諸共もろとも)” の例文
小木せうぼくえだ諸共もろともたほして猛進まうしんするのであるから、如何いかなる險山けんざん深林しんりんくわいしても、まつた進行しんかう停止ていしせらるゝやうなうれひはないのである。
充分、無駄な戸を抑えさせて置いて、久米之丞は大刀の切ッ先をそこへ向け、力いッぱい刺し入れて、ふすま諸共もろともえぐり廻しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暫くすると吹き出す烟りの中に火の粉が交じり出す。それが見る間に殖える。殖えた火の粉は烟諸共もろとも風に捲かれて大空に舞い上る。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は本堂の立っている崖の上から摺鉢すりばちの底のようなこの上行寺の墓地全体をのぞき見る有様をば、其角の墓諸共もろともに忘れがたく思っている。
權三助十默止だまりますまい此一件彦三郎申分相立候樣に御慈悲おじひを願ひ奉つると云ふに八右衞門彦三郎も進出すゝみいでごん三助十諸共もろともかまびすしくこそ申けれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この不自然さが二峰を人工の庭の山のように見せ、その下のところに在る藁葺わらぶきの草堂諸共もろとも、一幅の絵になって段々近づいて来る。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
待給まちたま諸共もろともにのこヽろなりけん、しのたまはりしひめがしごきの緋縮緬ひぢりめんを、最期さいごむね幾重いくへまきて、大川おほかわなみかへらずぞりし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お話し二つに分れまして、蟠龍軒はお村を欺き取って弟の妾にして、御新造ごしんぞとも云われず妾ともつかず母諸共もろともこゝに引取られて居ります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
十時、汽車は隧道とんねるを出て、川を見下ろす高い崖上がいじょうの停車場にとまった。神居古潭かむいこたんである。急に思立って、手荷物諸共もろともあわてゝ汽車を下りた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、たれては不可いけない、きつては不可いけない、いづれ、やがて仕事しごと出来できると、おうら一所いつしよに、諸共もろともにおかゝつてあらためて御挨拶ごあいさつをする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
横浜へ帰ったら、私の家族と私の病院が、姫草ユリ子諸共もろともに、何処かへ消え失せていはしまいか……と言ったような……。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
リンキイ君が、五セント玉をひとつ拾っただけで、「チェッ」と舌打ち諸共もろとも、銀貨を空にほうりあげ、意気なスタイルをみせてくれただけの事でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「この女をわれ一人で都に還すには、おぬしに疑義があろう、おぬしと二人で都はずれまで諸共もろともに送って行ったなら、納得が行こうというもの。」
死なば諸共もろともという気分が、こういう場合ほどこまやかにき立つ時はあるまい、年功を経た応召兵達の胸を打割った正直な述懐を聞くことが出来た
仏教の出発点は一切いっさいの生物がこのように苦しくこのようにかなしい我等とこれら一切の生物と諸共もろともにこの苦の状態を離れたいとう云うのである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さらば往きてなんぢの陥りしふちに沈まん。沈まば諸共もろともと、彼は宮がかばねを引起してうしろに負へば、そのかろきこと一片ひとひらの紙にひとし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
熊岡警官の怒号どごう諸共もろとも、黒インバネスを着た一人の男が転げこんできた。署員は総立ちになった。「何だ、何だッ」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
弟は兄を剃髪染衣ていはつぜんえの身ならむとは思ひもかけず、兄は弟を薪売りびとになりをらむとは思ひもかけず、かつ諸共もろともやつとし老いたればそれとも心づかざれど
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
電車なんか、あんなに混んでいるじゃございませんか。さあ、乗りましょう。いゝじゃございませんの。自動車ががけからおっこちても、死なば諸共もろともですわ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼女の計画が遂に失敗に帰し、親子諸共もろとも毒を仰いで自滅しなければならなかったのは、当然と云わねばならぬ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
才能の可能性を認めて、妻であり母であると共に、人間として他の能力も発揮させたいと思っている夫の愛が、妻諸共もろとも、かまどに追われる悲劇は許されない。
「これにて見苦しとはれも得言はじ。我鏡に向きて見玉へ。何故なにゆゑにかく不興なる面もちを見せ玉ふか。われも諸共もろともに行かまほしきを。」少しかたちをあらためて。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「それとも、われわれの手で、動力機関を破壊し、氷の島を溶かして、敵味方諸共もろとも、海底の藻屑もくずとなるか」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
新内〽かねて二人が取りかはす、起請誓紙きしやうせいしもみんな仇、どうで死なんす覺悟なら、三途さんづの川もこれ此のやうに、ふたり手をとり諸共もろともと、なぜに云うてはくださんせぬ。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
オルワンガル島は、今から八十年ばかり前の或日、突然、住民諸共もろとも海底に陥没して了った。爾来じらい、この様な仕合わせな夢を見る男はパラオ中にいないということである。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そしておもむろに懐から小さな煙管を取り出した。そうだ、不貞腐ふてくされの婦が身を売ったために小作権がもとに返った時、いっそのこと婦を殺し自分も諸共もろとも死ねばよかったのに。
土城廊 (新字新仮名) / 金史良(著)
山津浪は一気に押し寄せて、家諸共もろとも押し流したものであり、其際の弟は、アルプの嶺に、アヴァランシュを踏で、千仞せんじんの谷にすべり込む気であったに相違ない、これは痛快だと
私は子供のような物めずらしさを以て人夫達のはげしい呼吸いきを聞いた。凍った雪の上を疾走して行った時は、どうかすると私は桑畠の中へ橇諸共もろともブチマケラレそうな気がした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
降り続く大雪に、伯母おばに逢ひたる心地ここちにや、月丸はつま諸共もろともに、奥なる広庭に戯れゐしが。折から裏の窠宿とやかたに当りて、鶏の叫ぶ声しきりなるに、哮々こうこうと狐の声さへ聞えければ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
麻生のかたからざあと降り出した白雨ゆうだち横さまに湖の面を走って、漕ぎぬけようとあせる釣舟の二はい三ばい瞬くひまに引包むかと見るが内に、驚き騒ぐ家鴨の一群ひとむれを声諸共もろともに掻き消して
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
其所らがきふにもや/\とうすもやでもかゝつたやうになツて畫架諸共もろとも「自然の力」は、すーツと其の中へき込まれるかと思はれた………かはつて眼に映ツたのが裸體になツたお房だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
諸共もろともやっつけてくれんと夜半夫婦の寝室に侵入し、まず清三を刺して重傷を負わせ、恨み重なる道子にはわざと急所を避けて傷をつけ、散々に苦しめた上、なぶり殺しにしたものであった。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
「サア旦那、死なば諸共もろともだ、旦那方一人や殺しやしない」金作が声を掛ける。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
のちまた数旬をて、先生予を箱根はこねともな霊泉れいせんよくしてやまいを養わしめんとの事にて、すなわち先生一家いっか子女しじょと共に老妻ろうさい諸共もろとも湯本ゆもと福住ふくずみぐうすることおよそ三旬、先生にばいして或は古墳こふん旧刹きゅうさつさぐ
だが、二人が同行者であるならば、死なば諸共もろともであるべきだとも思いかえした。行商人にとって、たった一本の書面を托されたことが死に値いするほどの責任だったか——と、泣きたくなる。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
殿とのこそは御一門の柱石ちゆうせき、天下萬民の望みの集まる所、吾れ人諸共もろとも御運ごうんの程の久しかれと祈らぬ者はあらざるに、何事にて御在おはするぞ、聊かの御不例に忌まはしき御身の後を仰せ置かるゝとは。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
少くとも則重はそれを望んだであろうし、恐らくは桔梗の方も、此処で諸共もろともに焼け死んだらば両方へ義理が足せると思ったでもあろう。彼女は完全に復讐を遂げ、父の恨みを十二分に晴らした。
とお母さまが気を利かしたので、新太郎君は友三郎さん諸共もろとも引き下った。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
タタと刻足きざみあし諸共もろとも今打下した刀をひらりと返すが早いか下から斬上げて肩口へ打込んだ。眼にも留らぬ早業である。川合甚左衛門、自慢の同田貫どうたぬきへ手をかけたが抜きも得ないでたおされてしまった。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
難儀がかかりゃ諸共もろともに、三人一緒にとは何故いってくれねえ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
猛烈な呻声と諸共もろともに突然患者が刎ね返したからである。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その中には父子諸共もろとも切死きりじにしたる人もありしという。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
弥陀みだの手に親子諸共もろとも返り花
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
いざ諸共もろともみづからを知らん。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
勤労努力 諸共もろとも
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
はからずも貴方あなたの御助けに預かりし事まことに有難く存じ奉つる此御恩このごおん生々しやう/″\世々せゝ忘却ばうきやく仕まつらず候と夫婦諸共もろともに涙を流して申しけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其方そちらおもよりもあらばつてれとてくる/\とそりたるつむりでゝ思案しあんあたはぬ風情ふぜい、はあ/\ときゝひとことばくて諸共もろとも溜息ためいきなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
心を山伏に語ると、先達もこぶしを握って、不束ふつつかながら身命に賭けて諸共もろともにその美女たおやめを説いて、あしき心を飜えさせよう。いざうれ、と清水を浴びる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人のやりの穂先がしわって馬と馬の鼻頭はなづらが合うとき、鞍壺くらつぼにたまらず落ちたが最後無難にこの関をゆる事は出来ぬ。よろいかぶと、馬諸共もろともに召し上げらるる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると一心いつしんとほりましてか、満願まんぐわんの日に梅喜ばいきは疲れ果てゝ賽銭箱さいせんばこそば打倒ぶつたふれてしまふうちに、カア/\と黎明しのゝめつぐからす諸共もろとも白々しら/\が明けはなれますと
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)