内證ないしよう)” の例文
新字:内証
「あの、後程のちほど内證ないしよう御新姐ごしんぞさんが。きつ御待おまあそばせよ。此處こゝに。ござんすか。」とさゝやいて、すぐに、ちよろりとえる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見定め出立致さん夫迄は遊び暮すべしとてなほにぎしくぞ居續ける其日はゆふ申刻なゝつ時分じぶんにて瀬川がひるの客も歸り何か用の有りとて内證ないしようへ行きしに右の一札を女房に讀聞よみきかせ居たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
五十けんによき得意塲とくいばもちたりとも、内證ないしようくるま商賣しようばいものゝほかなればせんなく、十三になれば片腕かたうで一昨年おとゝしより並木なみき活版所かつぱんじよへもかよひしが、怠惰なまけものなれば十日とうか辛棒しんぼうつゞかず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ彼女かのひとにのみ内證ないしようの祕めたる事ぞ無かりける。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
如何いかなるくはだてか、内證ないしようはずわざ打明うちあけて饒舌しやべつて、紅筆べにふで戀歌こひうた移香うつりがぷんとする、懷紙ふところがみうや/\しくひろげて人々ひと/″\思入おもひいれ十分じふぶんせびらかした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なだめ一まづかへしけり其後二三日すぎて長兵衞は白子屋庄三郎并につまつねを呼び段々だん/\内證ないしよう都合迄つがふまでも聞何共氣のどくなる事なりしからばむこ又七殿どのお熊殿との中よろしくば家をわた世帶せたい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
内證ないしようのかくれたる色青き
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
つたが、土袋どぶつ細君さいくんださうです。土地とち豪農がうのう何某なにがしが、内證ないしよう逼迫ひつぱくした華族くわぞく令孃れいぢやう金子かねにかへてめとつたとひます。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ごく内證ないしようでお前にあげませうと云ふを城富聞より大いに喜悦よろこび夫は/\まことに有がたう御座ると云ば非人共して酒手は何程位どのくらゐおいて行のだへ全體ぜんたいやつてはならぬことだが己輩おらたち寸志こゝろざしで内證であげるだから其ことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其處そこ原稿料げんかうれうは?……んでもない、わたしはまだ一枚いちまいかせぎはしない。先生せんせいのは——内々ない/\つてゐるが内證ないしようにしてく。……
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いゝえ、それまででもないんです……だれにもとひますうちにも、差配さはいさんへは、けて内證ないしようになすつてくださいまし。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今以いまもつきもてもしないだらうから、御婦人方ごふじんがたには内證ないしようだが、じつ脚氣かつけで。……しか大分だいぶ手重ておもかつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
内證ないしよう婦人ふじんなどおたはむれで、それで座敷ざしきとほせぬのであらう。ならなほことたつてとおつしやる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
内證ないしようでそのみち達者たつしやにたゞすと、いはく、なべ一杯いつぱいやるくらゐの餘裕よゆうがあれば、土手どて大門おほもんとやらへ引返ひきかへす。第一だいいちかへりはしない、とつた。格言かくげんださうである。みなわかかつた。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
分別ふんべつをするから、つぶてつたり、煙管きせる雁首がんくび引拂ひつぱらふなど、いまやうな陣笠ぢんがさ勢子せこわざ振舞ふるまはぬ、大將たいしやうもつぱ寛仁大度くわんにんたいどことと、すなは黒猫くろねこを、ト御新造ごしんぞこゑ内證ないしよう眞似まね
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うちからさをなんぞ……はりいとしのばしてはなかつたが——それは女房にようばうしきり殺生せつしやうめるところから、つい面倒めんだうさに、近所きんじよ車屋くるまや床屋とこやなどにあづけていて、そこから内證ないしよう支度したくして
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかも眞夜中まよなか道中だうちうである。箱根はこね足柄あしがらときは、内證ないしよう道組神だうそじんをがんだのである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
内證ないしようで……なんとなくかほられますやうで、ですから内證ないしようで、蔦屋つたやまゐりました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
床几しやうぎ——といふところだが、(——親類しんるゐいへで——)用意よういがないから、踏臺ふみだい嵬然くわいぜんとしてこしけた……んぢや、とわらつて、當人たうにんわたしはなした。夫人ふじんおよ學生がくせいさんがたには内證ないしようらしい。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、蘇生よみがへつてとしてから、てい飛脚ひきやくが、内證ないしようで、兄弟分きやうだいぶんはなしたとつたへられる。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かべ障子しやうじあなだらけななかで、先生せんせい一驚いつきやうをきつして、「なんだい、これは。——田舍ゐなかから、内證ないしようよめでもくるのかい。」「へい。」「うまのくらにくやうだな。」「えへゝ。」わたしよわつて
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もつとも、二ぎにまゐつたんですから、もんくゞりもしまつてて、うら𢌞まはつたもわかりましたが、のちけばうでせう……木戸きどは、病院びやうゐんで、にました死骸しがいばかりを、そつ内證ないしようします
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
裏長屋うらながやのあるじとふのが醫學生いがくせいで、内證ないしようあやしみやくつたから、白足袋しろたびもちゐる、その薄汚うすよごれたのが、片方かたつぽしか大男おほをとこのだからわたしあしなんぞふたはひる。細君さいくん内證ないしようで、ひだり穿いた——で仲見世なかみせへ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)