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互
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たがい
ふりがな文庫
“
互
(
たがい
)” の例文
山稜を成す大尾根が北と南から
互
(
たがい
)
に擦れ違うようにして、其間に抱え込んだ窪地は、四方を偃松に取り捲かれた絶好のノタであった。
鹿の印象
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
お
互
(
たがい
)
に何だか訳の分らない気持がしているところへ、今日は少し
生暖
(
なまあたた
)
かい海の夕風が東から吹いて来ました。が、吉は
忽
(
たちま
)
ち強がって
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
というわたしをこの人はまだこどものように見てなにかと覚束ながる。
互
(
たがい
)
に眼を
瞠目
(
みは
)
って、よくぞこのうき世の
荒浪
(
あらなみ
)
に
堪
(
た
)
うるよと思う。
愛よ愛
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「さあ、皆さん、お
互
(
たがい
)
さまです。仰向きになって寝ないで、身体を横にして寝て下さい。一人でも余計に寝てもらいたいですから」
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
取残された兼太郎は
呆気
(
あっけ
)
に取られて、寒月の光に若い男女が
互
(
たがい
)
に手を取り肩を摺れ
合
(
あわ
)
して行くその
後姿
(
うしろすがた
)
と地に
曳
(
ひ
)
くその影とを見送った。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
初恋に
酔
(
よ
)
う少年少女のたわいのない
睦言
(
むつごと
)
の
遣
(
や
)
り
取
(
と
)
りに過ぎないけれども、
互
(
たがい
)
に人目を
忍
(
しの
)
んでは首尾していたらしい様子合いも見え
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
玉子焼鍋へ油を敷いておいて今の物を少しずつ
中間
(
あいだ
)
を離して入れます。あんまり
密着
(
くっつ
)
けて入れると膨らむ時中で
互
(
たがい
)
に着いてしまいます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
かれこれと
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
っている
中
(
うち
)
にも、お
互
(
たがい
)
の
心
(
こころ
)
は
次第
(
しだい
)
次第
(
しだい
)
に
融
(
と
)
け
合
(
あ
)
って、さながらあの
思出
(
おもいで
)
多
(
おお
)
き
三浦
(
みうら
)
の
館
(
やかた
)
で、
主人
(
あるじ
)
と
呼
(
よ
)
び、
妻
(
つま
)
と
呼
(
よ
)
ばれて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
是よりいたして雨の降る
夜
(
よ
)
も風の夜も、首尾を合図にお
若
(
わか
)
の計らい、通える数も積りつゝ、今は
互
(
たがい
)
に棄てかねて、其の
情
(
なか
)
漆
(
うるし
)
膠
(
にかわ
)
の如くなり。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
職業に就くにも御
互
(
たがい
)
に争ってやる、学校にいる時でもお互に点を余計に取ろうと思って競争する。競争には違いない。戦争には違いない。
今世風の教育
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ところがこのとき、さっきの喧嘩をした二疋の子供のふくろうがもう説教を聴くのは
厭
(
あ
)
きてお
互
(
たがい
)
にらめくらをはじめていました。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「静かにしてくれ給え。お
互
(
たがい
)
は気心を知り合った友達だからいいけれど、警察の連中にこんな所を見られては、少し具合が悪いのだから」
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
少
(
すこ
)
しも
長
(
なが
)
く、おせんを
引
(
ひ
)
き
止
(
と
)
めておきたい
人情
(
にんじょう
)
が、
互
(
たがい
)
の
口
(
くち
)
を
益々
(
ますます
)
軽
(
かる
)
くして、まるく
囲
(
かこ
)
んだ
人垣
(
ひとがき
)
は、
容易
(
ようい
)
に
解
(
と
)
けそうにもなかった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
井伊と吉田、五十年前には
互
(
たがい
)
に
倶不戴天
(
ぐふたいてん
)
の仇敵で、安政の
大獄
(
たいごく
)
に井伊が吉田の首を斬れば、桜田の雪を紅に染めて、井伊が浪士に殺される。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
彼等女匪は、
城隍
(
じょうこう
)
の前で誓いを立て十
姉妹
(
しまつ
)
と自称し、年に由って
老大
(
ろうだい
)
とか老二とかの称号をつけ、
互
(
たがい
)
に連絡を取って活動する。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
遠因はあるであろうが、むしろ模様の類似よりは仕事の性質に、
互
(
たがい
)
に近似したものが見出せるというまでではないだろうか。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ぶっきいのそばには必ず高いところに信号係が立っていて、手を振り、肘を叩き、頬をつまみしてお
互
(
たがい
)
に聯絡を保っている。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
そうして自分の志を述べ、人の志を
汲
(
く
)
み取り、
互
(
たがい
)
に憂い、互に喜んで居るのである。そういう俳句の世界というものがある。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
従って経済現象は
互
(
たがい
)
に原因結果の関係によって結び付いているのではなく、相互依存の関係に織り込まれているのである。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
先生の
親友
(
しんゆう
)
に
高橋順益
(
たかはしじゅんえき
)
という
医師
(
いし
)
あり。
至
(
いたっ
)
て
莫逆
(
ばくげき
)
にして
管鮑
(
かんぽう
)
啻
(
ただ
)
ならず。いつも二人
相
(
あい
)
伴
(
ともな
)
いて予が家に来り、
互
(
たがい
)
に
相
(
あい
)
調謔
(
ちょうぎゃく
)
して
旁人
(
ぼうじん
)
を笑わしめたり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
框
(
カマチ
)
を
毀
(
こわ
)
された問題の扉は、厚さ二寸もある
樫
(
カシ
)
の木で、縦に長く、巾三寸位の山形の彫んだ刻みが、一行ずつ、
違
(
ちが
)
い
互
(
たがい
)
の切り込み模様がついていた。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
同棲
(
どうせい
)
していた当時は、お
互
(
たがい
)
にその事には、一言もふれなかったが、後で考え合わせると、そうらしいというのである。
女強盗
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
人跡
(
ひとあと
)
絶えた山道には、人力車の通う
術
(
すべ
)
もなかったので、二人の若い男女は、
互
(
たがい
)
に助け合いながら、
蔦葛
(
つたかずら
)
の
這
(
は
)
う細道を、
幾時間
(
いくじかん
)
となくさまよい歩いた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「もう、そんな堅くるしいことは、お
互
(
たがい
)
によしましょう、私はこうした一人者のお婆さんですから、お
嫌
(
いや
)
でなけりゃこれからお
朋友
(
ともだち
)
になりましょう」
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
世界中
(
せかいじゅう
)
の
人々
(
ひとびと
)
がみなお
互
(
たがい
)
に
愛
(
あい
)
しあい、そして
力強
(
ちからづよ
)
く
生
(
い
)
きてゆくこと、それが
彼
(
かれ
)
の
理想
(
りそう
)
であり、そして
彼
(
かれ
)
はいつも
平和
(
へいわ
)
と
自由
(
じゆう
)
と
民衆
(
みんしゅう
)
との
味方
(
みかた
)
であります。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それを両方から使って居るのですから向う側に席を占めて居る人とは、ツイ話も弾み、
卓
(
テーブル
)
の下の足も触り、お
互
(
たがい
)
に息も通うので、同僚達がやっかんで
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
追手
(
おって
)
の人々も
同
(
おなじ
)
く
村境
(
むらざかい
)
まで走って来たが、
折柄
(
おりから
)
の烈しい
吹雪
(
ふぶき
)
に
隔
(
へだ
)
てられて、
互
(
たがい
)
に離れ離れになって
了
(
しま
)
った。
其中
(
そのなか
)
でも忠一は勇気を
鼓
(
こ
)
して
直驀地
(
まっしぐら
)
に駈けた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その月日と時刻とを記しておいて、
後
(
のち
)
になって、それを
互
(
たがい
)
に
合
(
あわ
)
してみると、その
中
(
うち
)
の十中の六までは、その相互の感情が、ひったり一致をしていたそうだ。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
その眼光の鋭さ、らんらんと燃ゆるような四つの眼は、お
互
(
たがい
)
の胸の底まで見抜こうとする物凄いものであった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
と
裳
(
もすそ
)
をずりおろすようにして
止
(
と
)
めた顔と、まだ
掴
(
つか
)
んだままの
大
(
おおき
)
な銀貨とを
互
(
たがい
)
に
見較
(
みくら
)
べ、
二個
(
ふたり
)
ともとぼんとする。時に
朱盆
(
しゅぼん
)
の口を開いて、
眼
(
まなこ
)
を
輝
(
かがやか
)
すものは何。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それからは
符牒
(
ふちょう
)
でしょう、何か
互
(
たがい
)
にいい合って、
手間
(
てま
)
の取れることなどもありますが、
極
(
き
)
まりが附いて皆がそこを離れるころには、また別の方で呼立てます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
そのまま、しばらくにらみあいのままでいましたが、さて、
線路
(
せんろ
)
が
一筋
(
ひとすじ
)
なので、お
互
(
たがい
)
に
通
(
とお
)
りぬけることができません。どちらか
後
(
あと
)
しざりをしなければなりません。
ばかな汽車
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
持ってるんですよ。僕も
及
(
およ
)
ばずながら、同じ江戸っ子だから、なるべく長くご在校を願って、お
互
(
たがい
)
に力になろうと思って、これでも蔭ながら
尽力
(
じんりょく
)
しているんですよ
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この年七月二十日に
山崎美成
(
やまざきよししげ
)
が歿した。抽斎は美成と甚だ親しかったのではあるまい。しかし
二家
(
にか
)
書庫の蔵する所は、
互
(
たがい
)
に
出
(
い
)
だし借すことを
吝
(
おし
)
まなかったらしい。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
是れではドウモ御老中方へ御覧に入れることが出来ないと、妙な事を云うその様子を見るに、経済書中に人間
互
(
たがい
)
に
相譲
(
あいゆず
)
るとか云うような文字が見たいのであろう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そうすると他の生徒
等
(
ら
)
は後からも前からも一時に囃し立て鼻緒の切れた
草履
(
ぞうり
)
を投げ付けたり、
互
(
たがい
)
に前の者を押しやって清吉に突き当たり、
白墨
(
はくぼく
)
の
片
(
きれ
)
を投げ付けたり
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
当時
(
とうじ
)
幕府の進歩派
小栗上野介
(
おぐりこうずけのすけ
)
の
輩
(
はい
)
のごときは
仏蘭西
(
フランス
)
に結びその力を
仮
(
か
)
りて以て幕府統一の
政
(
まつりごと
)
をなさんと
欲
(
ほっ
)
し、
薩長
(
さっちょう
)
は英国に
倚
(
よ
)
りてこれに
抗
(
こう
)
し
互
(
たがい
)
に
掎角
(
きかく
)
の
勢
(
いきおい
)
をなせり。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
互
(
たがい
)
の世界はちがっていても、
謙遜
(
けんそん
)
しあうのが夫婦の道、だが絶縁状を見たうえは、何とか処置する。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それについてのこまかい話は省きますが、幾度か失望の
淵
(
ふち
)
に陥りながら、それでも夫妻で
互
(
たがい
)
に励まし合い、遂に一八九八年の夏になって最初の成功をかち得たのでした。
キュリー夫人
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
三人の仲間同志でやってたんだそうですが、もともと
玄人
(
くろうと
)
同志がやってたんでは
互
(
たがい
)
損
(
そん
)
ですから、やがて
素人
(
しろうと
)
を引入れ始めたんです……つまり、休憩で退廷した時なぞに
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そして一生懸命にめんかきをして、ようやく水の上に顔だけ出すことが出来ました。その時私たち三人が
互
(
たがい
)
に見合せた眼といったら、顔といったらありません。顔は
真青
(
まっさお
)
でした。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ゴチック風の表飾りのある旅館の
湿気
(
しけ
)
た寝台のうへには、滅びた恋の野辺の送りをするために、
屍灰
(
しかい
)
さながらの
味
(
あじわ
)
ひを
互
(
たがい
)
の唇のうへになほも吸ひ合ふ恋人たちの横たはつてゐるのを。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
日常の事はさほどの事はないけれ共、少し重立った事になると生国の違いと云う感じが都の者ほどさっぱりとは行かず、とけがたいわだかまりになってお
互
(
たがい
)
の一致を欠くのであった。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
大きなデカ
爺
(
おやじ
)
が、自分の
頭程
(
あたまほど
)
もない先月生れの小犬の
蚤
(
のみ
)
を
噛
(
か
)
んでやったり、小犬が母の
頸輪
(
くびわ
)
を
啣
(
くわ
)
えて引張ったり、犬と猫と
仲悪
(
なかわる
)
の
譬
(
たとえ
)
にもするにデカと猫のトラと
鼻
(
はな
)
突
(
つき
)
合わして
互
(
たがい
)
に
疑
(
うたが
)
いもせず
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
毎朝顔を合せる度にお
互
(
たがい
)
の鼻の
匂
(
におい
)
を嗅ぎ合う、大の仲よしの黒なのです。
白
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
可笑
(
おか
)
しいことには、この花屋の兄弟はとても仲が悪くて、夏場だけはお
互
(
たがい
)
に
仲好
(
なかよ
)
さそうに口を
利
(
き
)
き合いながら商売をしているが、さて夏場が過ぎてしまうと、すぐに
性懲
(
しょうこ
)
りもなく
喧嘩
(
けんか
)
をし始め
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
しかし一つの型に属する土器の曲線には、何となく
互
(
たがい
)
に似たところがあり、何か一定の法則がありそうに見える。この法則を
巧
(
うま
)
く数学的に表現することが出来れば、目的は達せられるはずである。
茶碗の曲線:――茶道精進の或る友人に――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
相手
(
あいて
)
の
気持
(
きもち
)
をのみ
込
(
こ
)
むのには、お
互
(
たがい
)
に
仲
(
なか
)
よくし合うことが
何
(
なに
)
よりです。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
生涯
互
(
たがい
)
に独身主義を守って只一時限りの……又は売り物買い物の低級な性愛や性欲で満足を買って行くがよろしい……と云いたくなりますが、これは机上の空論で実際はなかなかそうは行きませぬ。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
巴里
(
パリ
)
にいる日本人は皆お
互
(
たがい
)
から遠ざかる事を希望する。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
互
常用漢字
中学
部首:⼆
4画
“互”を含む語句
交互
相互
相身互
互違
相見互
御互
互先
互市場
互角
互樣
互生葉
互譲
相互扶助論
互市
連互
互替
相身互身
互交
互助論
相互援助法
...