ふん)” の例文
これと云う句切りもなく自然じねんほそりて、いつの間にか消えるべき現象には、われもまたびょうを縮め、ふんいて、心細さの細さが細る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すべて、海上かいじやう規則きそくでは、ふね出港しゆつかうの十ぷん乃至ないし十五ふんまへに、船中せんちうまは銅鑼どらひゞききこゆるととも本船ほんせん立去たちさらねばならぬのである。
「奥さん!」——ものの二ふんもしたかと思うとき、掛金かけがねのかかったカテリーナ・リヴォーヴナの部屋の戸の向うで、誰やら言った者がある。
鏡子はもう幾ふんかののちせまつた瑞木や花木やたかしなどとの会見が目に描かれて、泣きたいやうな気分になつたのを、まぎらすやうに。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
をつむつて、みゝおさへて、發車はつしやつのが、三ぷん、五ふん、十ぷん十五ふん——やゝ三十ぷんぎて、やがて、驛員えきいん不通ふつう通達つうたついたときは!
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ハヽー少し逆上ぎやくじやうしてるやうぢやから、カルメロを一りんにヤーラツパを五ふん調合てうがふしてつかはすから、小屋こやかへつて一にちに三くわい割合わりあひ服薬ふくやくいたすがよい。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いつもなら、十五ふんぐらいでかえれるのに、三十ぷんあまりもかかって、やっともんにはいったのです。
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さうだ、これを通路に選んだなら滝の家までは五ふんで達せられるだらう!」と気づいたのであつた。
籔のほとり (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
午後ごゞ十五ふんにゴールデンゲートをぎてから、今迄いままでにもう何時間なんじかんつたとおもふぞ。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
じょうだんはさておき、二ふん……三分……そのうちにくまのけはいがしなくなったように思われた。その男は、もういいだろうと思って、かすかにうす目をあいて見たのだそうだ。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
『さうともかぎりませんが熱海あたみおそくなると五ふんや十ぷん此處こゝたされるのです。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
最初さいしよやつと一二ふんかんそれをいてたのも、却々なか/\容易よういなことではありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
お添役の袂時計で十ふん……御正門を出たのが十字十分……壱岐殿坂を下りきって二十五分……水道橋をわたりきって三十分……神保町かどが三十五分……三番原口から一ツ橋かかりが四十五分。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ふんをきざむほうの長い針だったのです。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふんとなる
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宗助そうすけすわつて五ふんたないうちに、先刻さつき笑聲わらひごゑは、このへんをとこ坂井さかゐ家族かぞくとのあひだはされた問答もんだふからことつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはやぷん、二ふん甲板かんぱんにはのこ一艘いつそう端艇たんていい、くなりては今更いまさらなにをかおもはん、せめては殊勝けなげなる最後さいごこそ吾等われらのぞみである。
ふまでのことではあるまい。昨日さくじつ……大正たいしやう十二ねんぐわつじつ午前ごぜん十一五十八ふんおこつた大地震おほぢしんこのかた、たれ一睡いつすゐもしたものはないのであるから。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いえかえると、さっそく、柱時計はしらどけいと、おき時計どけい時間じかんくらべてみました。やはり、十五ふんばかりちがっていました。いままで、こんな研究けんきゅうをしなかったことにも、がありました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「九十五ふん御座ございます」とひながら、それなり勝手口かつてぐちまはつて、ごそ/\下駄げたさがしてゐるところへ、うま具合ぐあひそとから小六ころくかへつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
非常ひじやう甘味うま菓子くわし舌皷したつゞみちつゝ、や十五ふんすぎたとおもころ時計とけい午後ごご六時ろくじほうじて、日永ひながの五ぐわつそらも、夕陽ゆふひ西山せいざんうすつくやうになつた。
とまつてはらんなあ。はてなあ、汽車きしやは十二二十四ふんに、やうや白河しらかはきをるですがな。」
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで三四郎は五ふんに一度位はげて女の方を見てゐた。時々とき/″\は女と自分のが行きあたる事もあつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふん一時いつときと、此方こつち呼吸いきをもめてますあひだ——で、あま調そろつた顏容かほだちといひ、はたしてこれ白像彩塑はくざうさいそで、ことか、仔細しさいあつて、べう本尊ほんぞんなのであらう、とおもつたのです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これぼくいもとだ」といふ言葉ことばもちひた。宗助そうすけは四五ふん對坐たいざして、すこ談話だんわはしてゐるうちに、御米およね口調くてう何處どこにも、國訛くになまりらしいおんまじつてゐないこといた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それぢや餘程よほどひろいのか、とふのに、またうでもない、ものの十四五ふん歩行あるいたら、容易たやす一周ひとまは出來できさうなんです。たゞし十四五ふん一周ひとまはりつて、すぐにおもふほど、せまいのでもないのです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
終生の情けを、ふんと縮め、懸命の甘きを点と凝らしるなら——然しそれが普通の人に出来る事だろうか? ——この猛烈な経験をめ得たものは古往今来ウィリアム一にんである。(二月十八日)
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見附みつけはひつて、牛込うしごめから、飯田町いひだまちまがるあたりの帳場ちやうばに、(人力じんりき)を附着くツつけて、一寸ちよつとふん)のかたちにしたのに、くるまをつくりにへて、おほきく一字いちじにした横看板よこかんばんを、とほりがかりにて、それを先生せんせい
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「……十一十五ふん。」
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)