいことです。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうしてそのにはあたたか健全けんぜんかがやきがある、かれはニキタをのぞくのほかは、たれたいしても親切しんせつで、同情どうじょうがあって、謙遜けんそんであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
主人もことばのかぎりをつくして同情どうじょうした。しんせつな安藤はともかくも治療ちりょう見込みこみがすこしでもあるならば、一日も見てはいられぬといってった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かれの大きな目は同情どうじょうをふくんで、相手あいての目をひきつけずにはおかないのであった。
「ほんとねえ、かわいそうね。」と少女も同情どうじょうするように言いました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
わたくしというものは御覧ごらんとおなん取柄とりえもない、みじかい生涯しょうがいおくったものでございますが、それでも弟橘姫様おとたちばなひめさまわたくし現世時代げんせじだい浮沈うきしずみたいしてこころからの同情どうじょうせて、親身しんみになってきいてくださいました。
ケンプ博士はくしも、さすがにかれの変わった境遇きょうぐう同情どうじょうして
すると、むざんにも、だれにか、ちぎられてしまっていたので、ちょうは、あわれなはな運命うんめい同情どうじょうせずにはいられなかったのです。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれがかくするのは、別段べつだん同情どうじょうからでもなく、とって、情誼じょうぎからするのでもなく、ただみぎとなりにいるグロモフとひとならって、自然しぜんその真似まねをするのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
社会活動のうずからはねとばされ、もしくははねとばされんとしつつ、なにもかも思うようにできないで、失意しついなげいてる人などに、ひとりだって同情どうじょうするものはない。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
何かにつけて新吉の味方みかたになり、新吉がまっ黒けになって、朝から夜おそくまではたらかせられているときは、なみだを流して同情どうじょうし、新吉の手にあまるつらい仕事は、かげながら手伝てつだってくれたのでした。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
アーサはわたしにあつ友情ゆうじょうせていた。わたしのほうでもわざとでなしに、また気のどくという同情どうじょうからでなしに、しぜんとかれを兄弟のように思っていた。二人はけんか一つしたことはなかった。
かえったら、どうしたんだか、きいてみようか。」と、けんちゃんがこたえました。こうして、二人ふたり秀吉ひできちうえ同情どうじょうしたのでした。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
西田はこういいてて、細君の寝間ねまへはいった。細君も同情どうじょう深い西田の声を聞いてから、夢からさめたように正気しょうきづいた。そうしてはいってきた西田におきて礼儀れいぎをした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「ほんとうに、そうしたはなしくと、自由じゆうそらべるあなたたちにも、いろいろな苦労くろうがあるのですね。」と、木立こだち同情どうじょうしました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
源四郎はもちろん妻のしぶりに同情どうじょうしているが、さりとてまま母の冷淡れいたん憤慨ふんがいするでもない。だまって酒を飲み、ものを食っている。雨はいよいよ降りが強くなってきたらしい。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
これをいて、事情じじょうらぬひとたちは、金持かねもちや、家主やぬしにありそうなことだと、した青服夫婦あおふくふうふへ、同情どうじょうしたかもしれません。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
糟谷が上京以来じょうきょういらいたえず同情どうじょうせて、ねんごろまじわってきた、当区とうく畜産家ちくさんか西田にしだという人が、糟谷の現状げんじょうを見るにしのびないで、ついに自分の手近てぢかさしたのであるが、糟谷が十年んでおった
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「どうして、今日きょうは、いちばんあとになったのだろう?」と、太郎たろうは、あわれなからすについて、同情どうじょうせずにはいられませんでした。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうかんがえると、だれもかれも、いっしょにくるしむがいい、とおもいまして、たとえ子供こどもであろうが、特別とくべつ同情どうじょうするになれません。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
勇蔵ゆうぞうも、近所きんじょひとたちも、同情どうじょうをしてくれたけれど、きるみちは、畢竟ひっきょう自分じぶんはたらくよりもほかにないということをかれ自覚じかくしたのです。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それほど、あまり姿すがたちがっていたので、このまち人々ひとびとには、かわいそうというほどの同情どうじょうねんこらなかったのであります。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きっとおそくまれたんだよ。おともだちがいなくてさびしいだろうな。」と、としちゃんが、おそくこのたみんみんに同情どうじょうしました。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうですとも、なかなかの丹精たんせいじゃありません。」と、八百屋やおや主人しゅじんもおかみさんも、おじいさんに同情どうじょうをしないものはありませんでした。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、だれもこの貧乏びんぼう子供こども同情どうじょうをしてくれるものがないとみえました。その子供こども地主じぬしうちでもことわられたとみえます。
金銀小判 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるところに、そのはなしいて、たいへんむすめ同情どうじょうをして、どくがったおじいさんがあります。そのおじいさんは、もうあたましろでした。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなは、また一人ひとりになりました。そして、たよりないおくらなければならなくなりました。むらひとは、このしあわせのおんな同情どうじょうをしました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらきながらんでいるつばめは、かれのいうことをきました。そして、このあわれな少年しょうねん同情どうじょうするごとく、くびをかたむけてながめていました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうおもうと、わたしは、そのひと気持きもちに同情どうじょうして、そばへ、いきたくなりました。わたしはつい、ちかづいて、いっしょにちながら、えだあげました。
春さきの朝のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
だから、かれらは、かってにはやしたおし、土地とちかえして、自分じぶんたちの生活せいかつについてはすこしの同情どうじょうももっていないもののようにえたのです。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
このときから、たけちゃんも、しょうちゃんも、このとおくからきている小僧こぞうさんに、なにかにつけて、同情どうじょうしたのであります。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
このあわれなおんなが、ひとりぼっちになって、このはしのたもとにすわって三味線しゃみせんき、まえとおらぬひとたちに、同情どうじょうをこわなければならぬまでには
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、それはかわいそうに……。」と、おくさまは、同情どうじょうされました。なんといって、なぐさめたらいいか、おくさまには、わからなかったのでした。
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんなに、かげで、むらひとから同情どうじょうされているともらずに、平三へいぞう小屋こやなかで、一人ひとりゆきぐつをつくっていました。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんとうに、わたしが、わるかったのです。いま自分じぶんが、こうした境遇きょうぐうになって、空腹くうふくかんじていますと、よく、あのときのあなたに同情どうじょうができるのです。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、だれも、そのおとこおもっているように、あるいているのをとどまって、おとこ上話うえばなしいて、同情どうじょうせてくれるようなひとはありませんでした。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもたちが、自分じぶん同情どうじょうしてくれることもらずに、うしは、のそり、のそりとあるいていきました。そして、いかにも、あるくのがいやそうにえました。
引かれていく牛 (新字新仮名) / 小川未明(著)