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吊
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つる
ふりがな文庫
“
吊
(
つる
)” の例文
部屋の一端には巨大な一対の
鹿
(
しか
)
の角が壁にはめこんであり、その枝は
懸釘
(
かけくぎ
)
の役をして、帽子や、鞭や、拍車を
吊
(
つる
)
すようになっていた。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
生
(
なま
)
のままの肉やロースにしたのや、さまざまの
獣肉
(
じゅうにく
)
を
店頭
(
みせさき
)
に
吊
(
つる
)
した処には、二人の
壮
(
わか
)
い男がいて
庖丁
(
ほうちょう
)
で何かちょきちょきと刻んでいた。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
梁
(
はり
)
に
吊
(
つる
)
せる筈もないし、ドタバタやらかすには近所が近過ぎる。——俺も一と廻り薄情な御近所の樣子を見て來よう。あとを頼むよ、八
銭形平次捕物控:303 娘の守袋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
歩いているうちに、巳之助は、様々なランプをたくさん
吊
(
つる
)
してある店のまえに来た。これはランプを売っている店にちがいない。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
そこで今一本のマッチの軸の頭を折ったもので結晶を
吊
(
つる
)
しながら、丁度結晶が垂直に立つようにその一端を唾の滴にふれさせるのである。
雪雑記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
だんだんに声を
辿
(
たど
)
って行くと、戸じまりをした隣家の
納屋
(
なや
)
の中に、
兵児帯
(
へこおび
)
と
褌
(
ふんどし
)
をもって両手足を縛られ、
梁
(
はり
)
から
兎
(
うさぎ
)
つるしに
吊
(
つる
)
されていた。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「だからおれは、あいつを外してしまって、その代りにこの
環
(
かん
)
を首へはめて、細引で松の枝へ
吊
(
つる
)
しておいて仕事にかかりてえと思うのだ」
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
笑って取り合わなかったが、いよいよもって油紙に火のついたように、髪を逆立てて
太腿
(
ふともも
)
も
露
(
あらわ
)
にじだんだ踏んで眼を
吊
(
つる
)
し上げた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
卯平
(
うへい
)
は
狹
(
せま
)
いながらにどうにか
土間
(
どま
)
も
拵
(
こしら
)
へて
其處
(
そこ
)
へは
自在鍵
(
じざいかぎ
)
を
一
(
ひと
)
つ
吊
(
つる
)
して
蔓
(
つる
)
のある
鐵瓶
(
てつびん
)
を
懸
(
かけ
)
たり
小鍋
(
こなべ
)
を
掛
(
か
)
けたりすることが
出來
(
でき
)
る
樣
(
やう
)
にした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
黒板に
吊
(
つる
)
した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを
指
(
さ
)
しながら、みんなに
問
(
とい
)
をかけました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
この者切られし首の髮をとらへてあたかも
提燈
(
ちようちん
)
の如く之をおのが手に
吊
(
つる
)
せり、首は我等を見てあゝ/\といふ 一二一—一二三
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
貧
(
まづ
)
しい
店前
(
みせさき
)
には
※
(
おほがめ
)
の
甲
(
かふ
)
、
鰐
(
わに
)
の
剥製
(
はくせい
)
、
不恰好
(
ぶかっかう
)
な
魚
(
うを
)
の
皮
(
かは
)
を
吊
(
つる
)
して、
周圍
(
まはり
)
の
棚
(
たな
)
には
空箱
(
からばこ
)
、
緑色
(
りょくしょく
)
の
土
(
つち
)
の
壺
(
つぼ
)
、
及
(
およ
)
び
膀胱
(
ばうくわう
)
、
黴
(
か
)
びた
種子
(
たね
)
、
使
(
つか
)
ひ
殘
(
のこ
)
りの
結繩
(
ゆはへなは
)
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
しかも博士は、高い
天井
(
てんじょう
)
から
吊
(
つる
)
したロープの端の輪に両足をかけ、機械体操の
要領
(
ようりょう
)
で、さかさにぶらさがっているのである。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
隣の洗濯屋の
物干
(
ものほし
)
に
隙間
(
すきま
)
なく
吊
(
つる
)
されたワイ
襯衣
(
シャツ
)
だのシーツだのが、
先刻
(
さっき
)
見た時と同じように、強い日光を浴びながら、乾いた風に揺れていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いや、その光がさしてゐるだけに、向うの軒先に
吊
(
つる
)
した
風鐸
(
ふうたく
)
の影も、
反
(
かへ
)
つて濃くなつた
宵闇
(
よひやみ
)
の中に隠されてゐる位である。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二十箇ほどのガス燈が小屋のあちこちにでたらめの間隔をおいて
吊
(
つる
)
され、夜の
昆虫
(
こんちゅう
)
どもがそれにひらひらからかっていた。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
同行八人の寝室も、食堂も、ここで兼ねるのである。早速、焚火にかかって、徒渉に濡れた
脚絆
(
きゃはん
)
を乾すやら、大鍋を
吊
(
つる
)
して湯を沸かしたりする。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
登りきったところは、百坪ばかりのなにもない空地で、隅のほうに枯れた杉の木があり、その枝に裸の女が
吊
(
つる
)
されていた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
洋画家中村不折氏の玄関には
銅鑼
(
どら
)
が
吊
(
つる
)
してある。案内を頼む客は、主人の
画家
(
ゑかき
)
の頭を叩く積りで、この銅鑼を鳴らさねばならぬ事になつてゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
時は秋の末であったらしく、近在の貧しい町の休茶屋や、飲食店などには赤い柿の実が、枝ごと
吊
(
つる
)
されてあったりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
河豚
(
ふぐ
)
提灯、これは江の島から
花笠
(
かりゅう
)
が贈つてくれたもの、それを頭の上に
吊
(
つる
)
してあるので、来る人が皆豚の
膀胱
(
ぼうこう
)
かと間違へるのもなかなか興がある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
こんな病院へはいらなければ生を完うすることのできぬ
惨
(
みじ
)
めさに、彼の気持は再び曇った。眼を上げると首を
吊
(
つる
)
すに適当な枝は幾本でも眼についた。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
クリスマスの
裝飾
(
さうしよく
)
に
用
(
もち
)
ゐた
寄生木
(
やどりぎ
)
の
大
(
おほ
)
きなくす
玉
(
だま
)
のやうな
枝
(
えだ
)
が、ランプの
光
(
ひかり
)
に
枝葉
(
えだは
)
の
影
(
かげ
)
を
見
(
み
)
せて
天井
(
てんじやう
)
に
吊
(
つる
)
されてゐる。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
そこに
濛々
(
もうもう
)
と渦巻く熱気と、石炭の粉の中に、臨時に
吊
(
つる
)
した二百
燭光
(
しょく
)
の電球のカーボンだけが、赤い糸か何ぞのようにチラチラとしか見えていない。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
船室
(
キヤビン
)
の
中央
(
ちゆうわう
)
に
吊
(
つる
)
してある
球燈
(
きゆうとう
)
の
光
(
ひかり
)
は
煌々
(
くわう/\
)
と
輝
(
かゞや
)
いて
居
(
を
)
るが、どうも
其邊
(
そのへん
)
に
何
(
なに
)
か
魔性
(
ませう
)
でも
居
(
を
)
るやうで、
空氣
(
くうき
)
は
頭
(
あたま
)
を
壓
(
おさ
)
へるやうに
重
(
おも
)
く、
實
(
じつ
)
に
寢苦
(
ねぐる
)
しかつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
順一の持逃げ用のリュックサックは食糧品が詰められて、縁側の天井から
吊
(
つる
)
されている綱に
括
(
くく
)
りつけてあった。つまり、鼠の侵害を防ぐためであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
いろんな焼物が並べてあるでせう? あの後へこれから何か面白い布を
吊
(
つる
)
して背景にして、それからあの
花揷
(
はなさし
)
へは他のいゝ花を何か揷す積りですがね。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
社殿は古びた清素な建築で、
賽銭箱
(
さいせんばこ
)
の上に
吊
(
つる
)
した大きな鈴も黒ずんでいました。下った五色の布を引いて拝します。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
傘が触って入口の
檐
(
のき
)
に竿を横たえて懸け
吊
(
つる
)
してあった
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
の
一把
(
いちわ
)
をバタリと落した途端に、土間の隅の
臼
(
うす
)
のあたりにかがんでいたらしい白い
庭鳥
(
にわとり
)
が二
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
刺身皿の
鮪
(
まぐろ
)
は
此
(
この
)
海で取れたのだと云ふ。卓上に
印度
(
インド
)
式の
旋風布
(
フアンカ
)
を
吊
(
つる
)
し、
其
(
その
)
綱の一端を隣室から少年の
黒奴
(
こくど
)
が断えず引いて涼を起すのは
贅沢
(
ぜいたく
)
な仕掛である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
私の小さいブランコの
吊
(
つる
)
してあった、その無花果の木の或る枝の変にくねった枝ぶりだとか、あるときの庭土の
香
(
かお
)
りだとか、或いはまた
金屑
(
かなくず
)
のにおいだとか
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
キヌちゃんはその手紙を
貰
(
もら
)
ってから、急にお
白粉
(
しろい
)
が濃くなったとか、
円
(
まる
)
鏡に
紐
(
ひも
)
をつけて帯の前に
吊
(
つる
)
し、仕事をしながら終始
覗
(
のぞ
)
きこんでいるとか、際限がない。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
われわれの子供の時分には、金魚池などに蚫の殻を
鼬
(
いたち
)
よけに
吊
(
つる
)
すということがあった。蚫の殻は裏がよく光るので、夜でも鼬が恐れて近寄らぬからだという。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
コノエさんはもう朝畑をして戻ってきたらしく、
桑
(
くわ
)
の束を井戸の中へ
吊
(
つる
)
していた。クニ子とは小学校から同級生でお互にあけすけなものいいのできる間柄であった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「蚊帳だ! 蚊帳だ!」と大騒ぎをして、それをつらうとしたが四
隅
(
すみ
)
に
吊
(
つる
)
す
釣手
(
つりて
)
がありませんでした。
蚊帳の釣手
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
常木様のお
諭
(
さと
)
しもきかねえで、ぷいと、代々木を飛びだした帰り途——、これ見てくンな、柳原の
吊
(
つる
)
しん棒で、
合羽
(
かっぱ
)
や
脚絆
(
きゃはん
)
の急仕立て、すぐに旅へ立とうとしたが
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、次の日にその童子を学校の梁木に
吊
(
つる
)
して、
鞭
(
むち
)
で続けざまに打つてみんなに見せたのであつた。それから間もなく森文部大臣が殺されたのだといふやうな気がする。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そこは両側とも拡げられていて、
最上後甲板下船室
(
ラウンドハウス
)
と言ってもいいくらいであった。もちろん、やはり天井はごく低かった。が二つの
吊床
(
ハンモック
)
を
吊
(
つる
)
すだけの余地はあった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
処
(
ところ
)
へ大きな
丈
(
たけ
)
三
尺
(
しやく
)
もある
白張
(
しらはり
)
の
提灯
(
ちやうちん
)
が
吊
(
つる
)
さがつて
居
(
を
)
ります、
其提灯
(
そのちやうちん
)
の
割
(
わり
)
には
蝋燭
(
ろうそく
)
が
細
(
ほそ
)
うございますからボンヤリして、
何
(
ど
)
うも
薄気味
(
うすきみ
)
の悪いくらゐ
何
(
なん
)
か
陰々
(
いん/\
)
として
居
(
を
)
ります。
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
数千本の丸太を湖の浅い部分に
打込
(
うちこ
)
んで、その上に板を
渡
(
わた
)
し、そこに彼等の家々は立っている。
床
(
ゆか
)
のところどころに作られた落し戸を
開
(
あ
)
け、
籠
(
かご
)
を
吊
(
つる
)
して彼等は湖の魚を
捕
(
と
)
る。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
本町の通では前の日の混雑した
光景
(
さま
)
と打って変って家毎に祭の提灯を深く
吊
(
つる
)
してある。紺
暖簾
(
のれん
)
の下にさげた
簾
(
すだれ
)
も静かだ。その奥で煙草盆の灰吹を
叩
(
たた
)
く音が響いて聞える位だ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
店の上に
吊
(
つる
)
された、五十
燭
(
しょく
)
ぐらいの電燈が、
蒼白
(
あおじろ
)
い、そしてみずみずしい光をふりまき、その光に濡れそぼっている果物屋の店や、八百屋の店は、ますます私の心を、憂鬱に
郷愁
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
四月になったら、ふっくらと広い寝台を
据
(
す
)
え、黒い、九官鳥の籠を
吊
(
つる
)
そうと思っています。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
宿の妻が虫籠や
風鈴
(
ふうりん
)
を
吊
(
つる
)
すのもやはり便所の戸口近くである。草双紙の表紙や見返しの意匠なぞには、便所の戸と
掛手拭
(
かけてぬぐい
)
と手水鉢とが、如何に多く使用されているか分らない。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼はのびあがって、それを堀大主典の前に
吊
(
つる
)
した。人々の顔は黄ばんだ光に染めだされた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
街々を突っ切って、遠く間を隔てて、不恰好な街灯が一つずつ、滑車綱で
吊
(
つる
)
してあった。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
道化役の白い
衣裳
(
いしょう
)
が
不恰好
(
ぶかっこう
)
に
歪
(
ゆが
)
んで
吊
(
つる
)
されたやうにエクランの中心を横切つたりした。その白ぼけた光がある時はエクラン一ぱいに膨らみ、客席の人の顔を鈍く照し出すのだつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
彼には七里ひと跳びの長靴があり、
牡牛
(
おうし
)
のような
頸
(
くび
)
、天才的な額、船の竜骨のような腹があり、セルロイドの
翅
(
はね
)
と悪鬼のような角があり、そして後ろには大きな軍刀を
吊
(
つる
)
している。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その頃、誰が云い出したのか知らないが、コロリの疫病神を
攘
(
はら
)
うには、軒に八つ手の葉を
吊
(
つる
)
して置くがいいと云い伝えられた。八つ手の葉は天狗の
羽団扇
(
はねうちわ
)
に似ているからであると云う。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
やがて、ぼくは
真面目
(
まじめ
)
にそう答えた。そのとき山口はぼくにとって、牛肉屋の店先に
吊
(
つる
)
された赤い肉塊のような物質、ぼくにどうすることもできない、「他人」の一人でしかなかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
吊
漢検準1級
部首:⼝
6画
“吊”を含む語句
吊下
吊洋燈
上吊
吊革
吊籠
懸吊
吊橋
宙吊
不吊合
吊天井
吊床
吊懸
吊皮
吊上
吊台
吊鐘
吊臺
吊手
首吊
引吊
...