贅澤ぜいたく)” の例文
新字:贅沢
しか今日こんにちところでは病院びやうゐんは、たしか資力ちから以上いじやう贅澤ぜいたくつてゐるので、餘計よけい建物たてもの餘計よけいやくなどで隨分ずゐぶん費用ひようおほつかつてゐるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いとはず出歩行であるくのみかむすめくまにも衣類いるゐの流行物櫛笄くしかうがひ贅澤ぜいたくづくめに着餝きかざらせ上野うへの淺草あさくさ隅田すみだはな兩國川りやうこくがは夕涼ゆふすゞみ或は芝居しばゐかはと上なきおごり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今はもう、私はよろづ不自由なローウッドを、ゲィツヘッドと、そこでの毎日の贅澤ぜいたくな生活とに取換へようとは思はなくなつてしまつた。
「まア、そらとぼけるなんて卑怯ひけふだわ。そ、そんな贅澤ぜいたく壁掛かべかけなんかをまぐれにおひになる餘裕よゆうがあるんならつてふのよ」
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ガラツ八は其邊を搜しましたが、兇器きようきになるやうな石も棒も見當らず、反つて染吉の持物だつたらしい、贅澤ぜいたく羅紗らしやの紙入が見付かりました。
惡口屋わるくちやはんやこと、相變らず。……そらあきまへんとも、わたへなぞ。東京のおかたはんは皆別嬪べつぴんで、贅澤ぜいたくだすよつてな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
給金きふきんをのこらず夜具やぐにかける、くのが二枚にまいうへへかけるのが三枚さんまいといふ贅澤ぜいたくで、下階した六疊ろくでふ一杯いつぱいつて、はゞかりへきかへりあし踏所ふみどがない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そんな贅澤ぜいたくところくんぢやないよ。禪寺ぜんでらめてもらつて、一週間しうかん十日とをか、たゞしづかにあたまやすめてだけことさ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だいそだつることもなるまじ、美尾みをわたし一人娘ひとりむすめ、やるからにはわたしおはりももらひたく、贅澤ぜいたくふのではけれど、お寺參てらまいりの小遣こづかぐらゐしてももらはう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
周三は垂頭うつむき加減で、默ツて、神妙しんめうに聞いてゐたが、突如だしぬけに、「だが、其の贅澤ぜいたくを行ツてゐた時分と、今と、何方が氣樂だと思ひます。」とぶしつけにたづねる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
とほむかしに、燒肉ビフステーキすこぎてるからと怒鳴どなつて、肉叉フオークもつけずにいぬはせてしまつた一件いつけんや、「サンドウイツチ」は職工しよくにん辨當べんたう御坐ござるなどゝ贅澤ぜいたくつて
勘次かんじには卯平うへい村落むらみせくのは贅澤ぜいたく老人としよりであるやうひがんでえるかどもあつた。たゞさうしてうち舊暦きうれき年末ねんまつちかづいて何處どこうちでも小麥こむぎ蕎麥そばいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
貝塚かひづかりながら、珈琲コーヒーむなんて、ドロボツクルはじまつて以來いらい贅澤ぜいたくだと大笑おほわらひ。
A イヤおほきに結構けつこう双方さうはう一月ひとつき九十せんづつの散財さんざいだ。精々せい/″\葉書はがき贅澤ぜいたくをやりたまへ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
ほんの手狹な空地を利用して建てられたもので、庭らしい庭もなく兼々自分の望んでゐた樣な靜かな、他とかけ離れた樣な場所では決してなかつた。が、今更そんな贅澤ぜいたくは言つて居られなかつた。
樹木とその葉:04 木槿の花 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
贅澤ぜいたくに過ごさせる事が出來る樣になつたら又一所になつてもいゝ。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「弱ることなんかないぢやないの、こんな結構な年増が泊つてやらうと言ふんだもの、文句を言ふのは親分の贅澤ぜいたくよ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
此地こつち與力よりき贅澤ぜいたくだと、かね/″\いてゐたが、しかしこれほどだとはおもはなかつた。おかげ但馬たじま歌舞伎役者かぶきやくしや座頭ざがしらにでもなつたやうながする。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
んだ髮や贅澤ぜいたくな着物を捨てゝ、羞恥しうちと誠實を身に付けるようにと云ひきかせることが私の使命だ。
景勝けいしよう愉樂ゆらくきやうにして、内湯うちゆのないのを遺憾ゐかんとす、とふ、贅澤ぜいたくなのもあるけれども、なに青天井あをてんじやう、いや、したゝ青葉あをばしづくなかなる廊下らうかつゞきだとおもへば、わたつてとほはしにも、かはにも
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
學生がくせいつきに七ゑんぐらゐくにからもらへばちゆうであつた。十ゑんるとすで贅澤ぜいたくおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とにかく、あなたが始終しじふこんなまぐれな贅澤ぜいたくばかりなさるから、月末つきずゑはらひがりなかつたり、子供こどものまはりをちやんとしてやれないのよ。かんがへても御覽ごらんなさい、夏繪なつゑ來年らいねんもう學校がくかうよ。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
今更いまさら難義なんぎおもときもあれど、召使めしつかひの人々ひと/″\こゝろ御命令おいひつけなきに眞柴ましばをりくべ、お加减かげんよろしう御座ござりますと朝床あさどこのもとへげてれば、しませうと幾度いくたびおもひつゝ、なほあひかはらぬ贅澤ぜいたくの一つ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
型の如く逆さ屏風、經机に名香が煙つて、娘お絹の死骸は、贅澤ぜいたくな絹夜具の上に横たへてあるのです。
『知つてる人に見られるとやだからね、この方角へさへ逃げて來れば、大抵たいてい大丈夫だからね。……逃げるは早いが勝だ。乘り物の贅澤ぜいたくなんぞ言つてゐられなかつたんだよ。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
御存じだと思ひますが、この子供たちを育てるに就いての私の方針は、贅澤ぜいたくと放縱に馴れさせようと云ふのではない、彼等を不屈ふくつにし、忍耐に富ませ、克己力こつきりよくを養はせるにあるのです。
一度いちどだつて贅澤ぜいたく叱言こゞとなどははないばかりか、じつきたいのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その頃は武家でさへ町湯に入る人が多く、内湯を持つてゐるなどは、全く贅澤ぜいたくの沙汰だつたのです。
昨夜ゆうべ今夜こんやも、けると、コーとひゞこゑはるかきこえる、それがくるまおとらしい。もつと護謨輪ごむわなどと贅澤ぜいたく時代じだいではない。ちかづけばカラ/\とるのだつたが、いつまでも、たゞコーとひゞく。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「でも、どうせ自分ぢや買へない品だと思ふと、人の贅澤ぜいたくを見て腹が立つかも知れませんよ」
いや、贅澤ぜいたくふまい、景色けしきたいしては恐多おそれおほいぞ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その上、佐渡の金がドツと掘出されたのですから、徳川初期の日本の富は大したもので、日光などといふ、飛んでもない贅澤ぜいたくな建物が、ヒヨイヒヨイと出來たのもその爲です。
いや見物けんぶつまをすと、大分だいぶ贅澤ぜいたくなやうで。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中味は他愛もない色文ですが、殺し文句のないところや、ほんの用事だけ書いたところを見ると、決して玄人くろうとのものでは無く、素人の娘が書いたとすると、小菊は少し贅澤ぜいたくです。
贅澤ぜいたくな金持があるんですが、こいつは親分の耳に入れても無駄だから、強さうな用心棒でも雇ふが宜いと、斯う言つてやりましたよ、金の番人などは、あつしだつて、御免蒙りまさア
上見て通れといましめた橋間はしま船の贅澤ぜいたくさは、眼を驚かすものがあつたのは當然として、それにおとらず兩岸の棧敷、涼みやぐらは、水面を壓する舷歌げんかと、嬌聲と、酒池肉林の狂態をきそひました。
これは豊滿な大年増で、酒と贅澤ぜいたく食ひのせゐか、脂の乘つた、素晴らしい恰幅です。
八五郎は、部屋の隅に敷いてある、お客用のかなり贅澤ぜいたくな夜のものを指すのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
身扮みなりはキチンとして、袷も羽織も清らげに、傍に置いた紙入は、その頃でも贅澤ぜいたくにされた縫ひつぶしの紺の大ぶりなもの、中に小判五十兩と、二三兩の小粒の入つたまゝなのが氣になります。
其中には思ひも寄らぬ贅澤ぜいたくな品々の外に、特殊の脇差わきざし懷提灯ふところぢやうちん繩梯子なはばしご覆面頭巾ふくめんづきんなどといふ忍術使ひでなければ必要のない品のあるのを一と眼で見て取つて、いよ/\その信念を固めたのです。
生活の贅澤ぜいたくな、身性のはつきりしない者は、町方の手で一人殘らず調べ上げられ、昨夜の十月五日に家を開けたものは言ふ迄もなく、近頃六の日に行動の怪しかつた者は念入りな詮議を受けました。
贅澤ぜいたくだよ、お前は、それで話が濟んだら、直ぐ目黒へ戻つてくれ」
「下女のお近は、あの家は不氣味でヒヤリとして居ると言ひましたが、全く嘘ぢやありませんね、かねがあつて氣が大きくて、贅澤ぜいたくで居心地が良い筈なのに、何んとなく落着かないのは、どうしたわけでせう」
贅澤ぜいたくを言ふな、末期まつごの水に、肴は要るまい」
「親分、贅澤ぜいたくなものですね」