警戒けいかい)” の例文
陰※いんえいたる空におおわれたる万象ばんしょうはことごとくうれいを含みて、海辺の砂山にいちじるき一点のくれないは、早くも掲げられたる暴風警戒けいかい球標きゅうひょうなり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このとき、どこからかもどったからすが、したひとっているのをつけると、警戒けいかいするように、カア、カアと、仲間なかまびました。
高い木とからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうした矛盾むじゅんにみちた報道がつぎつぎに伝わる一方、二十八日の夕刻ごろからは、九段戒厳司令部の警戒けいかい次第しだいに厳重を加え
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
町の人は、三人四人と組んで自警団じけいだんをつくり、鉄砲てっぽうやこんぼうをもって警戒けいかいにあたった。みなと船着場ふなつきば汽車きしゃ停車場ていしゃば、おもだった道の出入り口。
家の外では、所轄しょかつ警察署の私服刑事が数名、門前や塀のまわりを見はっています。じゅうぶんすぎるほどの警戒けいかいでした。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ぼくはどうかして海蛇うみへび毒手どくしゅからのがれようとたんをくだいた、が、かれらはなかなか厳重げんじゅう警戒けいかいして目をはなさない、時機を待つよりしかたがない
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
が、やがて不意ふい松葉まつばからはなれるとはちはぶんとあがつた。三にんははつとどよめいた。けれども、はち大事だいじ犧牲ぎせい蜘蛛くも死骸しがい警戒けいかいしにつたのだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
正当に警戒けいかいし、懇願こんがんして見ても駄目だめでしたら、妻自身も移り気の振りをして見せしめてやりなさい。それでもだめならあきらめるか、別れるか、どちらでも。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
六、 海岸かいがんおいては津浪襲來つなみしゆうらい常習地じようしゆうち警戒けいかいし、山間さんかんおいては崖崩がけくづれ、山津浪やまつなみかんする注意ちゆういおこたらざること。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ゆえに思想家はしばしばこの点について国民に警戒けいかいを与える。してその警戒の与え方が大いに我が意を得た。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
〔譯〕誘掖いうえきして之をみちびくは、教の常なり。警戒けいかいして之をさとすは、教の時なり。に行うて之をきゐるは、教の本なり。言はずして之を化するは、教のしんなり。
ある時、子貢が二三の朋輩ほうばいに向って次のような意味のことを述べた。——夫子は巧弁をむといわれるが、しかし夫子自身弁が巧過うますぎると思う。これは警戒けいかいを要する。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
入口いりぐちから三間許げんばかへだてて、棒杭ぼうぐひち、鐵條てつでうり、ひとらしめぬやう警戒けいかい依頼いらいされたのだ。
『おどくだがひとつもらないの』とつてあいちやんは、發議はつぎたいして警戒けいかいしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ただお妙だけは、不思議なところへつれて来られて、それに自分についてさっぱり訳のわからないことを言いあっているようだが……と、少からず警戒けいかいの心が動いている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
というのは、そんな挙動きょどうせて老人ろうじんわたし警戒けいかいしたら、という心配しんぱいがあつたからです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
し、大海嘯おほつなみいまから二三にち以前いぜんことで、海底戰鬪艇かいていせんとうてい船渠ドツクうちなら、第一だいいち警戒けいかいすべき塲所ばしよ其處そこだが、いまは、左迄さまいそいで、檢査けんさする必要ひつえういとかんがへたのである。
そこでいろいろ命令を出してから、皆打揃って京の町へ入ってある大きな家をおそった。その前にその近所にある目ぼしい援兵えんぺいでも出しそうな家に対して、二、三人ずつ人を分けて警戒けいかいさせた。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いまは、じぶんのために、どんな鳥をもふしあわせなめにあわせたくなかったのです。こうして、ヤッローが警戒けいかいしていたために、男は家へ帰るまで、とうとう一発いっぱつつことができませんでした。
なくなつた一葉女史いちえふぢよしが、たけくらべといふほんに、狂氣街道きちがひかいだうといつたのはこれからさきださうだ、うつかりするな、おそろしいよ、とかた北八きたはち警戒けいかいす。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、ごまかしの誘惑ゆうわくや、一宣伝せんでんにとりことなるのを警戒けいかいし、自己じこしんずるひと投票とうひょうしようとしたのであります。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは自分自身の闘志にたえずなやまされつつ、その同じ闘志が他の塾生たちの心にきざすのを注意ぶかく警戒けいかいしていなければならなかったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
日夜警戒けいかいしてかれらの襲撃しゅうげきをふせぐのが上策じょうさくであるが、かれらは凶悪無慚きょうあくむざん無頼漢ぶらいかん七人で、諸君は数こそ多いが、少年である以上、苦戦は覚悟かくごせねばならぬ
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そして、そのあひだにもえず三にん樣子やうす警戒けいかいし、なほも二三蜘蛛くも死骸しがい存在そんざいをたしかめにつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かり地震豫報ぢしんよほう天氣豫報てんきよほう程度ていどたつしても、雨天うてんおいては雨着あまぎかさようするように、また暴風ぼうふうたいしては海上かいじよう警戒けいかい勿論もちろん農作物のうさくぶつ家屋かおくとうたいしても臨機りんき處置しよち入用にゆうようであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
〔譯〕心しづかにして、まさに能く白日を知る。眼明かにして、始めて青天を識りすと。此れ程伯氏ていはくしの句なり。青天白日は、常に我に在り。宜しく之を座右ざいうかゝげて、以て警戒けいかいと爲すべし。
一先ひとまづ一どうは、地主ぢぬしの一にんたる秋山廣吉氏あきやまひろきちしたくき、其所そこから徒歩とほで、瓢簟山ひようたんやまつてると、やま周圍しうゐ鐵條網てつでうもうり、警官けいくわん餘名よめい嚴重げんぢゆう警戒けいかいして、徽章きしやうなきもの出入しゆつにふきんじてある。
春枝夫人はるえふじん笑顏えがほ天女てんにようるはしきよりもうるはしく、あほ御空みそらにはくもあゆみをとゞめ、なみとり吾等われら讃美さんびするかとうたがはるゝ。この快絶くわいぜつときたちま舷門げんもんのほとりに尋常たゞならぬ警戒けいかいこゑきこえた。
警戒けいかい万全ばんぜんであった。
そのとき、ふもとの谷川たにがわは、こえをかぎりにさけびます。また、もりには、かぜこって、ゴーゴーとります。あるやまは、あかいて、ほし警戒けいかいします。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、なほも警戒けいかいするやうにねんれるやうにあなのまはりをあるきまはつてゐたが、やがてひよいとあがると、蜘蛛くも死骸しがいをくはへてふたたあなところひもどつてた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それについては津浪襲來つなみしゆうらい常習地じようしゆうちといふものがある。この常習地じようしゆうちみぎしるしたような地震ぢしん見舞みまはれた場合ばあひ特別とくべつ警戒けいかいようするけれども、其他そのた地方ちほうおいては左程さほど注意ちゆうい必要ひつようとしないのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あちらで、しきりにいぬとおぼえをするこえがしていました。犬殺いぬころしがちかづいてきたのを警戒けいかいして、仲間なかまらせているのです。幸吉こうきちは、すぐに裏手うらてへまわりました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、もうだれかってしまったのか、それとも、どこへかんでいっていないのか、ただおおきなすずめばちだけが二、三びき前後ぜんご警戒けいかいしながら、みきからながしるまろうとしていました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)