たま/\)” の例文
其れがたま/\参政権問題となつて鉾先を示して居るのだと思ふ。従つて又𤍠中の余りに急進派の暴動を生ずるのも一の過程であらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
には油蝉あぶらぜみあつくなればあつくなるほどひどくぢり/\とりつけるのみで、閑寂しづか村落むらはしたま/\うた※弟きやうだいはかうしてたゞ餘所々々よそ/\しく相對あひたいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それがぱく/\ひらいたりぢたりするので、たま/\これにおちいつた人畜じんちくたちまえなくなり、ふたゝびその姿すがたあらはすことは出來できなかつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
同日たま/\山県貞三と云ふものは平戸に、僧玉産ぎよくさんと云ふものは近江に往つたので、祖筵の詩に「花前一日一尊酒、春半三人三処行」の句がある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
野道でたま/\赤い爪をり上げた蟹にでも出会でくはすと、兵庫頭はぶるぶるふるへて、いきなり馬を引き返して逃げ出したものださうだ。
精神的修養の道、一として平民をあがむるに適するものあらず、たま/\、俳道の普及は以て彼等を死地に救済せんとしけるも、彼等は自ら其粋美を蹴棄したり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
たま/\一念迷ひ初め、自ら凡夫となるゆゑに、三毒五欲の情起り、殺生偸盜邪婬、慾惡口兩舌綺語妄語、いかはらだち愚癡我慢、貪り惜みて嫉み妬みだつた……。
ボルネオ ダイヤ (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
明治廿二年、予の始めて上京するやたま/\銀座の街を歩し書肆しよしに於て一冊を得たり、題して楚囚そしうの詩とふ。予は之れを読んで其言の欝愴うつさうたるを奇としたりき。
北村透谷君 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
かつ性來せいらい記憶力きおくりよくとぼしきは、此等これら病症びやうしやうためます/\その※退げんたいするをかんじ、治療法ちれうはふ苦心くしんせるときたま/\冷水浴れいすゐよくしてかみ祷願たうぐわんせばかなら功驗こうけんあるしとぐるひとあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
須原峠を小屋こやいたり泊す、温泉塲をんせんば一ヶ所あり、其宿の主人は夫婦共にたま/\他業たぎやうしてらず、唯浴客数人あるのみ、浴客一行の為めにこめかししる且つ寝衣をも貸与たいよ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
いま幾干いくばくならざるに、昌黎しやうれいてう佛骨ぶつこつへうたてまつるにり、潮州てうしうながされぬ。八千はつせんみちみちれんとしたま/\ゆきる。晦冥陰慘くわいめいいんさんくもつめたく、かぜさむく、征衣せいいわづかくろくしてかみたちましろし。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たま/\暗愚あんぐの蛮僧に遇つた為に、好んで、この天与の福を失ふやうな事になつたのである。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
われはおのれ生涯しやうがいのあまりきよくないこと心得こゝろえてゐる、みちかたはら菩提樹下ぼだいじゆか誘惑いうわくけたことつてゐる。たま/\われにさけませる会友くわいいうたちの、よく承知しようちしてゐるごとく、さういふもの滅多めつた咽喉のどとほらない。
マス君はしば/\真直まつすぐな鋭い剣を送つたが、たま/\其れを避け外したカ君の右腕うわんから血が流れた。なり深い負傷であるにかゝはらずカ君は戦闘を続けた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
蘭軒は此年文政十年十二月三日に影抄元板千金翼方に跋して、たま/\書の銓択せんたくに論及した。其ことすこぶる傾聴するに堪へたるものがある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
たま/\抽斗ひきだしからしたあかかぬ半纏はんてんて、かみにはどんな姿なりにもくしれて、さうしてくやみをすますまでは彼等かれら平常いつもにないしほらしい容子ようすたもつのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞ其一生そのいつしようあひだ一二回いちにかいしか出會であはないはずのものに、たま/\出會であつた場合ばあひもつと大切たいせつであるから、さういふ性質せいしつ地震ぢしんであるかいなかを最初さいしよ一瞬間いつしゆんかんおい判定はんていすることは
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
今の著作家達は大抵まづい。たま/\上手な人も無い事はないが、そんなのは得て書いてゐる事柄がまづい。とりわけ万年筆で書くやうになつてから、文字に感じが出なくなつた。
柔かき臥床ふしどは英雄の死せんことをねがふ場所に非ず。誹謗ひばう罵詈ばり、悪名、窘迫きんぱくたま/\以て吾人の徳を成すに足るのみ。見よ清教徒は失意の時に清くして、得意の時に濁れるに非ずや。
信仰個条なかるべからず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
さうして見れば、黒田家でたま/\其一通をば押へたが、別に一通が無事に日田の竹中に屆いて、竹中から江戸の徳川家へ進達せられた事と察せられる。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たま/\太陽を仰ぐ日があつても終日霧の中でモネの絵にある様な力の弱い血紅色けつこうしよくをした小さい太陽を仰ぐばかり、東京の様なからりと晴れてえた冬空を僕はだ見ない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
其麽そんなことはねえつたつて打棄うつちやるもなあんめえな」おつぎは干渉かんせふぎた勘次かんじ注意ちういいやだとおもふよりも、たま/\つた卯平うへいそばでいはれるのがきまりがわるいのでのどそこつぶやいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこでたま/\地震ぢしんでもおこると兒童じどうまどひ、そこらにある立木たちきあるひ石燈籠いしどうろうにしがみつく。これはおそらくかういふ場合ばあひ保護者ほごしやひざにしがみつく習慣しゆうかんからみちびかれるものであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「だが、S君、そのなかでも中学校長は別物だね。中学校長には、たま/\偉いのがあるよ。」
そして弘化二年に至るまでは此職にゐた。弘化三年の武鑑がたま/\手元にけてゐるが、四年より嘉永五年に至るまで、政義は寄合の中に入つてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこに盲目まうもく尊敬そんけいしやうずる。盲目まうもく尊敬そんけいでは、たま/\それをさしける對象たいしやう正鵠せいこくてゐても、なんにもならぬのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
道翹だうげうかゞめて石疊いしだゝみうへとら足跡あしあとゆびさした。たま/\山風やまかぜまどそといてとほつて、うづたかには落葉おちばげた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかるに正誤文にたま/\誤字があつた。市河三陽さんは此誤字を正してくれるためにわたくしに書を寄せた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
後に想へば、水戸の栗山潜鋒くりやませんぽうに弊帚集六卷があつて火災にかゝり、弟敦恒とんこうが其燼餘じんよを拾つて二卷を爲した。載せて甘雨亭叢書かんうていそうしよの中にある。東里の集はたま/\これと名を同じうしてゐたのであつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)