つゐ)” の例文
新字:
こいつは二朱や一分で買へる品ぢやねえ。お篠が姉とつゐにこしらへて、自慢で持つてゐたことは、淺草中で知らない者がないくらゐだ
うつくしきかほ似合にあはぬはこゝろ小學校通せうがくかうがよひに紫袱紗むらさきふくさつゐにせしころ年上としうへ生徒せいと喧嘩いさかひまけて無念むねんこぶしにぎときおなじやうになみだちて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
眞正面に据ゑてある八足臺やつあしだいの上に注がれて、木の間を漏るゝ星明りに映し出されたすゞ神酒みき瓶手へいしが一つゐ、母を引き寄せるやうにして立つてゐた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
不斷衣ふだんぎあはせと袷羽織とめりやすのシヤツとがある外には、樺太の夏に向きかかつた時拵らへた銘仙の單衣ひとへつゐの銘仙の袷羽織を着てゐるばかりだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
駒平は默つて立つて、つゐの葉が美しく伸びひろがつて、赭土の傾斜を覆うてゐる眼の前の煙草畑をぢつと眺めてゐた。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
よせ巳刻よつの太鼓を相待處へつゐ先箱さきばこ天鵞絨びろうど袋入ふくろいりの立傘等を持ち緋網代ひあじろ乘物のりものにて可睡齋城門へ乘込のりこみ來るゆゑ門番人下座を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
次手ついでだからはなさう。これつゐをなすのは淺草あさくさまんちやんである。おきやうさんが、圓髷まるまげあねさんかぶりで、三歳みツつのあかちやんをじふ背中せなか引背負ひつしよひ、たびはだし。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
悧巧りかう者の吉太郎が教へてくれますよ。寶屋の居候で、馬鹿の宇八と、鶴龜燭臺見たいにつゐになつて居る人氣者だ」
はがれしかば天も漸々やう/\受納じゆなふ有てや是よりあめふり出して三日三晩小止こやみなく因て草木もみどりの色を生ぜしとかや趙氏が妻とお菊が孝心は和漢一つゐ美談びだんいつつべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一人ひとりつまなるべしつゐするほどの年輩ねんぱいにてこれは實法じつぱふちひさき丸髷まるまげをぞひける、みたるひとるよりやがて奧深おくふかとこかせて、くゝまくらつむりおちつかせけるが
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところで、わたしたちのまち中央まんなかはさんで、大銀杏おほいてふ一樹ひときと、それから、ぽぷらの大木たいぼく一幹ひともとある。ところたけも、えだのかこみもおなじくらゐで、はじめはつゐ銀杏いてふかとおもつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玉ちやんには左の耳朶みゝたぶの下に可愛らしい黒子ほくろがありますし、左二の腕に私と一緒にふざけてつた、小さい/\干支えと(蛇)があるんです。これとつゐの——
みやは、報徳神社はうとくじんじやといふ、二宮尊徳にのみやそんとくをうまつれるもの、石段いしだん南北なんぼくかしこくも、宮樣みやさま御手植おんてうゑつゐさかき四邊あたりちりとゞめず、たかきあたりしづかとりこゑきかはす。やしろまうでて云々しか/″\
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
植村うゑむらさまもいおかたであつたものをとおくらへば、なにがあのいろくろ無骨ぶこつらしきおかた學問がくもんはえらからうともうで此方うちのおぢやうさまがつゐにはならぬ、つからわたしめませぬとおさんりきめば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
餘所よそほかへ御縁付といふ事ならばいと似附につかはしき縁談えんだんが御座りまするが如何いかゞであるかと申すはほかの事ならず吾儕家わたくしどもの若主人は十九になり箇樣々々かやう/\孃樣ぢやうさまとは年齡としごろから容貌の程も一つゐなれば此方へよめにお貰ひ申す譯には參りますまいかと問ば主個あるじかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
床几しやうぎに腰を掛け、紫のつゐの小袖に、赤い帶を締め、お松は三味線を鳴らし、お村は篠笛しのぶえを吹いて居ります。
したくと學士がくし背廣せびろあかるいくらゐ、いまさかりそらく。えだこずゑたわゝ滿ちて、仰向あをむいて見上みあげると屋根やねよりはたけびたが、つゐならんで二株ふたかぶあつた。すもゝ時節じせつでなし、卯木うつぎあらず。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
元來もとよりぷくつゐなかそだちて他人たにんぜずのおだやかなるいへうちなれば、さして此兒このこ陰氣いんきものに仕立したてあげるたねけれども、性來せいらいをとなしきうへこともちひられねば兎角とかくもののおもしろからず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ある。これは赤塚家に傳はつた、つゐの脇差の一本だ。拙者のでなければ、從弟いとこの赤塚三右衞門のものだ」
およしなさればいのに、りもののかごに、つてたしぼりの山茶花さゞんくわしろ小菊こぎく突込つツこんで、をかしくつまんだり、えだいたり、飴細工あめざいくではあるまいし……つゐをなすもののひとがらもちやうい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
春秋はるあきはな紅葉もみぢつゐにしてかんざし造物つくりものならねど當座たうざ交際つきあひ姿すがたこそはやさしげなれ智慧ちゑ宏大くわうだいくは此人このひとすがりてばやとこれも稚氣をさなげさりながら姿すがたれぬはひとこゝろわらひものにされなばそれもはづかしなにとせんとおもふほど兄弟きやうだいあるひとうらやましくなりてお兄樣あにいさまはおやさしいとかおまへさまうらやましとくち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お靜さんと一年前につゐに拵へたんだよ。お靜さんのでなきア私のさ」