評判ひょうばん)” の例文
こんどは京都きょうと羅生門らしょうもん毎晩まいばんおにが出るといううわさがちました。なんでもとおりかかるものをつかまえてはべるという評判ひょうばんでした。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それで、そのヴァードステーナ僧院そういん名声めいせいがおちてしまったら、いったい何がこの地方の評判ひょうばんを高めることになるだろうかとうたがった。
されば、まだことの虚実きょじつは明確に申しあげられませぬが、東海道——ことに徳川家とくがわけ家中かちゅうにおいてはもっぱら評判ひょうばんいたしております。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この老人は応対おうたいのうまいというのが評判ひょうばんの人であったから、ふたりの使つかいがこの人にむかってのびと口上こうじょうはすこぶる大役たいやくであった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こんなに評判ひょうばんになったのも、おれ幾年いくねんものあいだ、こんなにさびしいけわしいところに我慢がまんをして生長せいちょうしたからのことだ。おれ姿すがたてくれい。
葉と幹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうして甲府こうふの町へ小屋をったときには、「曲馬団のトッテンカン」という評判ひょうばんだけで、見物人は毎日ぞくぞくとおしよせて来ました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
名人めいじんとか上手じょうずとか評判ひょうばんされているだけに、坊主ぼうずぶ十七八の弟子でしほかは、ねこぴきもいない、たった二人ふたりくらしであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ところがそのみやこに、四、五人でくみをなした盗賊とうぞくがいまして、甚兵衛の人形の評判ひょうばんをきき、それをぬすみ取ろうとはかりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「フウム、すると、ほんとうだね。それがみんなの評判ひょうばんになってるんだが、きみは、いったい、ブルがこわかないのかい」
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
こう言う半三郎の復活の評判ひょうばんになったのは勿論である。「順天時報じゅんてんじほう」はそのために大きい彼の写真を出したり、三段抜きの記事をかかげたりした。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一つのかべがまだそのままで見附みつけられ、そこには三人の天童子がえがかれ、ことにその一人はまるで生きたようだとみんなが評判ひょうばんしましたそうです。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どんなはなしをするのであろうか、彼処かしこっても処方書しょほうがきしめさぬではいかと、彼方あっちでも、此方こっちでも、かれ近頃ちかごろなる挙動きょどう評判ひょうばん持切もちきっている始末しまつ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だんだん気があらくなって、ねえさんのたぶさをつかんで打った、とかで、田地でんじは取上げ、という評判ひょうばんでね、風の便りに聞くと、その養子は気が違ってしまったそうだよ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは役場の庶務課長の土井という老人であった、この老人は非常に好人物という評判ひょうばんも高いが、非常によくばりだという評判も高い、つまり好人物であってよくばりなのである。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
村の人にしても同じだった。だれがどうというのではなく、不当ふとうにつらくあたっていたことを、ひそかにいているようだった。なぜなら、小石先生の評判ひょうばんがきゅうによくなったのだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
後任こうにんのブライン氏は前任者に引換ひきかはなは不親切ふしんせつの人なりとて評判ひょうばんよろしからず。
でもカピは評判ひょうばんがよかった。かれはいく度もアンコールを受けた。カピのおかげで興行こうぎょうれるようなかっさいで終わった。かれらは両手をたたいたばかりでなく、足拍子あしびょうしをふみ鳴らした。
みんな旧藩きゅうはん関係だからご家来けらいだ。ご家来でなければ先生になれない。そのうち安斉あんざいさんという老人が指導主事として采配さいはいをふるっている。この先生はご家中かちゅうずい一の漢学者で、評判ひょうばんのやかまし屋だ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何ともはや、お盛んなことで——いえね、大した評判ひょうばんでございますぜ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さあ、さあ、大評判おおひょうばん文福ぶんぶくちゃがまにえて、手足てあしえて、綱渡つなわたりのかるわざから、かれおどりのふしぎな芸当げいとう評判ひょうばんじゃ、評判ひょうばんじゃ。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ところが花前はなまえ評判ひょうばんは、若衆わかしゅうのほうからも台所だいどころのほうからもさかんにおこった。花前は、いままでに一もふたりの朋輩ほうばいと口をきかない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
いつしか、西にしみやこで、人気にんきんでいるこうみみに、ひがしみやこで、やはり、たいへんな人気にんきんでいるおつ評判ひょうばんがはいりました。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そりゃァもう仙蔵せんぞうのいうとお真正しんしょう間違まちげえなしの、きたおせんちゃんを江戸えど町中まちなかたとなりゃァ、また評判ひょうばん格別かくべつだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ガンと一つ顔でもなぐられたら、ほおが五もいたんで、一きれのパンも、かめなくなる。スープばかりっていなければならない、という評判ひょうばんなのだ。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
あんたは自由な野の鳥でありながら、人間どもに評判ひょうばんがよくて、鉄砲てっぽうで打たれたり、から卵をぬすまれたりするような心配はちっともないんですからね。
そんな評判ひょうばんが立ちましたらわたくしどもの店は立ち行きません。まぁよく考えてからものをおっしゃって下さい。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「君は近頃魔術を使うという評判ひょうばんだが、どうだい。今夜は一つ僕たちの前で使って見せてくれないか。」
魔術 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さあそれが評判ひょうばんになりまして、「甚兵衛の人形は生人形いきにんぎょう」といいはやされ、町の人たちはもちろんのこと、とおくの人まで、甚兵衛の人形小屋ごや見物けんぶつまいりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「だが待てよ……御岳みたけ大講会だいこうえともうすと、なにさま天下の評判ひょうばんごと、秀吉の家来けらいがまけてもこまるな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、まちでは病院びょういんのこんな有様ありさまらぬのではく、一そう棒大ぼうだいにして乱次だらしいことを評判ひょうばんしていたが、これにたいしては人々ひとびといたって冷淡れいたんなもので、むし病院びょういん弁護べんごをしていたくらい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
浅田が大医たいいの名をはくしておおいに流行したるはこの評判ひょうばん高かりしがためなりという。
もう歌うたいの中でいちばんえらい者でいることができなくなると、かれは自分の偉大いだいな名声に相応そうおうしない下等な劇場に出て、歌を歌って、だんだん評判ひょうばんをうすくすることをしませんでした。
「町ではもっぱら評判ひょうばんだよ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
世間せけんには、このまち有名ゆうめい陶器店とうきてんが、今度こんど殿とのさまのおちゃわんを、ねんねんれてつくったという評判ひょうばんこったのであります。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
なるほど評判ひょうばんとおり、頼政よりまさ武芸ぶげい達人たつじんであるばかりでなく、和歌わかみちにもたっしている、りっぱな武士ぶしだと、天子てんしさまはますます感心かんしんあそばしました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
お政が心底しんそこをしんにかいした人は、お政の父ひとりくらいであったろうけれど、それでもだれいうとなく、お政さんはかしこい女だという評判ひょうばんが立った。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「そうともそうとも、酒手さかてきいていうんじゃねえが、太夫たゆうはでえいち、ひんがあるッて評判ひょうばんだて。江戸役者えどやくしゃにゃ、なさけねえことに、ひんがねえからのう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ネズミというものは、いったいに、ほかの動物たちのあいだでも、あまり評判ひょうばんのいいものではありません。
「む、山崎の合戦かっせんこのかた、そちの幕下ばっかとなった評判ひょうばんの才蔵か、おお、あれならよろしかろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この宿屋を開いた最初さいしょのお客は、一人の行商人ぎょうしょうにんでした。主人は、このお客を、それはそれは親切にもてなしました。主人は何よりも大事な店の評判ひょうばんをよくしたかったからです。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
すると、甚兵衛の評判ひょうばんはもうそのみやこにもつたわっていますので、見物人けんぶつにんが朝からつめかけて、たいへんな繁昌はんじょうです。甚兵衛は得意とくいになって、毎日ひょっとこの人形をおどらせました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いきなり、拳闘試合けんとうじあいをぼくに申し込んできた。どうもしかたがない。「よろしい。やろう!」とぼくもすぐに返事した。すると、この試合の評判ひょうばんが、大学じゅうにひろがってしまった。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
半三郎の失踪しっそうも彼の復活と同じように評判ひょうばんになったのは勿論である。しかし常子、マネエジャア、同僚、山井博士、「順天時報」の主筆等はいずれも彼の失踪を発狂はっきょうのためと解釈した。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかるに近頃ちかごろいたって不思議ふしぎ評判ひょうばん院内いんないつたわった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このちょうのうつくしいのは、ひとり、みつばちのにそうえたばかりでなく、おなじちょうの仲間なかまでも評判ひょうばんになっていました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、このごろは毎晩まいばん五条ごじょうはし大坊主おおぼうずが出て、人のかたなをとるという評判ひょうばんがぱっとたかくなりました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
快活かいかつ情愛じょうあいがあって、すこしも官吏かんりふうをせぬところから、場中じょうちゅう気受きうけも近郷きんごう評判ひょうばんもすこぶるよろしかった。近郷きんごう農民のうみんはひいきの欲目よくめから、糟谷は遠からずきっと場長じょうちょうになると信じておった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「近頃はあなたの剛力ごうりきが、大分だいぶ評判ひょうばんのようじゃありませんか。」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かみさまの評判ひょうばんは、このようにたかくなりましたけれど、だれも、ろうそくに一しんをこめていているむすめのことを、おもうものはなかったのです。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まえむすめたいそううつくしい織物おりものるという評判ひょうばんだ。おしろ殿とのさまと奥方おくがたが、おまえむすめはたるところがたいというおおせだから、このかごにっててもらいたい。
瓜子姫子 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)