まけ)” の例文
大村が活動写真は目に毒だと云ったことなどを思い出す。おまけに隣席の商人らしい風をした男が、無遠慮に横からのぞくのも気になる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
が、まけきらひでもあつたし、またさうなると、今までの力の報いられなかつた悔しさから、成功せいこうへの要求ようきうぎやくつよくなつた。
受たる十三兩の金子はまけてあげやうほどに跡の金を殘らず御返しなされ然すれば此事は是切これきりにして上るなり夫が一番上分別じやうふんべつなまじひにおし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其癖そのくせ學校がくかうで、おの/\をのぞきつくらをするときは「じやもんだい、清正きよまさだ。」とつて、まけをしみに威張ゐばつた、勿論もちろん結構けつこうなものではない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
向うは二男のいきおいなれば喧嘩はまけとなったのみならず、弓の折にて打擲ちょうちゃくされ、額に残る此のきずも其の時打たれた疵でございます
でもアヤッとの事に浅草で見当がつきました(警部は腹の中でフム牛込だけはおまけだナ、手当を余計せしめようと思ッて)
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
しかしそれでも折角せっかく自殺するのだから、何とか書いておかないと、アトで張合がないだろうと思って、おまけのつもりで書く訳だが、何を隠そう
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まけにそれを洒々落々しゃしゃらくらくたる態度で遣ってける。ある時ポルジイはプリュウンというくだものの干したのをぶら下げていた。
「ぢや、つてなくつてもかつたのに。つまらないわ、まはみちをして。御まけあめられそくなつて、いきらして」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『ど、ど、如何どうしたんだらう、こ、この武村たけむらをおかしなすつたな、『どれもう一番いちばん——。』とたゝかつたが、またまけた。
えらい、傑い。その武士も傑いが、ヤッちゃんもまけずに傑いぞ。小錦関こにしきぜきだ、やがてした開山かいさんの小錦関だ。」
これはおまけにしとくよ、けどなあ、三年子、おめえのような仕合せな金魚は、この年になるまで未だ一度も見たことがない、永い間この商売をしているけれど
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
カギというのはうたがいもなくこの花の馬のあごにたとえられた部分で、現に私たちもこれを引掛け合って、首のむしれた方をまけとして角力を取らせたものであります。
土耳其トルコ人に聞けば伊太利イタリイが結局はまけると云ひ、伊太利イタリイ人に聞けば其れと反対な事を云つて居る。カイロまでいとまの無い旅客りよかくの為に埃及エヂプト土産を売る商店が幾軒もある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ぐとおつしやれば是非ぜひなけれど、下手へた出來できなばかへりて姉樣ねえさまわらはれ、若樣わかさままけものなり、うなされ、はゆるゆると後日ごにちことになし、吾助ごすけよりもうた名人めいじんにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またもとの俗骨ぞくこつにかへり、われも詩を作ることを知りたるならば、へたながらも和韻わゐんと出かけて、先生をおどろかしたらんものをとまけだましひ、人うらやみ、出来できことをコヂつけたがる持前もちまへ道楽だうらくおこりて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
けれども彼の年輩の少年にまけは取らなかった。彼は家庭の影響と貧苦の影響とで至って柔和な少年であった、——むしろ弱い少年であった。にもかかわらず彼は非常な野心を抱いていた。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
然も紙屑屋かみくずやとさもしき議論致されては意気な声もききたくなく、印付しるしつき花合はなあわまけても平気なるには寛容おおようなる御心おこころかえって迷惑、どうして此様このようめす配偶つれあいにしたかと後悔するが天下半分の大切おおぎり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うも今日はいやまけが込む。こんな日には賭碁かけごでもしたら気が引立つかも知れない。何うだい、貴公には古松研、拙者には沈南蘋しんなんびんの名画があるが、あれを一つ賭けてみようぢやないか。」
古松研 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
貴樣あなたえらひとになるのだから、けつして病氣位びやうきぐらゐまけてはならん病氣びやうきかしてやらなければ』とつてぼくげましたことがあります。伸一先生しんいちせんせいけつして此意味このいみ舊式きうしきつたのではありません。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
学科は何時迄いつまでっても面白くも何ともないが、たとえば競馬へ引出された馬のようなもので、同じような青年と一つ埒入らちないに鼻を列べて見ると、まけるのが可厭いやでいきり出す、矢鱈やたら無上むしょうにいきり出す。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
どうやら麾下きかの軍隊が、おかちになっておまけ
春生はまけおしみのように
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
まけずに 駈けくら
朝おき雀 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
げ是々皆なのしう先々まあ/\しづかにせられよ此れ處か未々まだ/\まけがある是を惣内殿貴方あなた覺えが有うなと投出なげいだ姫路ひめぢ革の三徳を見て惣内はヤア是はと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まけ小綺麗こぎれいな所で店賃の安い所へ越したいから、世話をしてくれろと云うので、切通しの質屋の隠居のいた跡へ、面倒を見て越させて遣った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
此様こんなものをまけられたものこそ因果いんぐわで、これのみまして御前ごぜんさがると、サアうも大変たいへん当人たうにんひどい苦しみやう、其翌日そのよくじつヘロ/\になつて出てました。登
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
勝気な彼女の反撥心はんぱつしんは、この忘れかねる、人間のさいなみにあって、弥更いやさらに、世をるにはまけだましい確固しっかりと持たなければならないと思いしめたであろうと——
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そうすると、お友達にまけるから、見っともないから、黙っていたけれど、私、泣いたの。主税さん。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもはずこゑだかにまけましよまけましよとあとふやうにりぬ、人波ひとなみにのまれて買手かひてまなこくらみしをりなれば、現在げんざい後世ごせねがひに一昨日おとつひたりし門前もんぜんわすれて、かんざしほん七十五せん懸直かけねすれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うも今日はいやまけが込む。こんな日には賭碁かけごでもしたら気が引立つかも知れない。うだい、貴公には古松研、拙者には沈南蘋しんなんぴんの名画があるが、あれを一つ賭けてみようぢやないか。」
まけ博奕ばくちを打ちました。
「どうか知らん。独身でいるのさえ変なのに、おまけに三宝に帰依きえしていると来るから、溜まらない。」
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かひ妻子の身形みなりも立派になり二十兩勝た三十兩勝たと博奕ばくちに勝たはなしをする樣子何分合點がてんゆかず常にはまけた事ばかり云ひて勝た事をいはざるに全く金の出處をうたがはれぬ樣に勝し事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此の書付かきつけさえなければ喧嘩けんかわたくしかちだけれども、書付が出たから私の方がまけに成ったのですが、何方どっちが悪いかとくと貴方あなたの胸に聞いて御覧遊ばせ、私は御当家様の家来でございます
今年ことしまたもやまけけにならば、れだとおも横町よこてう長吉ちようきちだぞと平常つねちからだてはからいばりとけなされて、辧天べんてんぼりにみづおよぎのをりくみひとおほかるまじ、ちからはゞはうがつよけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その尤もガサツな職人風しよくにんふうなものいひが、どうも江戸ツ子といふ概念をあたへてゐるので、すべての好みが淺薄せんぱくに感じられると見える。だが江戸ツ子のまけだましひは、全國的のものを代表してゐる。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
わたしはもう四十五しじゅうごで、おまけに苦労をし続けて年よりけていたのだが、一人口は食えなくても二人口は食えるなどと云って、小金を持った後家さんの所へ、入壻いりむこに世話をしよう
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
一葉女史の味わった人世の苦味にがみあきらめと、まけじ魂との試練を経た哲学——
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まア勝つもまけるも時の運次第でごろ/\砂の中へ転がって着物をほうって貰い勝ったとか負けたとかいう処が愛敬じゃア、うして見れば皆様みなさんの御贔屓を受けなければならん、貴方が勘弁して下されば
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
陣幕久五郎のまけは当時人の意料いりょうほかに出た出来事である。抽斎は角觝かくていを好まなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蟠「紀伊國屋は先に勝ったから宜しい、今度はまけずにやれ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まアよろしい、これまけかう。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
まけに社会主義の議論も書く。
沈黙の塔 (新字新仮名) / 森鴎外(著)