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しげ
ふりがな文庫
“
繁
(
しげ
)” の例文
その
愈々
(
いよいよ
)
婚礼の晩という日の午後三時頃でもあろうか。村の小川、海に流れ出る
最近
(
まぢか
)
の川柳
繁
(
しげ
)
れる小陰に釣を
垂
(
たる
)
る二人の人がある。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
客と家の者とが
繁
(
しげ
)
く出入して、夜もさわがしかった。武は七郎と小さな
室
(
へや
)
へ寝たが、三人の下男はその寝台の下へ来て
藁
(
わら
)
を敷いて寝た。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
繁
(
しげ
)
るがまゝの秋草ですが、それでも氣をつけて見ると、人間の通つたらしい跡が、ほんの少しばかり草が
蹈
(
ふ
)
みつけられてをります。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
眞中
(
まんなか
)
には
庭園
(
ていえん
)
があり、
噴水
(
ふんすい
)
が
絶
(
た
)
えず
水
(
みづ
)
を
噴
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し、あたりには
青々
(
あを/\
)
と
繁
(
しげ
)
つた
庭木
(
にはき
)
も
植
(
う
)
ゑてあり、
熱
(
あつ
)
い
夏
(
なつ
)
の
日
(
ひ
)
でも
涼
(
すゞ
)
しい
感
(
かん
)
じを
與
(
あた
)
へ
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
大きい古い
欅
(
けやき
)
の樹と松の樹とが蔽い冠さって、左の
隅
(
すみ
)
に
珊瑚樹
(
さんごじゅ
)
の大きいのが
繁
(
しげ
)
っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
呑牛は考へてゐたが、細君のお
繁
(
しげ
)
さんに命じて、衣物か何かを質屋へ持つて行かせたらしい。云つてゐただけの金を義雄の前に出した。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
一令は一令より
繁
(
しげ
)
く下れり、天下の民は、雷鳴を聞くのみならず、
閃々
(
せんせん
)
たる電光を見たり。閃電を見るのみならず、落雷に撃たれたり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
生花の日は花や実をつけた
灌木
(
かんぼく
)
の枝で家の中が
繁
(
しげ
)
った。縫台の上の竹筒に挿した枝に
対
(
むか
)
い、それを
断
(
き
)
り落す
木鋏
(
きばさみ
)
の鳴る音が一日していた。
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そこは大阪にはちょっと
珍
(
めずら
)
しい樹木の
繁
(
しげ
)
った場所であって琴女の墓はその斜面の中腹を平らにしたささやかな
空地
(
あきち
)
に建っていた。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
楮
(
こうぞ
)
が
繁
(
しげ
)
れば、和紙の産地である。麻が畑に見えれば、麻布を予期していい。同じ
土焼
(
どやき
)
の破片が数あれば、それで
窯
(
かま
)
が見出せたともいえる。
地方の民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
今はどうか知らぬが、昔は中国のある地方では、それが
荊棘
(
いばら
)
のように
繁
(
しげ
)
っていて、原住民はこれを
伐採
(
ばっさい
)
し燃料にしたと書物に書いてある。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
私は月に二度もしくは三度ずつ必ず先生の
宅
(
うち
)
へ行くようになった。私の足が段々
繁
(
しげ
)
くなった時のある日、先生は突然私に向かって聞いた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
腐りかけた門のあたりは、二、三本
繁
(
しげ
)
った
桐
(
きり
)
の枝葉が暗かったが、門内には
鋪石
(
しきいし
)
など
布
(
し
)
かって、建物は往来からはかなり奥の方にあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「お
繁
(
しげ
)
さんも、この頃のように、ああ
無駄目
(
むだめ
)
が見えるようになっては長くあるまい。」……とは、私の母がいった言葉である。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
中川辺を通って行くと、小さいながら庭木の
繁
(
しげ
)
りようなどのおもしろく見える家で、よい音のする琴を
和琴
(
わごん
)
に合わせて
派手
(
はで
)
に
弾
(
ひ
)
く音がした。
源氏物語:11 花散里
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
で、
杣
(
そま
)
しか通わなかった道に、湯治客の草鞋のあと
繁
(
しげ
)
く、今は、阿弥陀沢村の一戸にまあたらしい白木の看板が掲がって——御湯宿、藤屋。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その時和作は妙に胸に響く
懐
(
なつか
)
しさに打たれた。この懐しさはいつまでも消えなかつた。そして段々
繁
(
しげ
)
く加納の家に出入りするやうになつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
旅亭
(
やどや
)
の
禿頭
(
はげあたま
)
に
教
(
をし
)
へられた
樣
(
やう
)
に、
人馬
(
じんば
)
の
徃來
(
ゆきゝ
)
繁
(
しげ
)
き
街道
(
かいだう
)
を
西
(
にし
)
へ/\と
凡
(
およ
)
そ四五
町
(
ちやう
)
、
唯
(
と
)
ある
十字街
(
よつかど
)
を
左
(
ひだり
)
へ
曲
(
まが
)
つて、三
軒目
(
げんめ
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
煉瓦造
(
れんぐわづく
)
りの
一構
(
ひとかまへ
)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
大杉の家もヤヤ
人出入
(
ひとでいり
)
が
繁
(
しげ
)
く取込んでるらしく想像されたが、安成もそれぎり見えないので、不安を感じながら身辺の雑事に紛れていると
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
勤め先からの帰りと覚しい人通りが
俄
(
にわ
)
かに
繁
(
しげ
)
くなって、その中にはちょっとした
風采
(
みなり
)
の紳士もある。馬に乗った軍人もある。
人力車
(
じんりきしゃ
)
も通る。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「あんた一人で東京までようお
往
(
い
)
きやすか。」と
母親
(
おふくろ
)
はもう涙を一杯眼に浮べて「
繁
(
しげ
)
も
可憫
(
かはい
)
さうに、お
伴
(
つれ
)
が
些
(
ちつ
)
とも
出来
(
でけ
)
よらんのかいなあ。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
水鶏
(
くいな
)
が好んで集まる、
粘土
(
ねばつち
)
に
蘆
(
あし
)
が一面に生い
繁
(
しげ
)
ったところをじくじく流れる、ほとんど目につかないような小川で、本土から隔てられている。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そして泳ぐような手つきで
繁
(
しげ
)
りあった秋草をかきわけ、しろじろとみえる
頸筋
(
くびすじ
)
や手くびのあたりに
蝗
(
いなご
)
みたいに飛びつく夜露
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
藪は随分
繁
(
しげ
)
つてゐるが、雨はどしどし漏つて来る。八は
絆纏
(
はんてん
)
のぴつたり
肌
(
はだ
)
に
引附
(
ひつつ
)
いた上を雨に
叩
(
たた
)
かれて、いやな心持がする。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
白樺
(
しらかば
)
の若木を自分で植えつけて、それがやがて青々と
繁
(
しげ
)
って、風に揺られているのを見ると、僕の胸は思わずふくらむのだ。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
一径
(
いっけい
)
互
(
たがい
)
に
紆直
(
うちょく
)
し、
茅棘
(
ぼうきょく
)
亦
(
また
)
已
(
すで
)
に
繁
(
しげ
)
し、という句がありまするから、曲がりくねった
細径
(
ほそみち
)
の
茅
(
かや
)
や
棘
(
いばら
)
を分けて、むぐり込むのです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それは古い沼で、
川尻
(
かわじり
)
からつづいて
蒼
(
あお
)
くどんよりとしていた上に、
葦
(
あし
)
やよしがところどころに暗いまでに
繁
(
しげ
)
っていました。
寂しき魚
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
妻の姉妹は三人もあって、銘々東京で家庭を持っているのですが、彼等の共通の祖母が、私の家へばかり足
繁
(
しげ
)
く来るものですからおしまいには
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
山門の所からは
杉
(
すぎ
)
森は暗いほどに
繁
(
しげ
)
り、
奥
(
おく
)
へ行くにしたがって
肌
(
はだ
)
がひやりとするような寒い風が流れるように
吹
(
ふ
)
いて来た。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
さて、つまみ
菜
(
な
)
、ちがへ
菜
(
な
)
、そろへ
菜
(
な
)
、たばね
菜
(
な
)
と、
大根
(
だいこ
)
のうろ
拔
(
ぬ
)
きの
葉
(
は
)
、
露
(
つゆ
)
も
次第
(
しだい
)
に
繁
(
しげ
)
きにつけて、
朝寒
(
あさざむ
)
、
夕寒
(
ゆふざむ
)
、やゝ
寒
(
さむ
)
、
肌寒
(
はだざむ
)
、
夜寒
(
よさむ
)
となる。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
陽は山に
遮
(
さえぎ
)
られて、山は木が真っ暗に
繁
(
しげ
)
って、その下をつづら折りに登って行くのですから、涼風は
面
(
おもて
)
を打って、暑いことは少しもありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
さすがに今は貫一が見る
度
(
たび
)
の
憤
(
いかり
)
も弱りて、待つとにはあらねど、その定りて来る文の
繁
(
しげ
)
きに、
自
(
おのづか
)
ら他の悔い悲める宮在るを忘るる
能
(
あた
)
はずなりぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
一般には、とかく悪い意味に用うるも、文字より考えれば必ずしも悪い意味のみでなく、
延
(
の
)
びひろがり
繁
(
しげ
)
る意味である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
すぐにそこから
小径
(
こみち
)
がつづいて、あたりいちめんに
生
(
お
)
い
繁
(
しげ
)
っているすすきの穂の先を、あるかないかの風が、しずかな波をつくり乍ら渡っていった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
或る部分は分厚に葉が重り合つてまるく
団
(
かたま
)
つて
繁
(
しげ
)
つて居るところもあつた。或る箇所は全く中断されて居るのである。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
額のあたり少し
禿
(
は
)
げ、
両鬢
(
りょうびん
)
霜ようやく
繁
(
しげ
)
からんとす。体量は二十二貫、アラビア
種
(
だね
)
の
逸物
(
いちもつ
)
も将軍の座下に汗すという。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
住むに家なく、口に
糊
(
こ
)
する
糧
(
かて
)
もない難民は大路小路に
溢
(
あふ
)
れております。物とり強盗は日ましに
繁
(
しげ
)
くなって参ります。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
昼は
九九
しみらに打
臥
(
ふ
)
して、
夕
(
よひ
)
々ごとには
壠
(
つか
)
のもとに
詣
(
まう
)
でて見れば、小草はやくも
繁
(
しげ
)
りて、虫のこゑすずろに悲し。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
併
(
しか
)
し現今も
飛鳥
(
あすか
)
の
雷岳
(
いかずちのおか
)
あたり、飛鳥川沿岸に小竹林があるが、そのころも小竹林は
繁
(
しげ
)
って立派であったに相違ない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
広いアスファルトの道路をへだてて、戦災をのがれた向う方には大きな建物が並び、街路樹も青々と
繁
(
しげ
)
っている。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
夏の暮れ方、
蝙蝠
(
こうもり
)
の出盛るころになると新道は急に人足が
繁
(
しげ
)
くなって、顔を真っ白に塗った若い女たちが射的屋の
赤提灯
(
あかぢょうちん
)
の下などにちらちら動いていた。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
そして亭々とした
華奢
(
きゃしゃ
)
な幹の先の思いがけない葉の
繁
(
しげ
)
みを、女の額の
截
(
き
)
り前髪のように振り
捌
(
さば
)
いて、その影の部分だけの海の色を涼しいものにしている。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼問ひ此答ふる
繁
(
しげ
)
き詞の中にも、幸にして人の我詩卷を問ふ者なく、我も亦
默
(
もだ
)
ありければ、ダヰツトの詩篇の事は終に復た一人の口に上ることなかりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
で、夢見心地でこの広々とした原っぱを通り過ぎると、間もなく物凄い
薄
(
すすき
)
の大波が
蓬々
(
ほうほう
)
と
生
(
お
)
い
繁
(
しげ
)
った真に芝居の難所めいた古寺のある荒野に踏み入る筈だ。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
畏怖も嫌忌も恐らくは我々以上であって、従って必要のない時にはたいてい
繁
(
しげ
)
み隠れなどから注意深く平地人の行動を、窺っていたのであろうと想像する。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
傘からはしたたりがことさら
繁
(
しげ
)
く落ちて、
単衣
(
ひとえ
)
をぬけて葉子の
肌
(
はだ
)
ににじみ通った。葉子は、熱病患者が冷たいものに触れた時のような不快な
悪寒
(
おかん
)
を感じた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
上総
(
かずさ
)
は春が早い。人の見る所にも見ない所にも梅は盛りである。菜の花も咲きかけ、麦の青みも
繁
(
しげ
)
りかけてきた、この頃の天気続き、毎日
長閑
(
のどか
)
な
日和
(
ひより
)
である。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
空は暗く
曇
(
くも
)
って、
囂々
(
ごうごう
)
と風が
吹
(
ふ
)
いていた。水の上には
菱波
(
ひしなみ
)
が立っていた。いつもは、
靄
(
もや
)
の立ちこめているような
葦
(
あし
)
の
繁
(
しげ
)
みも、からりと
乾
(
かわ
)
いて風に吹き
荒
(
あ
)
れていた。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
教育博物館の方はなかなか
整頓
(
せいとん
)
していて、植物などはいろいろな珍しいものが
蒐
(
あつ
)
めてあったが、或る方面は草
茫々
(
ぼうぼう
)
として樹木
繁
(
しげ
)
り、蚊の多いことは無類で、全く
幕末維新懐古談:65 学校へ奉職した前後のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
万葉集の巻ノ七に、伊勢の海のあまの
志摩津
(
しまづ
)
が
鮑玉
(
あわびだま
)
、取りて
後
(
のち
)
もが恋の
繁
(
しげ
)
けんという和歌がございます。
玉取物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
繁
常用漢字
中学
部首:⽷
16画
“繁”を含む語句
頻繁
繁昌
繁茂
繁盛
繁々
繁華
繁殖
繁忙
大繁昌
足繁
繁吹
御繁昌
生繁
繁叩
繁栄
繁雑
繁昌記
繁華熱鬧
繁縷
木繁
...